コーチング事例集:コーチ養成講座で実践的なコーチング技能と資格取得を。セミナー、研修、コーチングであなたの課題を解決

コーチング事例集

新入社員との関係に悩む新任係長重田さん「社内コーチ制度」の失敗~社内コーチ制度を作るための環境整備~


新任係長重田さんの悩みは、今年入社の1年生社員伊藤くんとの関係だった。去年の四月に伊藤くんが入社して十一ヶ月が経ち、今は二月です。他の部署に配属された1年生社員は、それなりに業務を一人でこなしているように見え、自分の下に配属された伊藤くんのことを疎ましく思うこともあり、なかなか思うようにならない苛立ちから、このごろでは伊藤くんの顔を見るのもイヤになり、出社するのさえ気持ちが重くなってしまっていた。
そんなおり、部下への対応に悩む社員を助ける制度として社内コーチ制度が出来たとのことで、それがどんなものかわからなかったが、わらをも掴む気持ちでさっそく利用してみようと重田さんは人事部へと赴いた。
人事部の扉は硬く閉まっており、いつもながら、人事部への入室は気が重かったが、それでもこのままでは二人とも会社に居場所がなくなってしまう、何とかしなくてはという焦燥感に駆られて、とにかくノックだけでもしようと重田さんは行動しました。
ノックして、人事部に入った重田さんを待っていたのは、いつもいかめつい顔をして、威厳的というか、権威の象徴というような顔立ちの三上部長でした。
重田さんは、三上部長が苦手で、思わずしりごみしましたが、顔を見ただけで退室しては失礼であると考え、踏みとどまって思いきって聞きました。

「あのう・・社内コーチ制度というのが出来たという掲示板の記事を読んだんですが、どのような制度なんでしょうか?」
すると、三上部長はいつにもまして威厳的に、「社内・社外を問わず、コミュニケーションが上手くとれずに困っている社員の支援をするというものだが、重田君だったね、君はこの制度を利用したいのかね?何かあったのかね?コーチにコーチングを受けて見る気があるのかね?」三上部長は、ニコリともせずに答え、質問をあびせかけてきました。

「はい、一回コーチ制度を受けてみようかと思っています。それで、そのコーチはどなたがお勤めになるのでしょうか?」三上部長は、いつご機嫌が良くて、いつご機嫌が悪いかがわからないタイプなので、出来る限り言葉遣いに気をつけながら、重田さんは質問を続けました。

「コーチは原則として部長の私がします。社内の問題だから、人事部の部員が私を中心にしてコーチをするわけです。社員の微妙な問題に関わってきますから、事情のよくわかるものほうがいいんです。社員は全員が貴重な人材なんです。今回導入した『社内コーチ制度』は、会社の重要な人事戦略の一つなんです」
三上部長は、丁寧に説明をしてくれますが、なかなか重田さんの心は開きません。(「こんなこと聞いたら、査定が下がるかなぁ・・」)(「何で部長がコーチなんだろう・・井上課長にコーチをお願いすることは出来ないんだろうか」)など、余計なことを考えながら質問しているので、どうにも歯切れが悪いのが自分でも気になるほどでした。

五分ほど、気まずい思いで三上部長と話した重田さんは、結局、相談があるとは言えずに、コーチとはどういう制度であってどんなことが望めるのか、人事戦略としての取り組みであるということを確認しただけで、この日は人事部をあとにしてしまいました。
日々の業務では、新人伊藤くんが自律した仕事が出来ないので、重田さんは二人分の仕事をこなす時間が多く、どんどんとストレスがたまっていきます。先日聞いた社内コーチ制度を使って、どうしたらいいのかを支援してもらおうと考えても見ましたが、しかし、三上部長の威厳的な態度と向き合う勇気は出ないので、どうしようかと迷うばかりで、仕事も手につかなくなってしまいました。

直属の上司の課長に相談しようと思っても「伊藤くんは明るくていまどきの若者っぽいけれども、話せばわかると思うよ。飲みにでも誘ってみたらどうなんだろう? そうだ、どうだね、今夜三人で一緒に行くかね?」と言われてしまい、社内で一緒に過ごすだけでも精一杯なのに、勤務後もつき合わされそうになってあわてたことがあってからは、上司の課長にも相談出来ずに、モヤモヤしたまま毎日を過ごしていました。

