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コーチング事例集

体調の悪い人へのコーチング~仕事中心に生きてきた若手女性社員。話したい思いを受け止める会話~


このままでは、自分がどこに流れ着くかが心配で・・とおっしゃる人材派遣会社のコーディネーター歴三年の今井さん。今回のセッションは、人生設計のお話です。

今井さんは、金融系の特定派遣をしている人材派遣会社のコーディネート業務をしています。マッチングの精度が高く、派遣先企業からも、スタッフからも信頼が厚く、この仕事は天職だと思って、少々の残業も、きついクレームの電話も、まったく気にせずに三年間、ただひたすら努力をしてきたと胸を張っておっしゃいます。

ところが、四年目にかかろうとしたこの夏、今井さんの身体に変調が起きたそうです。
三週間ほど頭が重い感覚が抜けず、思い切って心療内科を訪ねたら、「すこし会社を休んで、気分がリラックスする方法で休暇を過ごしてください」と言われてしまったそうです。

この場合のセッションは、組み立て方が難しく、今井さんのペースに合わせて今井さんの話したいことをしっかり聴きましょうという約束で、セッションをスタートさせました。

「今井さんが一番話したいことは何ですか?どんなことでもどうぞ」
「う~ん・・一番かどうか分かりませんが、私のこの身体、どうなっちゃったのか、それはとても不安です。この先、どうなるのか・・」

「身体がどうなるかが心配ですか?」
「そうですね。私の仕事をちゃんと変わりの人がやっているかも心配、スタッフの中に、新しい職場で仕事を始めたばかりの人がいて、電話かかってきているかもしれない。そんな時、私がいないなんて知ったら、裏切られたって思うかもしれない。クライアントに新しい人材を入れていただく提案をしていることも心配。途中で放り出したと思われないか?」

「たくさんの心配事がありますね。それらの仕事は、すべて自分で処理されてこられたの?」
「はい、営業さんは忙しいし。スタッフの面接は私が担当だから。一番、私がスタッフのことを知っているじゃないですか?だから、お仕事を紹介して、働いてもらうのが私の責任じゃないですか?そう思って一生懸命仕事をしてきました」

「たくさんの仕事をこなしたんですね・・尊敬します。どこからそのエネルギーが沸きあがるのでしょうねぇ」
「さぁ、みんなのためになりたいという衝動かな?」

「身体の中から力がわくっていう感じかしら」
「そうですね。この会社は、大学生のアルバイトでお世話になった派遣会社の仕事に興味をもってそのまま入社させてもらった会社でしょ。一緒に働いていたスタッフさんのところには、月に二回くらい、営業さんが来て楽しそうに話していた姿を見て、いいなぁと思ったのがきっかけですから、スタッフフォローが出来るコーディネーターになりたいと思っていたんです」

「それは、現状、どのくらい達成出来たと感じていますか?」
「80%は達成したと思いたいです。でも、派遣先と合わなくて三日でやめちゃうスタッフさんと電話で話す時とか、お仕事を紹介してもぜんぜんいい返事がもらえないことが続くと、この仕事をこのまま続けた先にどんな道が待っているのかな?と不安になります」

「今回の身体への信号は、そんな不安がサインを送ったんだろうか?」
「そうですかねぇ・・。キャリア・カウンセラーの資格をとって、スタッフさんのキャリア・ビジョンの設計をお手伝いしてきたんですけど、自分のビジョンって、描けているのかな?」

「十年は難しいかもしれないけど、五年先の自分は、やっぱり派遣で仕事していると思う?」
「うん、それが分からないんですよね。もっと何かがしたいわけでもない。でも、この会社でこのままでいいのかは分からない。急に、目標がなくなっちゃったんでしょうか?」

「そもそも、目標ってなんだったの?」
「う~ん・・目標というか、とにかくコーディネーターとして、スタッフさんとお仕事をうまくマッチングしたかったし、クライアントさんのために役に立ちたかったんです。でも、それが目標かと言われると、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。わからないです」

「あまり、思いつめないほうがいいと思いますから、質問を変えてもいいですか?」
「はい」

「だれかに、今の気持ちを話されましたか?」
「上司とか?ですか」

「ええ、上司や、先輩、あるいは話しやすい誰かがいますか?」
「先輩とは時々話しますが、あまり自分の話はしませんでしたねぇ。スタッフのことを相談したり、クライアントとのことは相談したりしましたけど・・・」

「仕事の話が中心だったんですね?」
「そうですね。スタッフさんからみて、いいコーディネーターでなければって思っていましたから、全部の力を仕事に注いでいたかもしれません」

「新卒の頃から、コーディネート業務をしていたんでしたっけ?」
「そうです。最初は、仕事の内容も分からなくて困りましたけど、だから、キャリア・カウンセラーの資格もとって、勉強して。一生懸命だったから、あまり考えなかったけど、自分は、この先どんなふうに生きていくのかなぁ・・」

「うん、一番見つけたいのは、自分のこれからの生き方かしら?」
「そうですかねぇ・・スタッフさんには、キャリア・ビジョンをもってなんて言ってるけど、自分が一番、わかってなかったりして・・」

「今井さんは、コーディネーターが天職だと思っているんでしょう?」
「はい、そうです!ただね、こんなコーディネーターになりたいというはっきりしたイメージがなくなっちゃったんです」

「ロールモデルは?会社にいませんか?」
「うん・・先輩に一人、すっごくあこがれている人がいたんですが、その人、この間、自分の会社を立ち上げて、辞めていかれちゃったんです」

「身近にはいなくなった?」
「そうですね。新しい会社にお尋ねしてみようかな?でも、忙しいと悪いし・・」

「アポイントメントを取ってから伺ったらどうでしょうか?」
「そうですね、電話してみようかな?」

「どこへなら連絡出来ますか?」
「携帯、教えてもらっているので、変わってなければすぐに直接取れます」

「いつ先輩に連絡しましょうか?」
「あはは、この流れは、コーチング!明日のお昼ごろにします。休んでいてもスタッフさんからの電話が時々入るんですが、あまりない時間帯にします」

「やっぱり、スタッフとクライアントを行動の軸においていらっしゃる。まさしくプロですね」
「ありがとうございます。これから私、どこに行くのか、自分のことを考えてみます。とりあえず、先輩に明日のお昼、電話します」

少し明るい表情になって、今井さんはセッションを終えました。
このセッションが、身体や心に負担にならなかったか、心配ではありましたが、話を聴くプロに力を借りたいという希望であれば、セッションを持つことはかまわないと実感しました。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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