コーチング事例集:コーチ養成講座で実践的なコーチング技能と資格取得を。セミナー、研修、コーチングであなたの課題を解決

コーチング事例集

年上の部下の扱いに悩む若手の室長~苦手なタイプの年上の部下とのコミュニケーションを考える~


若くして広報室の室長となった平沢さんは、連日、頭を抱えています。
この春、部下として年上の社員が配属になったのですが、この部下が、ことあるごとに平沢さんに挑戦的な態度をとっており、自分をさしおいて直接若手に指示を出す始末で、指揮・命令系統にも影響が出ているばかりでなく、チームワークにも問題が発生しています。

若手社員は、自分に都合のよい指示を出す年上の社員に従うことが多く、室長である自分の指示を無視した社員の仕事の後始末におわれてしまったり、反対に必要以上に上司に甘えを見せ、与えられた仕事に取り組む前に答えを求めようと相談にくるため、それに答える時間が長くなり、自分の仕事がはかどらずやむを得ず残業を繰り返す毎日になっていました。

平沢さんと初めての出会いのとき、平沢さんには目に力がなく、笑顔も見られず、正直、セッションが成立するかが心配だなという感じでした。
案の定、平沢さんは、「どんなことでもお話くださっていいんですよ」という私の誘いにも乗らず、ただ、じっとうつむくだけでした。

このままでは、平沢さんの心が開かないと感じたので、直感ゲームをしてみることにしました。
思い切って、キーワードに対して直感で感じたことを言葉にしてほしいと提案。何が始まるのか?と、平沢さんは不安そうでしたが、「ゲームのような感覚で取り組みましょう」という誘い掛けに、ようやく首を縦に振るという動作で、承認してくれました。

「春」『社内異動』、「さくら」『はかなさ』、「日本」『閉鎖的?』「ビジネス」『忙しい』「部下」『・・・』
ここで、平沢さんの口はまた、堅く閉ざされてしまいました。

「平沢さん、今の連想ゲームをやってみてどうでした?感想を教えていただけますか?」
私の問いかけに、平沢さんは、「そうですねぇ・・・・私は発想力が乏しいのでしょうか?あまりすっきりした答えが出ていないように思います」と、おっしゃいました。

「私が率直に感じたことをお伝えしたいのですが、かまいませんか?」と伺うと、平沢さんは、「どうぞ、何でもおっしゃってください」と許可してくれました。

「はかなさ、閉鎖的、忙しい・・。三回続けて気持ちがふさがっていることを感じさせるような言葉が続きましたね」
率直過ぎたかな?と思いながらも、平沢さんの表情を観察していると、
「そうですね。自分はこんな人間じゃなかったはずなのに、どうしてだろう・・・
年上の人が部下となって異動してきたんです。彼が配属されてから、おかしくなっちゃたような気がします。年上の部下って、プライドが高く、挑戦的で、どうしていいか分かりません。
彼が私を見下した態度をとるので、若手の部下も軽んじているような態度で私に接してくるし。
さりとて、自分の仕事が進まないと、助けてくれるのは当たり前という感じで、助けを求めに来る。
私だって、新聞社やテレビ局との付き合いや会議の出席予定だってある。その合間をぬって、部下との相談時間を持つことは、大変に厳しいんです。でも、それをしないと、年上の部下になめられるような気がして・・・。
どうして、そんなに私の指示を素直に受けられないのか?私には思い当たる節がないんです。
強いて言えば、私が若くして室長となったことが、彼に気に入らないのかもしれません」

ようやく、重い口を開いてくれた平沢さんですが、その口から出る言葉は、ネガティブな思考の延長線上にあるものばかりでした。

こんな時は思い切ってコーチングをせず、カウンセリングにしたほうがいいのでしょうが、もう少しだけ、コーチングのセッションを試みることにしてみました。

「平沢さんはその年上の部下とどんな関係を築きたいのでしょうか?」
「え?・・・」少し考えて、平沢さんはきっぱりとこう言いました。
「私の言うことに従ってくれる部下になってほしい」

なるほど、確かに指示を受けてくれる部下は必要ですが、ベテラン社員としての強みを発揮しなくてもよいのでしょうか?

