コーチング事例集:コーチ養成講座で実践的なコーチング技能と資格取得を。セミナー、研修、コーチングであなたの課題を解決

コーチング事例集

ボランティア団体の一人の理事の悩み~コミュニケーションを拡大する~


日本にもたくさんのボランティア団体が存在し、それぞれの活動趣旨に賛同した人は、会員として活動しています。
鳴海さんもそんな一人で、今年度、初めて理事になりました。理事の一人として理事会に顔を出し、活動の方向や戦略を立案する側に立てると思い、ワクワクしながら1回目の会議に参加しました。
初めての会議ということあり、緊張して皆さんの話を聞いている間に会議は終了したが、何かしっくりしない気がして、なんとなく心が重い感じでした。最初ということもあり、まぁ、次はちゃんと発言出来るでしょうと、自分を納得させるようにして帰宅しました。
二回、三回と、会議は月に1度行われましたが、終わったあと、毎回何か心に重いものを感じて家に戻っていました。
任期は1年で、再任は妨げられないそうであっても、通常は十二回の会議に出席すると任期満了となるそうです。
今日こそは、すっきり「やった!」と満足する会議に参加にしたいと願い、はりきって時間前に会議場へ到着しました。

ところが、10名の理事会メンバーのうちお一人しか会場に入っていません。「皆さん遅いですね?」と挨拶代わりに声を掛け合うも、開始七分前になっても会長すら会場入りしてきません。
何かが違うと思いながら、その日の会議に出席した後、コーチングの無料体験コースに参加されました。
「はじめまして。コーチの藤原です」
「今、どんな感じですか?」

「今日あったことで、何か気持ちがスッキリしないというか、満足していないんです」
「どんなことでも、スッキリしない、満足しないという重荷を下ろすためにも、コーチングの無料体験を楽しみましょう」

「はい、よろしくお願いします。」
鳴海さんは、硬い表情を浮かべて、藤原コーチとあいさつを交わしました。
「鳴海さん、今日、あなたが満足出来なかったことは何ですか?」
いきなりの質問でしたので、鳴海さんは少し戸惑った表情を浮かべながらも、「実は、今日、ある奉仕活動をしている団体の会議があったんですが、なんかスッキリしていないんですよね。
もうほぼ1年の任期を終えようとしているのに、毎回、何か遣り残しているような気がして、気持ち悪くて・・・」

「なるほど、スッキリしないというか、気持ち悪い感じが残っているんですね」
「ええ、そうなんです。気持ち悪いっていう感じのほうが強いかな?」

「なるほど。どんな点が気持ち悪いんでしょうか?ちょっと漠然とした質問ですか?」
「いえ・・・なんていうのかなぁ? 言いたいことが言えてないって感じですかねぇ・・・。いや違うかな?言いたいことは言ってるんだけど、すんなり言えてないっていうか・・・」

「うん、ちょっとあいまいな感じなんだけれども、言いたいことがすんなり言えないっていうことが、気持ち悪い原因なんでしょうか?」
「ん、まぁ、そんな感じかな?」

「言ってるのに言えないってどんなことなんでしょうか?お差し支えなければ具体的に伺っても良いですか?」
「はい。あの、私が所属しているボランティア団体は女性が多い団体です。役員のほとんどが女性なので、会議と言っても雑談会みたいなものなんです。どこからが議案の審議で、どこからが雑談か分からないんです。今日なんかは、会長ですら、会議室にあわてて入ってきたのが五分前だし・・・」

「なるほど、開始時間ぎりぎりに入った会長に対してどんな感じを抱いたのでしょうか?」
「そうですね、時間は守るべきだし、あんなにぎりぎりで会議を始めても上手くいくはずがない。信頼出来ないっていう気持ちですね。あと、会議中の発言が、会議ルールを無視していて、発言している人の発言が終わりきってないのに、会長は言い訳みたいな、自分の解釈だけを押し付けようとするし。発言していると、こそこそ、隣の席の会員と耳打ちしながら発言するし。こんな会長でも1年の活動はそれなりに出来たんですが、どうにもこうにも、我慢が出来なくて」