やがて、重田さんは、このままでは伊藤くんまでつぶしてしまいかねないと考え、勇気を振り絞って、改めて人事部のドアをノックしました。
「はい、どうぞ」中から声がしたのは、井上課長でした。
重田さんは救われたように、ドアを開け、胸に中の全てを井上課長に話しました。

「ご相談があってきました。部下とのコミュニケーションのことで『社内コーチ制度』を利用したいのですが、コーチ役の三上部長はいらっしゃいませんか」
「三上部長が自らコーチをやられるのですが、三上部長が不在の時には、代理として課長の私、井上がコーチ役をやらしてもらっています」
幸い、三上部長は席に戻られなかったのですが、いつ戻ってくるかと思うと、重田さんは気が許せず、井上課長から出される質問にも、深く考えもせず、常日頃思っている不満ばかりを口にしました。

ところが、二十分ほど話したのですが、重田さんの心の中は、ぜんぜんスッキリしていきません。むしろ、井上課長の質問が多くなれば多くなるほど、息苦しさを感じる始末です。(「おかしいなぁ・・聞いてもらっているんだから、もっとすっきりしてもいいはずなのに・・」)と思いながら話す重田さんの表情は、ますます暗くなり、うつむき加減になってしまいます。
井上課長もそれに気づき、「今お話いただいていることは、私の胸のうちだけにしまうことですから、どうぞ安心して話してくださいね」と言われました。しかし、じゃぁ話そうという気持ちにもならず、もっと話したいと思いながらも、重田さんはとうとう言葉に詰まってしまいました。
(「部下に対する不満を言っていると、自分の査定にひびくんじゃないだろう。余計なことを言わないで、自分のことを大事にしよう。新入社員の伊藤くんのせいで、自分の成績が落ちるのは馬鹿馬鹿しい。部下が出来が悪いとあまり言っていると、自分の出来の悪さを自白していることになるぞ・・・・。人事部のコーチなどに相談するんじゃなかった」)
この事例は、社内にコーチング制度を立ち上げる会社が良く陥る失敗です。

まず、コーチング専用の環境を準備していない。人事部配属の社員がコーチ役となるため、評価される側とする側という対峙関係があるという社員の意識改革が出来ないと、本音を語る機会にはならない。などの理由から起こるものです。井上課長は、人事部担当の課長という点において信頼も置かれているのですが、反面、社員の情報をいつも集めているのではないかという見方を、社員からされているということをわきまえていなければ、せっかくの制度も作っただけで活用されることがないまま、社内のコーチング熱が醒めてしまいます。

社員の育成計画は、ますます重要になってきました。長期的に、戦略的に立てておかなければなりませんが、コーチング流に捉えるならば、制度を作ることがゴール(目標)ではありません。どう運用するか、それによってどんな風に社内風土がかわるのか、どんな風に社員が育つのか?など、明確なビジョンを描いておくことが大切です。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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洋菓子店の若奥さん 店員さんの教育に悩んでいます~モチベーション向上に必要な承認とアサーティブな表現~


老舗洋菓子店のリニューアルオープンの日の朝、記念にサービスで配る新作のチーズケーキを目当てに並んだお客様と店員との間に小さなトラブルが発生したものの無事、自らが間に入ったことで解決させたという、老舗の洋菓子店を営む由香利さんとのコーチングをご紹介します。

「リニューアルオープン、おめでとうございます。大変なお客様だったようですね?」
「はい、ありがとうございます。開店前から、新作のチーズケーキのサービスを目当てに、大勢のお客様が行列をされて、大変でした」

「そうですか・・それは大変でしたネェ・・」
「ええ、開店前に、常連のお客様の大きな声が聞こえたものですから、やっぱり我慢出来ずに、
私が飛び出しちゃいました。ほんとうは、店員にやらせるつもりだったのに・・・」

「そうですか、それは残念でしたね。そのお客様は例の由香利さんのおっしゃってた方?」
「はい、父の代からのごひいきさん。母も、よく叱られた彼女です。地元では名士なんです。小言の多いことでね。でも、それを彼女は、自分の名前は有名で、どこに行っても私が来ましたといえばわかるからって勘違いしていらっしゃるの。何でも自分の思うとおりになると思われてるみたい・・・」

