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コーチング事例集

新任センター長と古参社員との戦い(その1)~新任管理者、職場改善を目指す~


流通センターに就任した新任センター長の浜田さんは今年五十二歳になるやり手部長です。
流通センターの仕事は、商品をお客様に届ける最前線の仕事。荷物を今か今かと持ち構えていてお届けしたときのお客様のほっとした顔や、思いがけないギフトを受け取ったときのお客様の喜ぶ笑顔などを思い描くだけでワクワクするというホスピタリティにあふれた浜田さんとしては、これぞまさしく天職とばかりに、異動辞令を受け取りました。それはわずか半年ばかり前の出来事です。しかし、センター長として着任してみては一週間、二週間と時間を重ねるごとに元気ややる気が失せていくのが自分でも感じました。それは上司の眼からも目に見えてわかるほどになっています。

「浜田部長、最近元気がないようだがどうかしたのか。私が相談にのってもいいのだが、いろいろなことを支援してくれるコーチ制度を会社として設けたのだ。私に相談するより気楽に出来ると思うので、コーチングを受けてみたらどうか」

社内に新しく設けられたコーチングルームに足を運んだらどうかという、担当役員からの勧めもあり、コーチングを受けた経験などなく半信半疑ながらコーチングを受けてみようと思って、会社が外部から雇い入れた専門のコーチに会ってみることにしました。
「浜田さんですね、始めまして、私、コーチを専門職としています和田と申します。よろしくお願いします」

「あ、はい。和田・・・なんてお呼びすればいいんでしょうか?」
浜田さんは、コーチングのことが良くわかりませんので、コーチのことをどんな風に呼んだらよいかがわからず、口ごもってしまいました。
「浜田さん、そうですね、どんな風に呼ばれてもかまいませんよ。浜田さんの呼びやすいもので結構ですよ」

和田コーチにそう言われても、浜田さんから次の言葉がでてきません。

「そうですね、『和田さん』と呼んでいただきましょうか。呼びづらいですか?」と、和田コーチは、ソフトにたずねました。
「いいえ、大丈夫です。『和田さん』と呼ばせていただきます。それでは和田さん、始めまして浜田です。よろしくお願いします」一旦、不安が消えると、浜田さんは部長としての威厳を持って礼儀正しく挨拶をしました。

「浜田さん、コーチングについて、まず説明をさせていただいてもよろしいですか?」と、和田コーチは今後三ヶ月間の間に十二回の会話する時間を三十分ずつ持つことや、この場での話の内容は決して他言しないなどというコーチの倫理についての説明を丁寧に行いました。

「何か、ご質問をいただきたいと思うのですが、いかがですか?」
「いや、良くわかりました。では、今回は、私の悩みを話してもいいですか?」と、浜田さんは少しの時間も惜しむかのように、自分が置かれている状況を話し始めました。

「実は、職場の女性九名のほとんどが古参社員で、私よりも皆、流通センターでの仕事は長い人ばかりなんです。男性社員は、配置換え等の事情があって、そこそこ若い人もいるし、年配者であっても、経験年数は三年くらいと比較的短い人が多いんですね。後は、アルバイトが数名いるんですが、いずれも学生で、まぁ、やる気があるんだかないんだか、良くわからないけれどもまじめに一生懸命仕事をしているようには見えます。
問題は、この古参社員の仕事振りなんです。休憩時間は守らない、勝手に何度もお茶を飲みにいってしまう。夕方なんか、最後のトラックを見送ると、休憩室に上がりこんでしまって、横になって休んでいるものも居る始末。職場でも、大きな声でおしゃべりはするは、アルバイトのシフトを勝手に変更するわで、とにかく自分のセンター長としての立場がなくなるようなことを平気でするんです。
この間、あまりに目に余ったので、シフトの変更は、センター長の責務で行うこと。出すぎた仕事はしないで欲しいときつくいったんですが、『これまでは私たちがやってきたんです。センター長さん、あなたは事務をしているだけで、何も現場のことがわからないんだから、任せてください』と、えらい剣幕でまくし立てられて。挙句の果てに、休憩時間を三十分も延長されてしまって、一部の業務に支障が出るところだったんです。だけど、勤務時間は就業規則でも決められているんだから、夕方のトラックを送り出してしまったとしても、何か、見つけてでも仕事をするのが社員としての勤めだと思うんですよね・・」堰を切ったように一気に思いのうちを話した浜田さん。ようやくここで一息つくかのように、肩で大きく息を一つしました。

「なるほど、そうですか。どうぞ、その先を続けてください」和田コーチは、一息入れている浜田さんを見て、更に先を促します。

「この間の忘年会では、まぁ、私が居たら盛り上がらないだろうと思って、気を使って乾杯だけ済ませて後は用事がある振りをして、退席したんですが、後で、『センター長、居心地が悪いで帰っちゃったんだわ。この間、あんなやぁらしいこといったから、しょうがないわねぇ』と、宴席で言ってたということを信頼する男性社員から聞かされて。私の気持ちも分からない、自分勝手な連中なんで、よっぽど人事に言って、即、人事異動させたろうと思ったんですが、あまりに大人気ないのでそれはやめたんです」と、たまりにためていた怒りをぶちまけました。

「和田さん、この自分の気持ち、分かりますか?」浜田さんは、何とか自分の気持ちを伝えようと一生懸命話したことが伝わったかを、和田コーチに確かめる質問で、現状を訴える話を終えました。
「浜田さん、今、とても浜田さんが怒っているということを感じます。そこで伺いたいのですが、浜田さんが今一番、解決したい問題は何ですか?」

「え?一番解決したいものは何ですかって、私がこんなに話したのに、私の気持ちが理解してもらえなかったんですか?これだけ話してもわかってもらえないんだったら、百聞は一見にしかず。一度、職場にアルバイトとして状況を見にきてください。ちょうど、一人バイトを募集している最中だから、見つかったといって、もぐりこむことは出来ますから・・」口も厳しく、眼も何とか窮状を訴えたいと、力がこもっています。

「いや、私が整理したいのは、浜田さんの気持ちなんです。それで整理したいことの順番というか、優先順位を付けたいんです」と言われた。
浜田さんは、すぐに答えることが出来ず、黙り込んでしまいました。
「今日ここでゆっくり考えていただく時間をとりたいのですが、そろそろ三十分の約束の時間が過ぎようとしています。一つ、次回までに考えていただきたいことがあるんですが、よろしいですか?」沈黙の浜田さんの同意を得る前ににコーチは続けます。

「古参社員との関係をどうしたいのか?その点だけ一つに絞って、考えてきてください。次回は、その点の確認からスタートさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか?」
「わかりました。次回までに考えてきますが、早く古参社員の何人かを飛ばして明るい職場作りをしたいと思っているので、よろしくお願いします」
浜田さんは、捨て台詞のような言葉を残して、コーチングルームを出て行きました。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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