「そうですね。会議ルールを無視する。時間には遅れそうになるし。リーダーとして信頼出来ないことが気持ちをふさいでいる大きな要因になっているんですか?」
「ええ、そうですね。リーダーって、文字通り、リードする人だと思うんです。リードする人と信頼関係が結べないのはいやですね」

「そうですね。信頼関係が結べないのはいやですね。ところで鳴海さん、鳴海さんが、残り1回の会議の参加を満足のいくものにするために、あなた自身が努力出来ることはなんですか?」
「私が努力出来ることですか?私が努力しなければいけないんですか?私には原因がないと思うんですが・・何か、私に原因があるんですか?私が間違っているんですか?」

「いえ、そうではありません。鳴海さんは会議ルールを守っているし、当事者意識も高く、積極的に参加している姿勢はとても素敵に思います。しかし、同時に、会長への信頼感が持てないからといって、相手を変えることは出来ませんね。それに、急に会議ルールを学ばせようとしても時間が足らないことでしょう。それでも、あなたに満足していただきたいと、私は心から願います。だからこそ、あなたがあなた自身のために出来る努力を考えていただきたいと思うのです。いかがでしょうか?」

「うん・・・そうですね。何か自分のために出来ることはないかなぁ? 発言をさえぎられそうになっても『ちょっと待ってください。最後まで聞いてもらってもいいですか?あとで、会長のご意見は伺います』とはっきり言ってみようかな?」
「うん、それいいですね。会長のためにもなりますよね。会議の発言ルールを勉強するきっかけになるかもね。もちろん、そういう発言を勇気をもってすることによって、自分のためにもなりますよね」

「私の考え方が間違っているわけじゃないんですよね?」
「ご自分の考えに自信が持てないんですか?」

「ええ、だって、みんな発言ルールも守らずに平気でいるように思えて、それでいいんでしょうか。勉強してないんですかねぇ・・」
「憶測やイメージで私は意見を申し上げることは出来ませんが、鳴海さんがそう感じていることは支持したいと思いますよ」

「何か、結局問題は解決していないけれど、心はスッキリしました。これからもコーチングを受けたいのですが、コーチングを継続して受けるためにはどうしたらいいんですか?私はこれまで、自分の意見は大きな声で言うなと、職場の上司からも、夫からも言われ続けてきました。なぜなら、私の意見は正論過ぎて、相手を追い詰めるだけで、問題をややこしくするだけだって言われてきてたんです。だから、どんなことも飲み込んでいました」
「辛かったですね。でも、誰も皆、自分の意見を言うことを妨げられることはないと思います。コミュニケーション能力の向上のためにも、コーチングを身近に感じる生活をしてみましょう」と鳴海さんを励まし、セッションを終了しました。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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定年間近の部下とのコミュニケーションに悩む課長さん(その2)~部下とのコミュニケーションを拡大し自分に気づく~


水野さんは、コーチとの会話に心が馴染むのを覚えながらも、こんな世間話をするためにこの時間を使うのはもったいない・・と考え始めた矢先のことだったので、改めて、コーチの話の転換のタイミングの良さに驚きを隠せず、ついつい本音で語ってしまいました。

「そうなんです。先生と話しするのは、とても楽しいんですが、私は、そんな世間話をするためにここへ来たのではありません。ちょうど、今、この時間がとても無駄に思え始めていたんです。こんな世間話は、職場では必要がありません。職場は、仕事をする場所であって、楽しみを見つける必要はないんです。私たちが立てた生産計画にのっとって、粛々と仕事をすればいい場所なんです。技術が売り物の会社ですから、技術の伝承は大切な任務。定年退職を迎える職人の技をいかに後輩に伝えるか、それを今後の生産計画に盛り込まなくてはならないのですが、初めてのことなので、どんなふうに計画を立てればいいのか、それが分からなくて悩んでいるんです」。とうとう、水野さんは、本心をコーチに話すことが出来ました。

「水野さん、よく決心して話してくれましたね。
その勇気に感謝します。ありがとうございます」
水野さんは、コーチから感謝の言葉をもらい、照れるように言いました。「いや、そんな。これは私の問題で、私が話すのは当たり前のこと。礼を言われるのは照れますね」