「会社としては、平沢さんの部下として、年上の人を配置したということは、その人に対して黙って指示に従ってるだけを求めたのでしょうか。若い人がもっていないベテランのよさを発揮指せようとしたのではないですか?」
私の質問に、平沢さんは、じっくり考えた末、「そうですね。それはそうですよね。でも、彼は年上の自分への配慮を持っていないような気がします。言葉だって乱暴だし。粗暴な感じがするんです。バブルのころの担当者じゃないんです。今の時代は、スマートさや優しさが必要なんです」と、心の中に澱のようにたまっていた年上の部下への思いがようやく吐き出され始めました。

「その部下は、どんな表現をすることが多いんですか?」
「これやれとか、ああしろとか、組織上、自分の方が立場が上なのに、お構いなしです。もちろん、若手の部下にも同じかかわり方をしています。歳が下ならまだしも、役員にもそういう態度をとるから、昇進だって出来なかったんだと思いますよ」

「つまり、平沢さんに対してだけ、横柄な態度や口の聞き方をしているわけではないのですね?」
「・・・(じっくり考え)そうですね・・それは私に対してだけではないですね」と、平沢さんは返してきました。

「指示を受けないことが、異動後、どのくらいあったのでしょうか?」
「たびたびかなぁ・・。でも、そういえば、口答えはするけれども、私の指示を受けなかったことは一度もないかもしれない。私の指示が明確でないときや、目的を知らせずやらせようとして若手の困惑を感じたりすると、彼がみんなを代表して質問していたのかもしれません」

「そうですか、平沢さん、年上の部下のこと、初めて違う眼で見ることが出来たように思います。私は、それを嬉しく思います」
その言葉がどう作用したかは分かりませんが、平沢さんは、はじめのときと打って変わって、積極的に答えてくれるようになりました。
「私も彼を誤解していたかもしれません。私の足らないところを補ってくれていたのかもしれません。私とは違って、粗野ですが彼は彼なりにやってくれていたようにも思えてきました。彼のいいところを見るようにします。それと、これは反省ですが、年下の上司ということで年上の部下への対抗意識が強すぎて、私も肩に力が入りすぎていたような気もします。すこしリラックスしてみよう思います」

私は平沢さんの急激な変化に少し戸惑いました。仕事場に戻って年上の部下の顔を見たときに、すぐに実行出来るのか少し不安です。なぜなら平沢さんは変わりたいという思いを手にしましたが、、年上の部下が、平沢さんの変化を理解するまでは、情況がすぐに変ることはないと思うからです。

平沢さんは、その後十回のセッションを通して、苦手なコミュニケーションタイプの部下とどう向き合うか考えました。今では、ちょっと乱暴で仕切りたがる年上の部下との関係を良好にしながら指揮をとり、活躍中です。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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スーパーの女性係長 ひとりからまわり~真の障害に気づく(苦手な人とのコミュニケーション)~


地域でも敏腕女性経営者として有名な女性が社長をしているスーパーで働く木下さんは、今年の春から係長になりました。

鮮魚コーナーと惣菜コーナーを任されることになり、張り切っていますが、女性ばかりの職場で、何か新しい試みをしようとしても、いつも反対ばかりされて埒が明きません。

年中無休のスーパーなので、女性のパート社員のシフトを組むのが係長としての重要な仕事になっています。各自休みたい日をメモして提出するのですが、全員の都合を全て満足させることも出来ないので係長が本人と調整するわけです。忙しさからうっかり、その調整を忘れてシフトを組もうものなら、もう大変です。無視されて、しばらくは口も利いてもらえないばかりか、指示や命令に従わず、業務に支障が出来る始末です。

こんなことなら、役付きになんかならなければよかったと思い「係長をおろして欲しい」と社長に相談に行ったところ、社長も女性であるからか、「そういう人を上手く束ねるのがあなたの仕事でしょう。同じ女性同士なんだから話せば分かるわよ」といなされるばかりで、八方塞りな想いが強まって、会社に行きたくないという気持ちで一杯です。

