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コーチング事例集

部下とのコミュニケーションがうまく取れない新任課長のコーチングです。~部下とのコミュニケーションを考える~


新任課長との出会いは、会社のコーチングルームに、予約なく訪問されることから始まりました。

「コーチ、ちょっと話したいことがあるんですが、いいですかねぇ・・」と腰をかがめながら入室された新任課長。
「どうぞ、どうぞ。はじめましてコーチの今井です。よろしくお願いします」と挨拶し、いすを勧め腰をおろしたところでさっそく「部下の山田のことですが、彼が何に悩んでいるのかわからんですが、山田は、この部屋ではどんなことを話題に話しているのでしょうか?」との質問を受けました。

通常、コーチである私は、守秘義務を職業倫理として掲げているため、上司であっても生命の危険等、緊急性が高いか、本人の承諾を得なければ話の内容を開示することはありません。

「ご質問は、山田さんの話の内容を明かしてほしいということでしょうか?」と柔らかく尋ね返すと、「いや、まぁ、何を話しているかを知りたいのはもちろんですが、何を考えているのかがわかれば、もう少し、彼をサポートしてやることが出来るのではないかと思いまして・・・」

「なるほど。部下の考えを知り、サポートしてあげたいと思っていらっしゃるんですね」
「そうです。山田は、何でも一人で抱え込んでしまうたちらしくて、それでは、彼の下にいる若いやつらも育たないですよね? それに、私は、仕事はチームですべきであると思っていて、個人が自分のマンパワーで仕事をするというのでは、異動になったとき困ると思うんです。それと、この間は、山田から、『自分は行政が主催する健康相談会に行ってきたが〝うつ病になりやすい。注意したほうがいい〟と言われた。それだけは避けたいというんです』。

まるで、私が「うつ病」になりやすくしてるみたいに言われてしまって、私こそ、どうしていいのかわからず、ストレスがたまる一方なんです。そんなとき山田がコーチングルームに出入りしていると聞いたもので、上司の私に話さないことをコーチに話しているのではないかと思うと信頼を裏切られたような気がしていてもたってもいられなくて、失礼を承知で押しかけてきたんです」
勤めて穏やかに話そうと心がけていらっしゃるように見えますが、怒りを強く感じさせる口調で話しは続きました。

「いくつかの問題を同時に抱えているように感じるのですが、一番初めに解決したいことは何でしょうか?」
「そうですね、まず、彼が何をしているのか、報告してもらったり、相談してもらえたりすればいいと思います」

「なるほど、報告と相談が必要なのですね。それが出来るようになると、課長さんにはどんなものが手に入るのでしょうか?」
「手に入るもの?・・・なんだろうなぁ。日ごろから報告や相談を受けていればもし彼に、スタンドプレーされても、安心出来るかな?
いまだと、何が起きるかわからないから、不安で落ち着けないことが良くありますからねぇ。いまより安心出来るんじゃないかと思うんです」

「失礼を承知で伺いますが、ご自身の評価に影響することだから、部下の行動が気になるのですか?」
「まぁ、そうですね。私は彼の上司ですからね。取引先の人から、私の知らない彼の行動を教わる私の身になってください。管理者としての能力がないような気持ちに追い込まれるんですよ」

「なるほど、管理者としての能力がないように思われるんですね。つらいんですか? 怒りを感じるんですか?」
「怒りですね。もう少し人のこと考えろって感じかなぁ・・」

「そうですね。課長のことを考えてほしいっていう感じですね。ところで課長が山田さんのことを〝人の気持ちや立場がわからんやつだ!〟とレッテルを貼って見ていることを、山田さんは感じているようですか?」
「うん・・それはどうかな?感じているんだったら、もっと積極的に自分から接触してきてもいいと思うけど・・」

「つまり、感じてないから、行動が変わらないとお考えなんですね」
「はぁ、まぁ、そういうことになりますか? よく分かりません」

「一つ、私が今感じていることをお話してもいいですか?」
課長は不安な表情を浮かべ、少し私の話を聴くことを躊躇しましたが、嫌だ!とは言えない様子で、私の意見を聴こうとします。

「課長さんから伺う山田さんの考えは、すべて課長さんの憶測(推測)でしかありませんね。これは、コミュニケーションの量が絶対的に不足しているから起こっているように感じられます。
1日のうちで、五分でもいいから。仕事の話でなくてもいいから、彼と話す時間を作ってみたらいかがでしょうか?」
「(無言)・・・」

「私のアドバイスが嫌だなぁというお気持ちがあれば、どうぞ遠慮なさらずおっしゃってくださいね。いかがですか?」再度促されてようやく課長は「話す時間を作るといっても、何を話していいか、それすら分からんのです。出勤したらすぐに出かけてしまう日もあるし。そうかと思うと、ずっとパソコンの画面に向かってぶつぶつ言ってるから、話しかけちゃ迷惑になるかもしれないと思うし。彼がしたいと思うことなら、どんなことでも課長の自分が責任はとってやれるから、やらせてやりたいと思うけど、そのためにも彼が何をしているかは把握しておきたいんです。そうじゃないと、私としても責任のとりようがありませんから」

「部下に寄せる思いはとても熱くていらっしゃるんですね。もったいないですね。そんな課長さんの気持ちが伝わっていないことが・・・。どうでしょうか?まずは、その自分の気持ちを伝えてあげるだけでもいいんじゃないですか? 聴いてほしいことがあるけれども、今いいか?と話し始められたらどうですか?」

「彼が忙しかったらどうしようか?」
「忙しければ忙しいで『今でなくてもいい』とつけ加えてみたらいかがですか」

「そうですね・・」
「そのほか、どんな言葉を準備したらいいと思いますか?」

「そうだなぁ・・・今日の予定は?と聴くとか・・」
「うん、それいいですね。一度、声をかける練習をしてみましょうか?私が部下をやりますが、いいですか?」

「そうですね。でも、子供じみてるし・・・。一度、席に帰って考えます」
入ってこられるときよりは、少しはすっきりした顔をなさった新任課長。でも、まだまだ肩に力が入っているから、会話の練習を子供じみていると思うのでしょう。もう少しリラックスして、自然に会話が出来るようになればコミュニケーションがとれるようになります。

コミュニケーションがとれず、強いリーダーシップも発揮出来ずに悩んでいるのは、自分に原因があることに気づいてくれる日があるといい。人を変えることは出来ませんが、自分が変わることが出来る。そう伝えてあげることが出来たら、もっと肩の力が抜けるのではないかと思いながら、背中を見送りました。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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