言いながらも、表情がはじめて穏やかになったことをコーチはすかさず指摘しました。
「水野さん、さっきはどうしようと思っていましたけど、今の水野さんは生き生きとしていてとても穏やかな表情になられましたね。つい先ほどまではよろいをきた鉄火面のようでしたね。
ところで、水野さん、水野さんにとって職場は生産性を上げる現場そのもののようですが、部下や後輩、同僚はそう感じているのでしょうか?」とか、「水野さんのその厳しい仕事への姿勢を、みんなはどう感じているのでしょうか?」と、水野さんの仕事をする姿勢について、どんどん質問を投げかけました。
これまで自分は一生懸命仕事をしてきたと自負している水野さんにとっては、意外な質問ばかりです。

同僚や部下には、いつも弱みを見せてはならないと肩肘張って強い自分を見せていることで
管理職としての威厳を保っていた、良く頑張ったものだと、コーチの質問に答えながら水野さんは改めて感じていました。

そんな水野さんの心が伝わったのか、コーチは「管理職としての職務を全うするのに全力投球だったんですね。水野さんの努力には頭が下がります」と、褒めてくれました。

「部長や役員も、仕事は出来て当たり前。ちょっとミスすると、“どうした水野らしくない・・”と声をかけてくれたりフォローしてはくれたりしますが、褒められるってことがぜんぜんなくて。社内の人じゃないけれども、褒められると、なんだか嬉しいですねぇ」と、照れるように微笑む水野さんに、コーチは更に尋ねます。
「上から褒められたことがない。私に褒められてうれしいと言われていますが、水野さんは、部下を褒めたことがありますか?」

「またまた厳しい質問ですね。褒めることはありません。仕事は出来て当たり前ですから。若手は、失敗の連続で褒めようがない。ベテランの職人は褒めても嬉しそうにはするけど、だからといって生産性をあげてくれるわけじゃない。だからいつの間にか、褒めることを忘れていたような気がします」
「褒めるにも技術が必要なんだということを、ご存知ですか?」

「褒める技術ですか?そんな技術って、何だかごまかしの様でいやだなぁ。褒めるんだったら心から褒めたいですね。なにかをねらって褒めるのはいやだな」
「ごまかしですか。そうですね。確かに、人を気持ちよくするだけなら、ごまかしの技術でしょうね。でも、褒めるには褒める理由があるという褒め方や、自分の思ったことを言葉にして伝えるという褒め方だったらどうですか?それもごまかしでしょうか?」

「いや、褒める理由を伝えるというのももちろんですが、自分の思ったことを言葉にして伝えるという褒め方には興味がわきました」
「水野さん、これからの労働環境では、若手の自発的行動や自立を促しながら、職人を育てることが重要だと私は考えています。もしよかったら、コーチングを学んでみませんか?褒める技術についても、もちろん学習していただきます。社内のコーチ養成制度をご存知ですよね?」

「はい。知っています。管理職は誰でも、望むものは手を上げてもいいと聞いています。これまでは、人をどうやって管理するかということよりも、業務をどう管理するかが自分の仕事だと思っていたので、私のような部署の管理者には不要な学習だと思っていました」
「そうですね。サービス業とか、小売業に必要なスキルだと誤解している人は多いですね。でも、職場に一人以上、自分以外に人がいるのであれば、コミュニケーションをとりながら業務を遂行していますね。そうなれば、コミュニケーションを上手に図ることによって、ストレスもなく、業務遂行もスムーズに運んだほうがいいですよね。コミュニケーションをリードすることは、管理職者に求められる能力の一つになってきたんです。ぜひ、部下のやる気を引き出すコーチングの勉強をしてみましょう」と、コーチに強く勧められた水野さん。仕事の終わった夜に会社で行われているコーチ養成講座に参加され、そこで学んだことをすぐに実践しているそうです。