「困った方ね・・」
「でも、その方に困ったんじゃなくて、やっぱり社員が及び腰で対応するから、今回もトレーニングにならなかったことについて頭が痛いんです。あれほど、お客様はみんな大切、お客様によって区別してはいけないのよって、あれほど教育したのに・・」

「あの方のお顔が見えた途端、誰が表の行列の世話をするかを押し付けあっちゃうんだもの。まったく研修の成果が上がらなかったように思います」
「そう、研修の成果が上がらなかったように感じるのね・・。接客の問題というか、苦情対応についての研修が更に必要だということはわかったと思うけれども、この問題から、何を得た?」

「ふぅ・・」
「大きなため息ね。由香利さんの悩みの大きさが理解出来るわ」

「やり直しってことですかねぇ・・・父の代からの社員はもう、あまりたくさんいないけど、
それが却ってあだになっている。古い時代の感覚の社員は、邪魔に成ると思ったから、極力、辞めていただいたけど、今の若い人じゃ、お客様あしらいがわからないらしくて・・。でも、私も夫も、ただの街のケーキ屋で終わりたくないから・・。こういう目標も、ちゃんと話してきたつもりなのに」
「由香利さんや、ご主人の気持ちと言うか、会社の目標すら理解してもらってないと感じているのかしら?」

「そうね、まったくそうですね。なぜ、リニューアルしたか?なぜ、無料で新作のケーキを配るのか?ちゃんとすべてを話して、理解してもらっていたと期待していたのに・・・」
「それだけに、辛さも倍増しちゃったのかしらね?」

「そう、そうですよ。結局、身内のもの以外の手は、当てにならないのかしら・・・」
「今日は、少し、悲観的な気持ちでいるようですね。ところで、なぜ、無料の新作チーズケーキを配ったんでしたっけ?」

「新しいお客様の開拓です。若い女性のお客様に来ていただきたかったからです」
「どのくらい、新規のお客様に配布出来ましたか?」

「確かな数字は把握出来ていませんが、社員が言うには、60%くらいは、新しいお客様の手に渡ったと聴いています」
「60%くらい配布出来たわけですね。この数字に対する、由香利さんの満足度は?」

「うん・・そのくらいで十分かなぁと思います」
「その結果について社員の方と一緒に喜びを味わいましたか?」

「いえ、例のおばさんの対応のまずさについて、どうしたらよかったのかを考えさせることにしたのでまだ・・」
「そうですか、残念ですね」

「残念?」
「ええ、社員の皆さんは、残念だと思っているのではないでしょうか?出来たことは褒められず、出来なかったことを叱られる。確かに、出来なかったことを指摘し、考えさせることは大切だと思います。しかし、二つの件は、別々に評価出来ることだと思うのですが、いかがでしょうか?」

「はぁ・・なるほど。別々のこととして考えれば、それはそうですよね」
「このほかに、褒めてあげられることは何かありますか?」

「うん・・あ、そういえば、お客様が途切れたときに、前よりショーケースを磨いたり、ガラスを磨いたり、包装紙の切れ端をきれいに揃えておいてくれるようになりました」
「なるほど。由香利さんも、細かなところまで観察出来るようになりましたね?」

「ありがとうございます」
「もし、一つだけ、早急に改善して欲しいと思うことを話してもいいということになったら、何を取り上げますか?」

「そうですねぇ・・・ご年配の常連客への対応について、練習をすることですかしら?」
「なるほどね。やっぱりご年配の常連客への対応は気になるということですね?では、それをどんなときに伝えますか?」

「朝礼のときかしら・・・お昼からは、シフトの都合で、社員が出たり入ったりで集合する時間がありませんから」
「なるほど。では、どんなふうに話しますか?」

「ん・・・・これから、皆さんで研修していただきたいことがあります。この間の開店のときのお客様あしらいが良くなかったので、研修したいと思います。こんな感じかしら?」
「なるほどね。それを、由香利さんが社員の立場で聞かされたとしたら、どんなふうに思いますか?」

