働く目的がわからなくなった女性 ~転職について考える女性が仕事をする理由を考える~

団体職員の瀬戸さんは、一人で事務局を取り仕切って十年目。
今年限りで辞めようかどうしようか?迷ってのコーチングです。

「花粉がそろそろ飛ん出来ているようですが、今年は花粉症の対策をしましたか?」
「結局、去年から体質改善の注射も打たず終いでした」

「体質改善の注射は、長く打たなくちゃならないんでしょう?大変ですよね。ところで、先週宿題にさせていただいた、これからの人生設計を考えるために、気になることリストをあげていただけましたか?」

「そうですね。今の仕事を辞めるにしても、続けるにしても、今後の人生を設計しないと、進むべき方向がわからないと言われたコーチの言葉が、ずっと胸に残っていて、意識して生活すると、結構、生活の中で自分がひっかかることって多いんだなぁ・・って気づかされました。で、リストをあげてみたのがこれなんですね。こんなメモで良かったでしょうか?」
「かまいませんよ。ありがとうございます」

「これを書いていて気づいたんですが、自分にも結構、嘘ってつけないなって思いました。かっこつけて、仕事をする理由に、人のためになりたいとか、社会に出て役に立ちたいとか書いてみたんですが、ぜんぜん、しっくりこなくって・・・」
「なるほど、嘘をついてるっていう気がしたんですね?」

「はい、私が今回辞めようと思うきっかけが、給料が安いとか、待遇が気に入らないということであることは間違いないんです。ではなぜ、辞めなかったか考えてみたんですが、結局、姑と毎日顔を突き合わせて嫌な思いをしたくない。この一言です。私は、人から理不尽なことを言われることがすごく嫌で、正等に評価されなくてもいいけど、理屈に合わないことで責められることがたまらないんです。それは今回に限ったことではないんです。どうしても許せないと思ったのではなくて、たまたま、これまで抑えていた気持ちが、今回は抑えられなかっただけで、今までも、理不尽なことを言われるたびに、我慢をしていてモチベーションは下がっていたと思うんです。今回は、『別の仕事をしてみない?』と誘われていて、言ってみれば仕事を探さなくても見つかりそうだということが大きな要因になっているような気がします」

一気に胸の中にあった自分の気持ちを話す瀬戸さん。更に続けます。

「本質的な宿題とはちょっと違ってしまったと思うんですけど、気になることがあると、事実と、それを受け止める気持ちとを一緒に書いていったんですけれども、姑との関係でもそうなんです。
たとえば、私が、買い物にいく時間を伝えてそれまでに、必要なものがあれば一緒に買ってきますよと声をかけても、そのときは、言わないでおいて、夫が食事しているときに、今日、由美さんが買い物に行ったのに、私のものを買ってきてくれなかったと言いつけているんです。夫は、明日でいいなら買ってきてもらえばいいでしょ?と、取り合いませんが、私は、ええ??って思うわけです。さりとて、先走って、これ買っておきましたといえば、無駄なものを買ってくると、夫に告げ口ですし。
こういう理不尽な扱いを受けたくないから、家にずっといたくない。それだけは、はっきり今回の問題を考えていく上で感じました」
「それと同じことが職場でも起こった?」

「はい、会員さんはあまり経験のない方でもリーダーさんになり、事業を進めます。覚えようとする方はいいですが、書類の提出の仕方とか、わからなくても勉強してくださらない会員さんの書類を、しょうがないと思って、書き換えて本部へ提出したら、それがどうも気に入らなかったみたいで。勝手に、事務局が書き換えた。でしゃばりすぎだと・・・」
「瀬戸さんとしては、どんな気持ちで仕事をして差し上げたんですか?」

「恥をかかないようにと思って。勉強しないから書けないんですよって言うわけにはいかないから」
「それが、上手く受け止められなくて残念だったね」

「はい、とても残念です。悔しいです。でも、まぁ、いいかな?」
「瀬戸さんにとって、仕事って何ですか?」

「うん・・・聞かれると思ったんですが、逃げてるわけじゃないと思うんです。仕事に逃げているわけじゃない。子供の学費も必要だし。でも、なんだろう・・・自分のためになると思うし・・・」
「逃げてるわけじゃないけど、逃げてる気もする?」

「はい、姑とのことを考えると、やっぱり逃げてるのかな?」
「一般的に嫁の立場で言ってもいいですか?」

「はい」
「私も嫁の立場ですが、出来れば、会いたくないと行く気持ちはありますよ。面倒というか。だって、生活が違うし、年齢も違うし、育ち方が違うから、価値感が違うのは当たり前。お互いを尊重しあう関係は、ある程度、距離が離れているから出来るのであって、近くにいたら目に付くから」

「そうですよねぇ・・・でも、コーチは、だから仕事をしているのですか?」
「そこが違うんです。私は、私の自己実現というか、私は私が幸せになるために仕事をしています。そして、その幸せを、家族にも、周りの人にも、みんなに分け与えられたらいいと思って仕事をしています」

「すごい!立派ですよね・・」
「立派かどうかわかりません。ただ、私が生き生きしていて、楽しそうであれば、子供も社会に出て働くということは、楽しいことだと思ってくれると信じています。私が幸せであるからこそ、子供たちにそういう気持ちを分けてあげられると思うんです。もちろん、根拠はありませんが」

「なるほどね、そうですよね。私は、そこまでの強い思いがないんです」
「引き続き、考えて見ましょうか?今週は、どうして働くのか?理由を考えるということにさせていただいてもよろしいでしょうか?」

「はい、また、自分を見つめてみます。何かが見つかると、ぱ~っと、目の前が広がるような気がします」
「ぜひ、無理をせず、考えてみてください」

自分の心の深いところを知ることによって、今後のキャリア・ビジョンを見つけることが出来ればいいなぁと思います。


竹内 和美

竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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