現在は、定年退職まで残り六ヶ月の部下の技術を、職人の卵である若手に伝授する方法を、職人と相談しながら、急ピッチで進めているそうです。
職人肌の部下は、職人にありがちなタイプで無口でありため、自分の気持ちを語ることはありません。しかし、自分の技術には強い自信をもっており、自分を育ててくれた会社のために、何とかこの技術を伝承したいと常々思っていたそうです。しかし、水野さんは、部下を寄せ付けない雰囲気を持っており、水野さんに話をしても取り合ってもらえないんじゃないかと思って、部長に何度か訴えていたそうです。

水野さんは、コミュニケーションを学ぶことによって、部下との会話の質や量を拡大させたことによっ、定年間近な無口は職人先輩社員の気持ちを知ることが出来たそうです。
今では、技術者と管理者二人三脚で技術の伝承をしようという計画は、順調に進められているということです。お互いの誤解から生じているコミュニケーションのもつれが、コーチングによってほぐされていきました。コーチとしては、なにより嬉しい結果です。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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突然の異動でやる気を失いかけてる入社3年目の女子社員~タイプの違う上司とのコミュニケーションを考える~


「おはようございます!」いつも元気なひと声とともにオフィスに飛び込んでくる中井さんは、ホテルの仕事が大好きという活発な社会人3年生、毎日を楽しんでいる女性です。
「今日も元気ですね。あなたの元気な声を聞くと私まで元気になれるわ。いつも、元気を分けてくれてありがとう」私が彼女に感謝して、いすを勧めるのもいつものことのようになりました。
ところが、今日はその元気な一言がありません。「おはようございます」の声が沈んで聞こえます。
何かあったのかなっと思いながら、いすを勧めると
「先日ね、人事異動があったんです。私、お客様に直接に接するフロント業務から外されてしまって・・裏方のオフィス業務になっちゃたんです・・」
悲しい表情を浮かべる彼女にさっそく今感じている気持ちを聞くことにしました。

「そう、オフィス業務に異動になったのね?それで今、どんな気持ち?」
「うん・・・正直、どうして?っていう気持ちを最初に感じたんです。入社当時は無我夢中でやっていたフロント業務でしたけど、三年目の今年になってお客様のお気持ちも何となく分かるようになり、上司の指示にもてきぱきと応えられるようになってきたんです。それで、さあこれから頑張るぞってとこだったんです。だから、どうして異動なの?って感じました。次に沸いてきた気持ちは『怒り』でした。なんで異動なんてさせるの?私がホテルに入ったのは、お客様と直接顔を合わせて、お客様を気持ちよくもてなしたかったからなのに。そのために、厳しい上司の言葉にも何とかついていって一生懸命やっていたのに、そんな私の気持ちが分からないホテルって、どうなのよ?って感じ」

「なるほどね。今は、怒りを感じているのね?」
「うん・・そうでもないの。今朝はね、失望かなぁ・・。内勤の仕事を1週間体験したけど、どうしてもつまらないと思えて・・・。ここにいてもいいのかなぁ?って感じ。お前はもうこのホテルにはいらない。ホテルで働きたいのなら、他のホテルに変われって、会社から言葉にならない命令っていうか、暗示をされたのかな?って思ったり、思い直してここでの仕事はきっと将来自分が前線に戻ったとき、必ず役に立つからと、自分を奮い立たせてみたり。すごく複雑な心境なんです」

「そう、気持ちが沈みかけると、自分で浮き上がらせようと別の考え方をするようにしてるのね?」
「そうですね。このまま沈んじゃったら、やる気がでないというか、たぶん、仕事に行かなくなっちゃうと思うから・・・」

中井さんは、そう言いながらも、このセッションでも、少し無理に自分の心を奮い立たせようとしているようです。

「中井さん、あなたはこの状況をどうしたいと思うの?」
「うん・・まず、何の仕事をすることが自分の役割か、それが知りたいんです。正直わかってないんです。どんな仕事を与えてもらえるかも。1週間じゃわからないし、上司からの指示もないんです」