「え?社員として自分の言葉を聴くんですか?」
「はい。そうです。いかがですか?」

「なんか・・ちょっとキツい感じがするわ・・・朝ですし・・・」
「そうですね。ちょっとキツいですね。では、どうしましょうか?」

「どうしたらいいんでしょうか?・・・」
「もし、時間があるなら、今週はこの話はしないでいただいて、来週のセッションまでに話し方を考えてきていただけますか?」

「はい、わかりました。考えてきます」
「優しすぎず、キツ過ぎない言い方って、難しいですよね。頑張って考えてみましょう」

リニューアルオープンから四ヶ月。新しいチーズケーキは、テレビやタウン誌に紹介され、ますます忙しく働く由香利さん。あれ以来、社員に対する不平や愚痴はほとんど聴かれず、一緒に研修に取り組んでいるそうです。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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異動先の理解のない上司に悩む(その2)~職場異動を命じられ、戸惑う社員に自分の役割を考えさせる~


セッションは二週間に一度の割合で行われていました。三ヶ月1回目の今日までの間のセッションでは、茂手木さんの自身の気持ちが整理出来てはきたものの、まだ、行動に結びつくまでにはいたりません。
「こんにちは、茂手木さん。前回のセッションでは、課長の意見を伺ってみるという約束をしましたが、いかがでしたか?」
「はい、堀田課長に私の考えた計画を聞いていただき、『意見を下さい』と申し入れたところ、快くお受けくださり、先週の金曜日の午後、堀田課長、係長の江碕君と一緒に会議をしました。考えてみたら、何かをする前に相談と言うか、意見をまとめるに当たっての会議は、今回が初めてだった気がします。」

「つまり、いつもは、先行独断し人に相談しないで、自分で考えたものを提案という名の下に部下に押し付けていた?」
「厳しいなぁ・・・。コーチ、でもそうなんですよ。どうせ言っても無駄。堀田課長はやる気がない。社長の意思が理解出来ていないと思い込んでいたものですから。それに係長の江碕君の意見なんて、聞いてもしょうがないと思っていたし・・・」

「江碕さんは当初から、茂手木さんの意見に耳を傾けていてくれたんでしょう?それなのに、相談をするとか、二人で意見をまとめようとしなかったんですね?」
「めんどくさいと思っていたんです。営業のときは一人で何もかもやっていたんです。資料作りや、後方のお客様の管理などはアシスタント社員に手伝ってもらうけれども、通常は一人で作戦は練るし、落とし方も自分で考えますからね。一人で仕事をするのは当たり前だし、それが能力だと思っていましたから」

「今回ようやく江碕さんを巻き込んだのは、どうしても自分の考えた計画を通したいと思ったからですか?それとも、早く営業に戻りたいから?」
「ひどいなぁ・・。営業に戻りたい気持ちはあります。でも、今は、ここでの改善をもっとやりたいと思っているんです。楽しいですよ。皆と議論をするのも」

「よほど、会議が刺激を与えたようですね?」
「はい、営業会議は、どちらかというと数字が出来ているか出来ていないかで居心地が変わる。社長も同席されることが多いので、数字が出来てない奴は、ホント辛い会議だと思います。僕の数字はいつも出来るし、顧客フォローも出来ているから、社長に褒められることが多くて、しんどいことはなかったけど。若い奴らは、気の毒でしたね。それに比べて、社長は同席しないけれども、会社のしくみを揺さぶれるようなこのセクションで、社長が同席しないから大胆な発想も出来る会議は、自由な雰囲気で自由に発言出来る。堀田課長は、自分の意見も言うけれども、僕たちの意見をじっくり聞いてくれるんですよ。どうして、席にいるとき、もっとフランクに話してもらえないのかは不思議だけど、会議をするのは、好きなようです」

「何を決めることが出来たんですか?」
「はい、懸案の残業時間の短縮を実現させるための計画、修正にはなりましたが、ほぼ、自分の意見どおりになりそうです。嬉しいですよ。1年かかったけど、ようやく着手出来そうです」

