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コーチング事例集

社長時代とのギャップに悩むNPO法人の理事長さん~利益を上げる組織から、利益最優先でなくてもよい組織のリーダーの役割の変化を考える~


NPO法人を設立し、地域社会の子育て支援をしている理事長の堀口さんは、元は会社の社長さんでした。
会社は、息子に譲り、自分はこれまでの恩返しに、地域のお役に立ちたいという思いをもって、NPO設立に奔走したのです。
非営利を目的とした活動団体なので、事業から利益を出す必要はありませんが、メンバーのモチベーションを下げないようにするためには、ある程度、運営している皆さんに利益を出す工夫をさせ、自分たちの活動が価値あるものであることを感じてもらうことによって、参加意欲をますます高めようと思っていました。
子育て中のお母さんと子供のために、腹話術の人形劇や、絵本の読み聞かせなど、親子のふれあいを大切にした事業を中心に計画したのですが、参加費の徴収を巡って、他の会員を説得しようとするが意見が合わず、このごろ疲弊気味であるとのことでした。

「堀口さん、相変わらず、皆さんの反応が鈍くてお苛立ちですか?」
「はいコーチ。相変わらずです。『ボランティア団体が利益を得るなんて、もっての他、理事長が以前に社長をされていた会社とは違うんです』とまるで相手にされません」

「残念ですね・・」
「残念と言うより、もう、かかわりたくないという感じですね」

「かかわりたくない?」
「はい、何を言っても分からないんですよ。主婦の感覚と言うか、所詮、閉鎖的な女性の考えで支配されている団体で、あきらめました。長期的なビジョンも描けないで『奉仕奉仕』と言いますが、彼女達は自己満足を感じることで精一杯だから・・・」

「うん・・・厳しい言葉がたくさん並びましたね」
「何年やっても変わらないんじゃ、何のためにやっているのか?自己成長がないんですよ」

「自己成長がないんですねぇ・・・。堀口さんは、自己成長を感じたくてこの活動を続けているんですか?自己成長って必要ですか?」
「コーチ、人間は、生涯成長したいという気持ちを持っているはずですよ。だから、人間なんでしょ?自己成長を続けるには、学習したり、目標を立てて行動して結果を残すしかないですよね?でも、それを放棄してしまう人たちもいるっていうことが理解出来ただけでもう十分です。今度の総会をもって理事長を退任させてもらおうと思っています」

「堀口さんの胸の内は、すでにお話したんですか?」
「いえ、別に言う必要もないでしょう。皆さん、同じ考えなので私がいないほうが、むしろ『和』が保てていいと思っていると思うんですよ」

「そうですか・・・残念ですね・・・」
「でも、仕方がありませんよ。寄り合い所帯じゃ、出来ることも限られていますからね。私は私にしか出来ないことがしたいので、また、別の角度で地域にお礼の出来る活動をしようと思います。まあ、私には、まだまだたくさんの時間があるので、何とかなると思います」

「皆さんと話し合う時間を、改めて持つことは出来ないのでしょうか?」
「持ったって無駄だから持とうと思わないだけです。感覚が違うんですね」

「この活動をしたいと思ったきっかけというか、意欲は、まだ小さくなっているわけではない。でも、周りの人の賛同を得られないのであきらめる・・というのは、少し淋しい気がしますね。今度は一人でやられるおつもりですか?」
「以前社長をしていた会社では、社員は、いつも私の戦略やビジネスモデルどおりに行動し、常に成果を挙げてきました。私は、今回の活動でも、だからあえて皆さんが嫌がるリーダーを引き受けたんです。皆さんもそれがいいと認めたからしたんです。それなのに、私が実際描いた事業を進めようとした途端、それは理想だとか、そんなことをしたら理解されないのではないかとか、ブレーキばっかり掛けられて。挙句、『堀口さんの常識はちょっとわれわれとは違う』と言われても・・・。むなしいですね」

「そうですか・・・以前社長をしていた会社の社員さんと今のNPO法人の会員さんとを比較して、そのように感じられるんですね。ところで、堀口さんの描くNPO法人の活動って、一般的にどう捉えられているんでしょうかねぇ?」
「一般的に見る?・・・必要があるんでしょうか?なんでもそうだけれど、それぞれであっていいんじゃないですか? 
NPOは利益を出しちゃいけないわけじゃないないでしょう?利益を出してもそれを還元すればいい。大事なことは高い意欲を維持することじゃないですか?やりっぱなしになったり、途中で放り出さないようにすることが重要だと思うのです。
企業活動ではないだけに責任が分散しやすいから、より厳しいルールや規範にのっとって行動することが求められると考えていたのですが・・・」

「そういう、堀口さんの気持ちを皆さんに分かるように説明したことはありますか?」
「最初の頃はしていたと思います」

「その頃の堀口さんの気持ちと今の気持ち、何が違っているのですか?」
「会員のみんなが私の言うことについてきてくれないので、むなしさが益々大きくなっていると言うことでしょうか?」

「理解してもらえないから?」
「はい、理解する能力がないわけじゃなくて、理解しようとする心がないことを感じて更にむなしいかな?」

「以前、会社の社長をされていたときは、社員の方は、堀口さんの言うことを理解しようと努められていました?」
「それは、そうですよ。社長の私の言うことですよ。理解しようとつとめないで、どうするんですか。当たり前ですよ。それにひきかえ、NPOの連中は、理事長の私の意見を聞こうともしないんですよ」

「そうですか・・・残念ですね・・・」
「はい、でも、また新しいことを考えるチャンスを得られることになった。そう考えれば、気持ちは晴れますから大丈夫です」

残念ですが、堀口さんはこのNPO法人の理事長を退任し、今は新たな計画を立てることに専念しています。コーチングセッションのテーマも、どうしたら地域の人に貢献出来るか? どうしたら、皆のやる気を高めることが出来るのか? ということに終始しています。
元経営者としての堀口さんの意欲や能力の高さには敬服しつつも、上下関係や雇う人と雇われる人の関係ではない、横のつながりにおいてのコミュニケーション能力をあげることの重要性を感じていただけるよう、次回のセッションではテーマを絞ろうと心に誓うコーチでした。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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