「職場での自分の役割がわからないのね。どんな仕事を与えてもらえるか?ということだけど、こんどの上司はどんなタイプの人なの?」
「なんだかよく分からない人。何を考えているのか分からない人なんです。答えを言わないというか、具体的な指示を出してくれないんです。『これについては君はどうしたらいいと思う』って解決の方法を聞かれることはあるけど、まだ、その仕事を理解していないのに、解決の方法を考えろといわれても困るし、それよりなにより、結論を出してくれないから、どうしたらいいか、わからないんですよね」

「なるほど、上司が結論を出さない人で、中井さんと解決方法を相談する人なのね?」
「ええ、そうなんです。なんと言ったらいいのか?現場にはいなかったタイプの人ですね。現場の上司は、お客様の気持ちをいかに実現してあげるかとか、どんなふうに答えようか、瞬間、瞬間、答えを出していたわけだから・・・。今までと全く違ったタイプの上司で面食らっているんです。毎日が憂鬱なんです」

「タイプの違う上司になって、どうしていいのか面食らっているわけですね」
「あ~あ、そうか。私は、上司が今までのタイプと違うことで気持ちが沈んでいたんだ!」

「そうですね。上司にも色々なタイプの人はいますよね。新しい職場で仕事のやり方がまだ分からないのに、職場の異動と同時に上司が指示を出すタイプから、考えさせるタイプに変わったものだから混乱しているのですね。そして、それは、中井さんにとってはとても大きな問題だったんですね。それに気づいた今の気持ちはどうですか?」
「コーチにしては珍しく、せっかちな質問ですね!あはは、でも、すっごく霧が晴れてすっきり!っていう感じです。問題は、別にもあると思うけど、そのうちの一つは、解決しました。今日、ここに来るのも面倒だなって思ってたけど、来てよかった」

「今までとタイプの違う上司とどのように接しようと思いますか」
「そうですね。今度の上司は、私にじっくりと考えさせてくれるタイプ、仕事変わったばかりで右も左もよくわからないので、かえって好都合。自分のアイデアをどんどん出して、それが通用するのかどうかを検証してみることにします」

「中井さんが仕事のことを自分で考えてアイデアを出すのはとてもいいことだと思う。そのためにはどうすればいいかなあ?」
「新しい職場に早くなれないといけないと思います。そのためにも、どんどんアイデアを出して実践していこうと思います、それによって、より以上に新しいの職場での仕事にも慣れてくるはずだし・・・」

中井さんは、来たときと変わっていつもと同じくらいの明るさで、戻っていきました。
中井さんは、自分では気づいていません。彼女の心の中を占めていた問題の本質は、異動があったことではなく、仕事が嫌なことでもなかったことです。上司のタイプが変わったことにあったわけです。しかも、その問題の大きさは、自分が考えているほど、自分に大きな影響を与えてはいないのです。なぜなら、帰るときの彼女の笑顔は、いつもと同じように輝いていました。
コーチングを通して、コーチは客観的に冷静に、相手の問題解決の支援をいたします。だからこそ、いつもと何か違うことがないかと、観察眼をするどくして、クライアントと向き合います。
春は人間関係も環境も、新しくなる季節です。自分だけで解決出来ないと考えていることをコーチに話してみませんか? すっきり!春らしい心を取り戻せること、期待してください。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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新入社員との関係に悩む新任係長重田さん「社内コーチ制度」の失敗~社内コーチ制度を作るための環境整備~


新任係長重田さんの悩みは、今年入社の1年生社員伊藤くんとの関係だった。去年の四月に伊藤くんが入社して十一ヶ月が経ち、今は二月です。他の部署に配属された1年生社員は、それなりに業務を一人でこなしているように見え、自分の下に配属された伊藤くんのことを疎ましく思うこともあり、なかなか思うようにならない苛立ちから、このごろでは伊藤くんの顔を見るのもイヤになり、出社するのさえ気持ちが重くなってしまっていた。
そんなおり、部下への対応に悩む社員を助ける制度として社内コーチ制度が出来たとのことで、それがどんなものかわからなかったが、わらをも掴む気持ちでさっそく利用してみようと重田さんは人事部へと赴いた。
人事部の扉は硬く閉まっており、いつもながら、人事部への入室は気が重かったが、それでもこのままでは二人とも会社に居場所がなくなってしまう、何とかしなくてはという焦燥感に駆られて、とにかくノックだけでもしようと重田さんは行動しました。
ノックして、人事部に入った重田さんを待っていたのは、いつもいかめつい顔をして、威厳的というか、権威の象徴というような顔立ちの三上部長でした。
重田さんは、三上部長が苦手で、思わずしりごみしましたが、顔を見ただけで退室しては失礼であると考え、踏みとどまって思いきって聞きました。