「なるほど、茂手木さんの嬉しい気持ち、同じように感じます。私もとても嬉しいです」
「ん・・・言いにくいけど、やっぱりコーチのお陰ですね。ありがとうございます。今日のセッションでもそうだけど、結構するどいんですよね?コーチの指摘。でも、そのお陰で、自分を客観的に見つめられた気がします」

「見つめただけでは、行動には結びつかなかったこともたくさんありますね。何が茂手木さんを動かしたか、ご自身どんなふうに理解されていますか?」
「客観的に見るということと、指摘されたことをどう克服するか、具体的に考えることが出来た気がします。強気で言うわけじゃないけれども、指摘されても、課長に言われるよりずっと重みがあるというか、腹が立たないから不思議だったんですよね・・」

「腹が立たない理由が、私との信頼関係であれば私はとても嬉しいです」
「そうですね・・・信頼関係というのかなぁ・・。なんだか分からないけれども、ともかく聴いて欲しいという気持ちが高まるというのかなぁ・・」

「気持ちが高まるだけでは、行動には結びつかないですね。今回は、宿題という形で実際の行動につながっています」
「うん、期限を決めるというのは、大切なことだと思います。あしたでもいいことは、今日はやらない。今日でなければならないことでも、言い訳をして明日に伸ばす。多くの人はそうだと思うんですけど、自分は動いた。何がといわれても難しいけれども、問題を自分のこととして考えたということでしょうか?。今までは、このミッションは、社長からじきじきに言われたので、社長のミッションだと思って、どこかで社長の変わりにやってあげるんだという気持ちがあったかもしれないですね」

「この問題を自分のものとして捉えることが出来たからこそ、行動に結びついたということですね。そして、成果は、ほぼ、自分のプランどおりに進みそうであるというところでは、満足感は高いですか?」
「点数なら九〇点」

「一〇点不足は?」
「スピード、取り掛かりに1年かかったから」

「では、この計画を実行するに当たっての目標は?」
「人を巻き込みながら、六ヶ月で軌道に載せる」

「なるほど、人を巻き込みながら六ヶ月で軌道に載せるんですね?」
「成功したらどんな効果が現れますか?」

「残業をする人がいなくなることはないと思うけど、1日あたりの残業者は減ると思います」
「相対的には減らないけれども、部分的に減少するということですか?」

「はい、セクションごとにノー残業デーを設けますので。六ヵ月後、ある程度、社員の意識が変わったら、今度は、生産部全体のノー残業デーを設けることにします。フロア全体の灯りが消える日が、早ければ七ヵ月後にあるかもしれません」
「営業への配置転換を望む気持ちは?」

「とりあえず、1年、ここで頑張ります。堀田課長ともゆっくり付き合ってみたいし」
「社長へのご報告は?」

「それは、私の仕事ではありません。課長にすべてお任せしていますから」
「会議をもてたことは、ほんとうに茂手木さんにとって重要なことだったんですね?」

「はい、営業部のときは一人で営業していたから、一人で会社を背負っているような気がしていた。そんなこと、絶対ありえないのに。それに、製造や管理の人たちと、営業との仕事の連携も出来ると思うんです。それも目標にしてみたいです」
「なるほど、残念ですが、今日は時間が来てしまったんですが、次回までに達成したいことを決めていただけますか?」

「はい、このプランの実行日を決めることと、部内への通達を出すことです」
「プラン実行日を決める。部内への通達を出すことですね。最後の約束です。ぜひ実行してください。今回のセッションはこれで終わりになります。ありがとうございました」

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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異動先の理解のない上司に悩む~職場異動を命じられ、戸惑う社員に自分の役割を考えさせる~


中堅ハウスメーカーに勤務する茂手木さんは、ベテランの営業マンでした。
ところが、長年の実績を高く社長から評価されていたにもかかわらず、昨春、管理部門に異動になりました。納得がいかない茂手木さんは、勇気を出して社長に面談を求め、今回の異動の目的を尋ねたそうです。
社長は、「管理部門のテコ入れだ。あそこは昼間だらだらしていて、夕方になると残業代稼ぎのために仕事に励む。会社はそんな無駄な金は払えない。まあ、それは一例としていろんな面で役割を果たしていない。君に任せるから、建て直しをしてくれ」と言われたそうです。
ところが、茂手木さんの肩書きは、営業のときのまま、「課長代理」。茂手木さんの上には課長がいるわけです。
「代理の肩書きでどこまで仕事をしたらいいのだろうか?
堀田課長は自分のことをどう受け止めてくれるんだろうか?
みんなと仲良く仕事をしないと管理の仕事が回らないばかりか、製造はじめ各所に迷惑かけることになってしまう。どう調整してあるんだろうか?」と、不安な気持ちで新しい席へと異動したそうです。

