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コーチング事例集

年配の部下とのコミュニケーション~年配者への配慮を持ちながら、職場の管理者としての役割を果たす戦術を考える~


年配職人とのコミュニケーションに悩む三〇代半ばの管理者とのコーチングです。
中堅製造メーカーに勤務する川畑さん。年配職人社員とのコミュニケーションに悩み、コーチングを受けることになりました。

「はじめまして。川畑さんの仕事は、管理部門で業務管理が主だということですが、どんなお仕事をされているんでしょうか?」
「はい、私は、製造工程表に基づいて、仕事の割り振りや資材の調達と管理を主にしています」

「幅広い業務ですね。やりがいを感じるところはありますか?」
「仕事は楽しいんですが、現場の職人さんは皆さん、親父みたいな年齢の人ばかりなので、なかなか・・・」

「何か、思い切って全力投球することが出来ていないように感じるんですが、何か川畑さんの気持ちを阻むものがありそうですね?」
「はい、職人さんは、コミュニケーションをとることもまっすぐ、実直にストレートに来るんで・・たとえば、急ぎの仕事を頼もうとしたりすると、『今出来んことぐらい見て判らんか!』とか、『そんなの自分でやれ!俺には関係ネェ』で片付けられてしまって。親父のような年代なんで、言われたらそれ以上は反論出来なくて・・自分も、管理者になる前は、製造の現場にいたんで、ちょっとはモノが造れる技術はあるんです。だから、どうしても急ぎだと、自分でやっちゃうしかないなぁと思って現場に入ると、課長からは『お前がそんなことするから、あそこで職人が2人も遊ぶじゃないか!管理者は管理が出来て初めて仕事が出来ると言うんだ。自分でやってどうする?』と、こっぴどく叱られる始末で、どうしていいやら分からないんです」

事情を説明している間に、すっかりしょげ返ってしまった川畑さん。気の毒ですが、本来の自分の役割を全うするための方法を探らなければ、解決しないことにまだ、気づく余裕が見られません。

「川畑さんはどうしたいの?」
「え?・・・」

「自分の業務を全うしたいんですか?」
「もちろんです!当たり前じゃないですか!そのために・・」

相談に来ているんだとばかりに、眼が殺気立ちます。

「コーチの私に出来ることが何かありますか?」
「いやぁ、初めて逢った人に職人さんたちを教育して欲しいといったって、彼らは心を拓きませんよ。プライドが高くて、閉鎖的なものの考え方をする人たちですから、あなたの言うことを素直に聞くとは思いません」

「そうですね。私がいくら、コミュニケーション能力を発揮して、川端さんとの関係を穏やかにして欲しいと申し入れたり、職人さんにコミュニケーションのあり方について教育しても、所詮、職人さんたちにはおせっかいとしか理解されません。ところで、職人さんたちを認めるべき点はどこですか?」
「職人さんの認められる部分は、やはり技術力の高さでしょう。人間的にも実直だしまじめだし・・」

「尊敬出来る?」
「職人としては尊敬出来ます。でも、人間的かというと・・・すぐ大声出すし、すぐ怒鳴るし」

「川畑さんにだけですか?」
「いや・・・どうかなぁ・・課長には怒鳴ってないから、自分たち、若い者だけにかもしれません」

「若いから馬鹿にしてるんだろうか?」
「馬鹿にすると言うか、頼りなく思ってるかもしれません。何せ、相手はこの道一筋四十年とか四十五年とかですから・・」

「子供と同じ世代の社員には、ついつい態度が横柄になるのかしら?」
「年齢と言うよりも、技術力が不足しているからじゃないかな?職人は、プライドが高いですからね」

「なるほど、プライドが高いのね。それは仕事に反映されているの?」
「はい、わずかな仕上がり具合が気に入らなくても、もう一回作るからと言って、勝手に納期を延長したりして、管理者としては、納品期日に間に合わないことのほうにやきもきさせられますよね」

「いつもいつも、納期を無視して仕事をしているんですか?」
「いや、もちろんいつもじゃありません。多くは守ってくれるんですが、どうしても見過ごせない傷が残ったとか、R(カーブ)の仕上がりが気になるとか、絶対譲れないポイントでは、納期度外視ですね」

「会社として困るんじゃないの?」
「もちろんです。後工程のセッティングに影響が出るわけですし、会社の信用にもかかわりますから、そういう意味では、全体への影響もあります」

「そんな時、川畑さんはどうかかわるの?」
「そんなこと、いちいち気にしてたら利益も減るし、信頼もなくす。検査は、品質管理が判断するから、手直ししなくていいから早く出して・・と・・」

「もし、川畑さんが職人の立場だったら、そういう管理者をどう評価する?」
「・・・・」

「職人としての仕事に敬意をもっていると思えるかしら?」
「・・・・」

「職人としてのプライドが傷つけられたとは思わないかしら?」
「・・・・」

「その程度の仕上がり具合でいいんだ。責任は管理者が取るんだから、多少手を抜いても簡単に作業をすればいいんだ。それだったら楽なもんだって手を抜くことを考えないかしら?」
「・・・・」

「相手の立場でモノを見ることは難しいね。ただ、今、このコミュニケーションの不成立は、職人さんにだけ原因があるとは思えないのね。川畑さんは、自分の業務を一生懸命全うしようと努力していることはとてもよく理解出来ます。ただ、仕事はすべての立場の人とのリレーションで出来るものですから、後工程の人への影響を考えることも大切ですが、職人さんとのコミュニケーションの工夫もしないと、それこそ後工程に多大な被害が出るんじゃないかしら?」
「そうですね・・話しているうちに、だんだん、自分のことしか考えていないことに気づきまして・・」

「反省も大切ですね。ただ、次にどうしたらいいかを考えましょうか?次回のコーチングも希望なさいますか?」
「はい、ぜひお願いします」

三〇分は短すぎる時間でした。
自分の業務を全うしようとする者同士、ガチンコで向き合うことが、かえって、コミュニケーションのゆとりを阻むことになった事例です。
お互いが相手を認め合うことが大切なことです。
政府の発表では、七五歳以上の高齢者が、総人口の一〇%を超えたとありました。
今後、地域においても、ますます高齢者とのコミュニケーションの難しさが、人間関係を悪化させるかもしれません。職場での経験は、一生を楽しく生きるためのトレーニングでもあります。
川畑さんの今後の人生に役立つコーチングを目指して、セッションは続いています。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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