「あのう・・社内コーチ制度というのが出来たという掲示板の記事を読んだんですが、どのような制度なんでしょうか?」
すると、三上部長はいつにもまして威厳的に、「社内・社外を問わず、コミュニケーションが上手くとれずに困っている社員の支援をするというものだが、重田君だったね、君はこの制度を利用したいのかね?何かあったのかね?コーチにコーチングを受けて見る気があるのかね?」三上部長は、ニコリともせずに答え、質問をあびせかけてきました。

「はい、一回コーチ制度を受けてみようかと思っています。それで、そのコーチはどなたがお勤めになるのでしょうか?」三上部長は、いつご機嫌が良くて、いつご機嫌が悪いかがわからないタイプなので、出来る限り言葉遣いに気をつけながら、重田さんは質問を続けました。

「コーチは原則として部長の私がします。社内の問題だから、人事部の部員が私を中心にしてコーチをするわけです。社員の微妙な問題に関わってきますから、事情のよくわかるものほうがいいんです。社員は全員が貴重な人材なんです。今回導入した『社内コーチ制度』は、会社の重要な人事戦略の一つなんです」
三上部長は、丁寧に説明をしてくれますが、なかなか重田さんの心は開きません。(「こんなこと聞いたら、査定が下がるかなぁ・・」)(「何で部長がコーチなんだろう・・井上課長にコーチをお願いすることは出来ないんだろうか」)など、余計なことを考えながら質問しているので、どうにも歯切れが悪いのが自分でも気になるほどでした。

五分ほど、気まずい思いで三上部長と話した重田さんは、結局、相談があるとは言えずに、コーチとはどういう制度であってどんなことが望めるのか、人事戦略としての取り組みであるということを確認しただけで、この日は人事部をあとにしてしまいました。
日々の業務では、新人伊藤くんが自律した仕事が出来ないので、重田さんは二人分の仕事をこなす時間が多く、どんどんとストレスがたまっていきます。先日聞いた社内コーチ制度を使って、どうしたらいいのかを支援してもらおうと考えても見ましたが、しかし、三上部長の威厳的な態度と向き合う勇気は出ないので、どうしようかと迷うばかりで、仕事も手につかなくなってしまいました。

直属の上司の課長に相談しようと思っても「伊藤くんは明るくていまどきの若者っぽいけれども、話せばわかると思うよ。飲みにでも誘ってみたらどうなんだろう? そうだ、どうだね、今夜三人で一緒に行くかね?」と言われてしまい、社内で一緒に過ごすだけでも精一杯なのに、勤務後もつき合わされそうになってあわてたことがあってからは、上司の課長にも相談出来ずに、モヤモヤしたまま毎日を過ごしていました。

やがて、重田さんは、このままでは伊藤くんまでつぶしてしまいかねないと考え、勇気を振り絞って、改めて人事部のドアをノックしました。
「はい、どうぞ」中から声がしたのは、井上課長でした。
重田さんは救われたように、ドアを開け、胸に中の全てを井上課長に話しました。

「ご相談があってきました。部下とのコミュニケーションのことで『社内コーチ制度』を利用したいのですが、コーチ役の三上部長はいらっしゃいませんか」
「三上部長が自らコーチをやられるのですが、三上部長が不在の時には、代理として課長の私、井上がコーチ役をやらしてもらっています」
幸い、三上部長は席に戻られなかったのですが、いつ戻ってくるかと思うと、重田さんは気が許せず、井上課長から出される質問にも、深く考えもせず、常日頃思っている不満ばかりを口にしました。