案の定、管理課長の堀田さんは、茂手木さんの異動の目的を社長から聞かされておらず、最初こそ自分の提案を熱心に聴いてくれていたそうですが、このごろでは、「君が口出しをすることではない。営業では実績があるだろうが、ここではまだ1年目なんだ、じっくり仕事に取り組むためにも、私たちの仕事を真似てみたらどうだ」と、いなされてしまい、困った茂手木さんはコーチとのセッションを希望しました。

「茂手木さんですね? おはようございます。今日のテーマを決めましょうか?」
「はい、・・あの・・・職場にリーダーがいなくて・・・。私は課長代理と言う肩書きで、今、管理部門で仕事をしています。課長はいるのですが・・・良い管理をするために業務改善や業務改革をしようという意欲は感じられません。部長は、社長の意見をすぐに自分の意見にして受け入れることは出来ても、私から見たら、社長から言われたから受け入れているだけで、どうしたらそれが出来るかという具体的な戦術を考えることが出来ません。私は、こういう人を上司として仕事をしなければならず、どうしたらいいか、わからなくなってしまったんです」

「課長代理として、組織の構成員として注意すべきことはなんですか?」
「はい、課内では、私にも上司がいるわけですから、上司より上に出るようなことがあってはなりません」

「具体的な行動に限定すると?」
「課内での決定は、課長に判断をゆだねると言うことです。それと、課外の調整は、課長の指示や許可がなければしてはならないと言うことです」

「なるほど、組織論を忠実に守りたいと言う気持ちが強いのですね?」
「はい、ただ・・・課長は、現状の仕事の進め方で良いと思っており、社長がそれではダメだと思っているということを知らないので、どうしても、前に出ざるを得ないというか、社長の期待にこたえて、結果を出して早く営業に戻らせて欲しいので、理想どおりには行動出来ずにイライラしているんです」

「なるほど、理想どおりに行動出来ないからイライラしているんですか?それとも、営業に戻りたいからイライラされているんですか?」
「え?営業に戻りたいから?ですか・・・そんなふうに自分の気持ちを考えたことがないので、意外でした。でも、そうかもしれませんね。課長が動かないことにイライラしてるし、今のこの状況が嫌で嫌でたまらないんです」

「営業の仕事がお好きなんですね?」
「はい、大好きです。お客様の顔を見て話をするのが好きなんです」

「そんな大好きな仕事を取り上げた社長に対しては、どんな気持ちですか?」
「うん・・・管理部門に異動になったことが嫌なのではなくて、社長は私の異動をちゃんと課長や部長に言っておいてくれてないことに不信感を覚えています」

「信頼していたのに、残念という気持ちですか?」
「そうですね。不信感でいっぱいです」

以外にも、上司に対する悪いイメージばかりを並べる茂手木さん。
コーチは、指摘したいと思いながらも、もう少し話を聴いてみようという姿勢を保ちます。

「職場をどんなふうにしたいのですか?」
「もっと活発にお互いが意見を言い合ったり、仕事に責任を持つ社員の集まりにしたいです」

「管理は、もともとが目立たない部署ですし、社長もこれまであまり目をおかけにならなかった。だから、人も育っていないし、責任感とか、リーダーシップとかも身についていないんじゃないですかね」
「すべての部門に満遍なく社長が力を入れることは難しいのではないですか?」

「まぁ、そうですけど・・・」
「さて、茂手木さん、茂手木さんの現職場での使命はなんですか?」

「使命ですか?・・・使命ねぇ。わかりません」
「社長のおっしゃった『君に任せる、テコ入れ』にどんなイメージをもっていますか?」

「そういえば、具体的に何をしろとは言われていませんね。だらだら仕事をするということでしたが、実際、業務のボリュームと作業量があっているのかも分かりません」
「では、どんな提案を堀田課長になさったんですか?」

