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コーチング事例集

中小企業へ転職、やる気を失っている管理職への電話コーチング~転職先でのキャリア・プランを考える~


転職をして七ヶ月目の佐藤さん。仕事を続けようかどうか迷っていると、無料コーチングに電話をかけるなり訴えます。「七ヶ月で新たに転職を考えているのですね?」私は湧き上がる疑問をぐっと抑えて、佐藤さんの話を伺いました。
「私が再就職をした会社は、オーナー会社で典型的なワンマン社長が仕事を一人で切り盛りしていて、一から十まで全て、それこそ鉛筆一本買うのまで逐一報告し指示を仰がなければなければならないんです。組織というものがまったくないんです。

社員が頼りなく思えたのか娘婿を専務にして会社に入れたんですが、社長の娘が社員でもないのに毎日だんなさんである娘婿の専務と一緒に会社に出てきて、言いたい放題わがままし放題。この前なんか営業の車を自分の買い物に使ったりしているんですよ、営業マンの運転手付でね。
それでも何とか我慢をして、みんな社長の顔色を伺いながら、仕事はしているんです。

ところが、先日、私の提案した新人事制度導入に当たって社長と意見が合わず、激しく口論してしまったんです。娘婿や娘もいたんですが、父親をなだめるでもなく、ただ、おろおろして父親を見るばかりで、他の社員の手前、私も引っ込みがつかなくなって思いのたけをすべてぶちまけたんです。社長は横を向いてしまって、それ以来、社長との間が上手くいかなくなっているんです。どうしたものかと悩んでいます。でも、社員には部長として私が職務を全うしているところを見せるのも、教育だと思ったから頑張ったのだからあれでよかったと今でも思っています。しかし、相手は社長だし行き過ぎてはならないと思って、詫びも入れたんです。

しばらくして娘婿である専務に昼飯に付き合ってくれと言われ一緒に食事したところ、『佐藤さん、社長と仲良くやってくださいよ。僕、間に挟まるのは嫌ですからね・・』と言い出されて。いったいここはどんな会社なんだと思ったら、情けなくなって。社員たちは、毎日与えられたことしかせず、社長の好む報告はするけれども、機嫌が悪くなりそうな話はこっそり自分たちで処理している。過剰な残業をしても申告すると『能力がないからだ、遅くまでやればいいってものじゃないんだ、月給泥棒、電気代だってかかるんだぞ』と社長から怒られるから申告もしないし、社長のいうとおりにした仕事でクレームが出ると、社員は、黙って出張して改善に当たっている。業務命令でない出張先で事故にでも巻き込まれたらどうするのか。先行きがない会社に転職してしまったようで・・・」
佐藤さんは、ここまで一気に離すと、それっきり、黙り込んでしまいました。

「佐藤さん、佐藤さんが今一番解決したい問題は何ですか?」私は、ずばり、佐藤さんに伺いました。このまま、話を聴く時間を持つのも一つのセッションのあり方かもしれませんが、愚痴や不平、不満を聞くだけの時間に終わらせたくないと思い、セッションの方向を決めるために、質問をしてみました。本来なら、選択肢を上げ、どれかを選んでいただいたほうが良いのでしょうが、時間はまだ、たっぷり残っているので、あえて、自分の心とコンタクトをとってもらう質問をしたのです。
案の定、佐藤さんは、「一番解決したい問題ですか?・・・」と、聞き返すようにつぶやいて、また、しばらく沈黙されました。

私はコーチとしてコーチングをはじめたころは、クライアントの沈黙の時間が待ちきれず、再度質問を繰り返したり、違う質問をしてみたりと、クライアントを混乱させていたようですが、このごろは沈黙を恐れないようになったばかりか、沈黙の重要性を知ってからは、じっと待つことが出来るようになりました。
「ゆっくり考えていただいていいんですよ。待っています」と伝えることによって、更に自由に考える時間をたくさん持ってもらうよう、促します。

しばらくの沈黙の後、佐藤さんはやっと重い口を開かれました。「一番、解決したい問題は、会社との関係です。会社とのというのは変ですね。社長との関係です。零細企業は、社長イコール会社ですから、やはり社長との関係ですね」「なるほど社長さんとの関係ですね、それでは社長さんとどんな関係になりたいんですか?」

「私はある大手企業で生産工程管理部長として仕事をしていたんです。今の社長とは同じ業界で、業界の勉強会などで顔を合わせているうちに親しくなって、勉強会や懇親会以外でも、社長が出張されるたびに、食事をご一緒するようになっていたんです。私が五十二歳になって、関連会社に出向するかどうか、社内での立場をはっきりさせなければならなくなったとき、社長が、『うちに来て仕事をしてみないか?』と誘ってくださったんです。『君の工程管理業務に関する能力を買っている。会社を活性化するのにその能力を活かしてみないか』と、とても嬉しい言葉をかけていただいたんです。同じ仕事を続けられるのであれば、望まれたところで仕事をしたほうがいいと思って思い切って転職したんです。

ところが、会社に入ってみると、外で拝見する社長の顔と、社内での会社の顔がまったく違うということにまず驚かされて・・・。外面がいい人だったんだと理解してからは、社長に信頼を寄せることが出来なくなってしまった。社員は皆、社長のほうを見て仕事をしているわけですからね。これじゃ、強い組織を作ることは出来ない。強い組織が出来なければ会社の将来など期待出来ないんです」

きっぱりと言い切る佐藤さんに、私はひるまず質問を続けます。「将来に期待は出来ないけれども、社長との関係は修復したい。修復したら、佐藤さんはどうなるんですか?」
「私と会社、いや、社長との関係さえ修復出来れば、私のこれまでの腕をもう一度振るうことが出来ると思うんです。なんとしても、社員のあの『どうせ何やったって、社長のご機嫌一つなんだから、余分なことはやらない』という消極的な姿勢を変えたいんです」

「なるほど、社員の消極的な姿勢を変えたいんですね。それが、ご自身のこの会社での役割であると考えていらっしゃるわけですね。では、その役割を果たすために、何に気をつけて修復を図ればよいのでしょうか?」
「修復するのに気をつけることですか?どうして、そういう質問をされるんですか?何か、私に落ち度があったんでしょうか?」

「いいえ、何もありません。佐藤さん、あえて質問をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「かまいませんが、何か・・」

「佐藤さんは、この会社で社員の皆さんの消極的な姿勢を変えたいとおっしゃいましたが、それは何のためですか?」
「え?! それは・・・」

この日は無料体験コーチングで、時間が限られていたため、現状の確認が精一杯でしたが佐藤さんには、仕事をする目的、それを達成するとどうなるのかという目標の設計を考え、今後のキャリアプランを考えていただくよいきっかけになったことと思います。真剣に聴いてくれるプロを相手に、自分の立場を確認することは、ビジネスパーソンにとって大切なことであることを確信しました。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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