ところが、二十分ほど話したのですが、重田さんの心の中は、ぜんぜんスッキリしていきません。むしろ、井上課長の質問が多くなれば多くなるほど、息苦しさを感じる始末です。(「おかしいなぁ・・聞いてもらっているんだから、もっとすっきりしてもいいはずなのに・・」)と思いながら話す重田さんの表情は、ますます暗くなり、うつむき加減になってしまいます。
井上課長もそれに気づき、「今お話いただいていることは、私の胸のうちだけにしまうことですから、どうぞ安心して話してくださいね」と言われました。しかし、じゃぁ話そうという気持ちにもならず、もっと話したいと思いながらも、重田さんはとうとう言葉に詰まってしまいました。
(「部下に対する不満を言っていると、自分の査定にひびくんじゃないだろう。余計なことを言わないで、自分のことを大事にしよう。新入社員の伊藤くんのせいで、自分の成績が落ちるのは馬鹿馬鹿しい。部下が出来が悪いとあまり言っていると、自分の出来の悪さを自白していることになるぞ・・・・。人事部のコーチなどに相談するんじゃなかった」)
この事例は、社内にコーチング制度を立ち上げる会社が良く陥る失敗です。

まず、コーチング専用の環境を準備していない。人事部配属の社員がコーチ役となるため、評価される側とする側という対峙関係があるという社員の意識改革が出来ないと、本音を語る機会にはならない。などの理由から起こるものです。井上課長は、人事部担当の課長という点において信頼も置かれているのですが、反面、社員の情報をいつも集めているのではないかという見方を、社員からされているということをわきまえていなければ、せっかくの制度も作っただけで活用されることがないまま、社内のコーチング熱が醒めてしまいます。

社員の育成計画は、ますます重要になってきました。長期的に、戦略的に立てておかなければなりませんが、コーチング流に捉えるならば、制度を作ることがゴール(目標)ではありません。どう運用するか、それによってどんな風に社内風土がかわるのか、どんな風に社員が育つのか?など、明確なビジョンを描いておくことが大切です。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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洋菓子店の若奥さん 店員さんの教育に悩んでいます~モチベーション向上に必要な承認とアサーティブな表現~


老舗洋菓子店のリニューアルオープンの日の朝、記念にサービスで配る新作のチーズケーキを目当てに並んだお客様と店員との間に小さなトラブルが発生したものの無事、自らが間に入ったことで解決させたという、老舗の洋菓子店を営む由香利さんとのコーチングをご紹介します。

「リニューアルオープン、おめでとうございます。大変なお客様だったようですね?」
「はい、ありがとうございます。開店前から、新作のチーズケーキのサービスを目当てに、大勢のお客様が行列をされて、大変でした」

「そうですか・・それは大変でしたネェ・・」
「ええ、開店前に、常連のお客様の大きな声が聞こえたものですから、やっぱり我慢出来ずに、
私が飛び出しちゃいました。ほんとうは、店員にやらせるつもりだったのに・・・」

「そうですか、それは残念でしたね。そのお客様は例の由香利さんのおっしゃってた方?」
「はい、父の代からのごひいきさん。母も、よく叱られた彼女です。地元では名士なんです。小言の多いことでね。でも、それを彼女は、自分の名前は有名で、どこに行っても私が来ましたといえばわかるからって勘違いしていらっしゃるの。何でも自分の思うとおりになると思われてるみたい・・・」

「困った方ね・・」
「でも、その方に困ったんじゃなくて、やっぱり社員が及び腰で対応するから、今回もトレーニングにならなかったことについて頭が痛いんです。あれほど、お客様はみんな大切、お客様によって区別してはいけないのよって、あれほど教育したのに・・」

「あの方のお顔が見えた途端、誰が表の行列の世話をするかを押し付けあっちゃうんだもの。まったく研修の成果が上がらなかったように思います」
「そう、研修の成果が上がらなかったように感じるのね・・。接客の問題というか、苦情対応についての研修が更に必要だということはわかったと思うけれども、この問題から、何を得た?」