「残業を減らしましょうと・・・」
「どんな方法で?」

「とにかく週1日、残業なしの日を設けましょうと・・」
「堀田課長の反応は?」

「いや・・・無視されているというか、一度検討しようと言われたままで、具体的な指示も評価もありません」
「どうしても残業なしの日を作る必要があるとしたら、その理由は何ですか?」

「特にあるわけではありません。社長が残業代が無駄だとおっしゃったので・・」
「ようやく1年、仕事を経験して、残業は無駄な時間でしたか?」

「いや、実際、大変なんですよ。値引き交渉も、長年の取引先はなかなか応じてくれなくて。1社の交渉に二時間くらいかかるんです」
「その交渉は、営業時代のスキルが役立ちますね?」

「はい、確かに・・。管理の人はどちらかというと交渉が苦手のようで。よく、茂手木さん、助けてくださいといわれます」
「そんなときはどうなさるんですか?」

「はい、手が空いていれば助けて取引先と交渉しますが、手が空いていなければ断ります」
「そんな茂手木さんを上司はどう感じているのでしょうか?」

「ん・・・協調性のない奴だと思っているのではないでしょうか?」

茂手木さんは、堀田課長の気持ちも、他の社員の気持ちも理解出来ていません。
自分の役割も理解していません。
自分は特別と思いたい気持ちや、社長との信頼関係をこれ以上失いたくないという気持ちが強いことは理解出来ますが、職場の皆と強調しなければ仕事は進まないことを理解出来ていません。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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ベテラン駅員さんの苦悩~若い駅員のモチベーションを上げる~


地方では大きな花火大会が開催される日に、終日、気が抜けないのは、会場係員や会場に一番近い駅で働く人たちです。
今年も無事に? 花火大会を終えたある私鉄の駅員さんとのセッションをご紹介します。

「この間の花火の日、コーチはどこにいらしたんですか?」
「残念ながら、私は出張に出ておりました。立花さんは、勤務日だったんですよね?」

「ええ、もちろんです。すごい人出でしたよ。日ごろは千人という単位でのご利用者がいるわけですが、花火の日は、万人に膨れ上がります。大きな事故がなかったことがせめてもの救いというか、自分たちへのご褒美ですね」
「お疲れ様でした。良かったですね。事故が起きずに済んだのは、皆さんのご努力のおかげでしょう」

「ありがとうございます。迷子や、忘れ物は、相変わらず、例年通りでしたけれどもね。面白いといったら不謹慎だと思うんですが、浴衣ブームだったでしょ?帯が外れた子供がいたようで、帯の忘れ物が一件ありました。びっくりしました」
「すっごい忘れ物ね。帯が解けたら気づきそうなものですが・・そういう親御さんだと、お子さん忘れても気づかないかもしれないですね」

「笑い話じゃないですよ。何年か前に、男の子が駅に置き去りにされたことがありました。可愛そうだったのは、駅に着いたばかりで改札口を通る前だったから、しばらく親御さんが迎えにいらっしゃるまでに時間がかかって、男の子は、花火をここから見ていました。まるで、駅に泣きに来たようなもので・・」
「親御さんは、はぐれたことにも気づかれなかったんですか?」

「いや、まさか。でも改札口ですでにはぐれたとは思わなかったようで、花火の会場の中でずっと探していらしたということでした」
「そうですか、いろんなドラマが駅にはありそうですね」

「ええ、そうですね。迷子になった子供とせっかく会ったのに、いきなり子供に向かって『だからちゃんと手をつないでなさいと言ったでしょ!』と、怒り出すお母さんがいて。子供の頭を叩くんですよね。僕らからしたら、子供より、お母さんを叩いてやりたくなります。
もちろん、ぐっと我慢ですけれどもね。ところで、このごろの若い駅員は何を考えているか、ほんと、理解出来ないですね」
「深くため息をつかれましたが、何か強くお感じなる出来事でもありましたか?」

「ええ、こういう日は、駅の改札口の外に出て、整列入場をお願いするんです。何メートルも前から並んでいただけると、駅構内への入場が結果的に早くなるからです」
「なるほど」

