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コーチング事例集

異動先の理解のない上司に悩む~職場異動を命じられ、戸惑う社員に自分の役割を考えさせる~


中堅ハウスメーカーに勤務する茂手木さんは、ベテランの営業マンでした。
ところが、長年の実績を高く社長から評価されていたにもかかわらず、昨春、管理部門に異動になりました。納得がいかない茂手木さんは、勇気を出して社長に面談を求め、今回の異動の目的を尋ねたそうです。
社長は、「管理部門のテコ入れだ。あそこは昼間だらだらしていて、夕方になると残業代稼ぎのために仕事に励む。会社はそんな無駄な金は払えない。まあ、それは一例としていろんな面で役割を果たしていない。君に任せるから、建て直しをしてくれ」と言われたそうです。
ところが、茂手木さんの肩書きは、営業のときのまま、「課長代理」。茂手木さんの上には課長がいるわけです。
「代理の肩書きでどこまで仕事をしたらいいのだろうか?
堀田課長は自分のことをどう受け止めてくれるんだろうか?
みんなと仲良く仕事をしないと管理の仕事が回らないばかりか、製造はじめ各所に迷惑かけることになってしまう。どう調整してあるんだろうか?」と、不安な気持ちで新しい席へと異動したそうです。

案の定、管理課長の堀田さんは、茂手木さんの異動の目的を社長から聞かされておらず、最初こそ自分の提案を熱心に聴いてくれていたそうですが、このごろでは、「君が口出しをすることではない。営業では実績があるだろうが、ここではまだ1年目なんだ、じっくり仕事に取り組むためにも、私たちの仕事を真似てみたらどうだ」と、いなされてしまい、困った茂手木さんはコーチとのセッションを希望しました。

「茂手木さんですね? おはようございます。今日のテーマを決めましょうか?」
「はい、・・あの・・・職場にリーダーがいなくて・・・。私は課長代理と言う肩書きで、今、管理部門で仕事をしています。課長はいるのですが・・・良い管理をするために業務改善や業務改革をしようという意欲は感じられません。部長は、社長の意見をすぐに自分の意見にして受け入れることは出来ても、私から見たら、社長から言われたから受け入れているだけで、どうしたらそれが出来るかという具体的な戦術を考えることが出来ません。私は、こういう人を上司として仕事をしなければならず、どうしたらいいか、わからなくなってしまったんです」

「課長代理として、組織の構成員として注意すべきことはなんですか?」
「はい、課内では、私にも上司がいるわけですから、上司より上に出るようなことがあってはなりません」

「具体的な行動に限定すると?」
「課内での決定は、課長に判断をゆだねると言うことです。それと、課外の調整は、課長の指示や許可がなければしてはならないと言うことです」

「なるほど、組織論を忠実に守りたいと言う気持ちが強いのですね?」
「はい、ただ・・・課長は、現状の仕事の進め方で良いと思っており、社長がそれではダメだと思っているということを知らないので、どうしても、前に出ざるを得ないというか、社長の期待にこたえて、結果を出して早く営業に戻らせて欲しいので、理想どおりには行動出来ずにイライラしているんです」

「なるほど、理想どおりに行動出来ないからイライラしているんですか?それとも、営業に戻りたいからイライラされているんですか?」
「え?営業に戻りたいから?ですか・・・そんなふうに自分の気持ちを考えたことがないので、意外でした。でも、そうかもしれませんね。課長が動かないことにイライラしてるし、今のこの状況が嫌で嫌でたまらないんです」

「営業の仕事がお好きなんですね?」
「はい、大好きです。お客様の顔を見て話をするのが好きなんです」

「そんな大好きな仕事を取り上げた社長に対しては、どんな気持ちですか?」
「うん・・・管理部門に異動になったことが嫌なのではなくて、社長は私の異動をちゃんと課長や部長に言っておいてくれてないことに不信感を覚えています」

「信頼していたのに、残念という気持ちですか?」
「そうですね。不信感でいっぱいです」

以外にも、上司に対する悪いイメージばかりを並べる茂手木さん。
コーチは、指摘したいと思いながらも、もう少し話を聴いてみようという姿勢を保ちます。

「職場をどんなふうにしたいのですか?」
「もっと活発にお互いが意見を言い合ったり、仕事に責任を持つ社員の集まりにしたいです」

「管理は、もともとが目立たない部署ですし、社長もこれまであまり目をおかけにならなかった。だから、人も育っていないし、責任感とか、リーダーシップとかも身についていないんじゃないですかね」
「すべての部門に満遍なく社長が力を入れることは難しいのではないですか?」

「まぁ、そうですけど・・・」
「さて、茂手木さん、茂手木さんの現職場での使命はなんですか?」

「使命ですか?・・・使命ねぇ。わかりません」
「社長のおっしゃった『君に任せる、テコ入れ』にどんなイメージをもっていますか?」

「そういえば、具体的に何をしろとは言われていませんね。だらだら仕事をするということでしたが、実際、業務のボリュームと作業量があっているのかも分かりません」
「では、どんな提案を堀田課長になさったんですか?」

「残業を減らしましょうと・・・」
「どんな方法で?」

「とにかく週1日、残業なしの日を設けましょうと・・」
「堀田課長の反応は?」

「いや・・・無視されているというか、一度検討しようと言われたままで、具体的な指示も評価もありません」
「どうしても残業なしの日を作る必要があるとしたら、その理由は何ですか?」

「特にあるわけではありません。社長が残業代が無駄だとおっしゃったので・・」
「ようやく1年、仕事を経験して、残業は無駄な時間でしたか?」

「いや、実際、大変なんですよ。値引き交渉も、長年の取引先はなかなか応じてくれなくて。1社の交渉に二時間くらいかかるんです」
「その交渉は、営業時代のスキルが役立ちますね?」

「はい、確かに・・。管理の人はどちらかというと交渉が苦手のようで。よく、茂手木さん、助けてくださいといわれます」
「そんなときはどうなさるんですか?」

「はい、手が空いていれば助けて取引先と交渉しますが、手が空いていなければ断ります」
「そんな茂手木さんを上司はどう感じているのでしょうか?」

「ん・・・協調性のない奴だと思っているのではないでしょうか?」

茂手木さんは、堀田課長の気持ちも、他の社員の気持ちも理解出来ていません。
自分の役割も理解していません。
自分は特別と思いたい気持ちや、社長との信頼関係をこれ以上失いたくないという気持ちが強いことは理解出来ますが、職場の皆と強調しなければ仕事は進まないことを理解出来ていません。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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