「ふぅ・・」
「大きなため息ね。由香利さんの悩みの大きさが理解出来るわ」

「やり直しってことですかねぇ・・・父の代からの社員はもう、あまりたくさんいないけど、
それが却ってあだになっている。古い時代の感覚の社員は、邪魔に成ると思ったから、極力、辞めていただいたけど、今の若い人じゃ、お客様あしらいがわからないらしくて・・。でも、私も夫も、ただの街のケーキ屋で終わりたくないから・・。こういう目標も、ちゃんと話してきたつもりなのに」
「由香利さんや、ご主人の気持ちと言うか、会社の目標すら理解してもらってないと感じているのかしら?」

「そうね、まったくそうですね。なぜ、リニューアルしたか?なぜ、無料で新作のケーキを配るのか?ちゃんとすべてを話して、理解してもらっていたと期待していたのに・・・」
「それだけに、辛さも倍増しちゃったのかしらね?」

「そう、そうですよ。結局、身内のもの以外の手は、当てにならないのかしら・・・」
「今日は、少し、悲観的な気持ちでいるようですね。ところで、なぜ、無料の新作チーズケーキを配ったんでしたっけ?」

「新しいお客様の開拓です。若い女性のお客様に来ていただきたかったからです」
「どのくらい、新規のお客様に配布出来ましたか?」

「確かな数字は把握出来ていませんが、社員が言うには、60%くらいは、新しいお客様の手に渡ったと聴いています」
「60%くらい配布出来たわけですね。この数字に対する、由香利さんの満足度は?」

「うん・・そのくらいで十分かなぁと思います」
「その結果について社員の方と一緒に喜びを味わいましたか?」

「いえ、例のおばさんの対応のまずさについて、どうしたらよかったのかを考えさせることにしたのでまだ・・」
「そうですか、残念ですね」

「残念?」
「ええ、社員の皆さんは、残念だと思っているのではないでしょうか?出来たことは褒められず、出来なかったことを叱られる。確かに、出来なかったことを指摘し、考えさせることは大切だと思います。しかし、二つの件は、別々に評価出来ることだと思うのですが、いかがでしょうか?」

「はぁ・・なるほど。別々のこととして考えれば、それはそうですよね」
「このほかに、褒めてあげられることは何かありますか?」

「うん・・あ、そういえば、お客様が途切れたときに、前よりショーケースを磨いたり、ガラスを磨いたり、包装紙の切れ端をきれいに揃えておいてくれるようになりました」
「なるほど。由香利さんも、細かなところまで観察出来るようになりましたね?」

「ありがとうございます」
「もし、一つだけ、早急に改善して欲しいと思うことを話してもいいということになったら、何を取り上げますか?」

「そうですねぇ・・・ご年配の常連客への対応について、練習をすることですかしら?」
「なるほどね。やっぱりご年配の常連客への対応は気になるということですね?では、それをどんなときに伝えますか?」

「朝礼のときかしら・・・お昼からは、シフトの都合で、社員が出たり入ったりで集合する時間がありませんから」
「なるほど。では、どんなふうに話しますか?」

「ん・・・・これから、皆さんで研修していただきたいことがあります。この間の開店のときのお客様あしらいが良くなかったので、研修したいと思います。こんな感じかしら?」
「なるほどね。それを、由香利さんが社員の立場で聞かされたとしたら、どんなふうに思いますか?」

「え?社員として自分の言葉を聴くんですか?」
「はい。そうです。いかがですか?」

「なんか・・ちょっとキツい感じがするわ・・・朝ですし・・・」
「そうですね。ちょっとキツいですね。では、どうしましょうか?」

「どうしたらいいんでしょうか?・・・」
「もし、時間があるなら、今週はこの話はしないでいただいて、来週のセッションまでに話し方を考えてきていただけますか?」

「はい、わかりました。考えてきます」
「優しすぎず、キツ過ぎない言い方って、難しいですよね。頑張って考えてみましょう」

リニューアルオープンから四ヶ月。新しいチーズケーキは、テレビやタウン誌に紹介され、ますます忙しく働く由香利さん。あれ以来、社員に対する不平や愚痴はほとんど聴かれず、一緒に研修に取り組んでいるそうです。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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