「でも、駅舎から出て、拡声器で整列を呼びかけるのは、慣れないと恥ずかしいものなんです。自分たちのころは、若い駅員の役割だと思って、恥ずかしくても率先してベテラン駅員に指導を受けて、自らかって出たものですが、今の若い人たちは、出来ればそんな恥ずかしい仕事はしたくないと思っているんです。だから、時間を決めて、ローテーション表で管理して、指示しなければならない。こんな忙しい日に、ローテーション表と首っ引きで若い連中が持ち場についているかなんか確認しながら、仕事は進められません。お互い、チームワークよく自分の仕事を自分で見つけながら進めるべきなのに・・」
「なるほど、自発的に動かない。気配りもない仕事ぶりにいったい何を感じたんでしょう?」

「とにかく仕事への意欲のなさにはほとほと嫌気を感じました。鉄道が好きで、小さいころから電車の運転手に憧れを感じて鉄道マンになる人は多いのですが、今の若い人は、就職先の一つが鉄道会社だったっていう感じかな?」
「うん・・若い人の気持ちは分かりませんが、立花さんが、若い人の勤務態度を不快に思う気持ちと鉄道を愛していることは理解出来ます」

「ありがとうございます。こういう話って、家でしても女房は、『そんなに腹が立つなら、もっとちゃんと指導すればいいじゃない?あなたの指導力が問われちゃうかもしれないでしょ?』なんて具合で。ちっとも理解してくれないのに、コーチと話をすると、問題そのものが解決しなくても、まず、ほっと出来るからいいですね」
「ありがとうございます。気分が晴れるという感想をいただけるのは嬉しいです。しかし、立花さん、ただの愚痴話に終わらないためにも、今後、どんなふうに指導したいかを考えてみてはいかがでしょうか?」

「そうですね。僕たちが引退したら、花火の日に駅構内で事故が起きたなんていうことになったら、寝覚めが悪いですからネェ・・」
「一番気にかかることは、構内での事故のようですね」

「それに一番神経を使いますよ。だれにも怪我させずに運行することは、とても大変なことです。当たり前のようですが、当たり前ではない。だから、出来る限りいろんなところに神経を配って、事前にイメージトレーニングして危険回避出来る駅員を養成したいと思っているんです」
「構内での事故を未然に防ぐことは、誰にとってメリットがあるのでしょうか?」

「駅をご利用いただくお客様と駅員の双方です。お客様の安全も確保出来るし、お客様を安全に目的地までお運び出来たら、駅員も自分の仕事に誇りがもてるのではないでしょうか?」

「そうですね。お客様の満足を得ることも大切だし、同時に駅員の満足も高めたいということですね?」
「そうです。どちらかだけじゃ、いけないような気がします」

「それを、若い人たちに伝えるために、どんな言葉を考えますか?」
「そうですねぇ・・・やる気があるのか、仕事が好きなのかが分からない若い連中に、こんなことを言ったら、却って押し付けになるでしょうか?」

「そうですね、今は、相手の気持ちを推測することは出来ても、本心かどうかがつかめませんね。そうであるならば、まず、その辺りからじっくり話を聞いてあげたらいかがですか?」
「そうですね、でも、ただ話を聞くだけでいいんでしょうか?」

「さきほど、奥様との会話にヒントがあるのではないですか?」
「というと?」

「奥様に話を聞いてもらいたいと思って、仕事のお話をなさるけれども、満足感が得られないのはなぜだか分かりますか?」
「うん・・・女房は、何かと意見を言いたがるんだよね。ただ、一言お疲れ様とか、それでもよくがんばっているねって言って欲しいだけなのに・・・。うん、そうか!若い連中の話を聞いたら、それなりにがんばっていることを認めたらいいのかもしれないですね?」

「そうですね。人にはみんな、人に認められたいという願望があると思います。だから、幼稚な考えや行動だと思われても、そのレベルに応じた行動であったり、考え方であれば、それを認めてあげたり、褒めてあげてはいかがでしょうか?」
「うん、それはいい。といってもすぐに褒められるようになるか、ちょっと不安ですが、出来る限りやってみます」

「はい、では二週間後、確認させていただくこととして、今日はこれで終了にしましょう」


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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