そんな時、市役所の生涯学習の講座に「コーチングはコミュニケーションを豊かにする」と題した六回シリーズがあることを知り、木下さんは応募してきました。

まず、自己紹介です。自己紹介からコーチング講座が始まっており、自己紹介のテーマは「今の気持ちを受講生同士伝え合うという」ものでした。「さぁ、では木下さんの自己紹介についてはいかがでしょうか?」と、明るい声のコーチの呼びかけに、受講者の一人が元気よく手を上げて発言しました。

「はい、木下さんの挨拶の良いところは、まじめにはっきりと自分の気持ちを言葉に出来たところです。もっと良くするためには、笑顔でスピーチされることです。緊張なさっているんでしょうけれども、自分の顔の向こう側には、相手の顔があることを意識しないと、自分本位の挨拶になってしまうと思います」。

あまりに見事な切り口で、堂々と指摘された木下さんは、いつもなら、面白くなくてすぐに受講そのものを辞めてしまうのに、今日は腹立たしい思いを感じないで座っていることが出来ることに、不思議だなぁと感じました。

「田中さん、ありがとうございました。他の方いかがでしょうか?」講師の促しに、その後三人ほどが手を上げて発言しましたが、どれも自分の良い点を褒め、悪い点ははっきり指摘してくれており、なるほどこれがコーチングなのか!と、期待が高まるのを感じました。

木下さんは、1回目の講座の翌日は、何となくスッキリした顔で職場に出ましたが、相変わらず挨拶もろくにしてくれない職場の仲間に会うと、自分以外は全員抵抗勢力のように思えてならず、仕事が楽しいはずはありません。しかし、異動を希望したら自分の負けだと思い、心を奮い立たせながら働いていました。鬼のような形相になっていたかもしれません。

何となく木下さんの表情に変化を読み取った、常連のお客様からは、「木下さんがオコゼみたいよ」と、からかわれてしまうこともたびたびありましたが、にらみを利かせていないと、また、どんな反乱にあうかわからないと思うと、気が抜けなかったのです。 

いよいよ四回目の講座の日、自分がクライアントになってコーチングのセッションを受けるロールプレイングを体験出来る日になりました。

コーチ役の受講生は活発に発言する方で、同じ受講生であり、同じときにスタートしたのに、私は遅れをとっているような気がして、少し苦手なタイプでした。

「さぁ、木下さん、今日のテーマは何にしましょうか?」コーチ役の女性ははきはきとセッションを進めようとします。「はぁ、古参女性社員のマネジメントについてお願いします」木下さんは、遠慮がちに言いました。

「木下さん、ちょっと緊張していらっしゃいますか?リラックスして、セッションを楽しみましょう。そのためにも、今の緊張感を数値で表してもらってもいいですか?」
「はぁ、緊張してます。九〇点くらいかなぁ・・」
「九〇点。それは高いですね。リラックスするために、私がお手伝い出来ることがありますか?」
「いえ、はぁ、あの・・」たたみかけるように質問してくるコーチ役の女性の声に接して、まるで、会社でベテランのパート社員から嫌味を言われているような気持ちになりました。

木下さんは、苦手なタイプの女性を前にすると、言いたいことも、自分の感情を言葉で表すことも出来なくなり、笑顔も出ず、相手をにらみつけるようにして接してしまうことに気づきました。この苦手なタイプの女性の受講生ではなく、出来れば、男性の受講生にコーチ役を代わってもらいたいと思うのですが、せっかくコーチ役に立候補してくれたのに、断っても悪いと思い、「お願いします」といってしまった手前、何としてもこの時間を乗り越えるしかないと思い込んでいるのです。しかし、何とか答えなくてはと思えば思うほど、言葉が出てきません。
そんな様子を見かねたのか、講師の先生が声を掛けてくれました。

「新井さん、コーチ役変わっていただいてもいいですか?」コーチ役の新井さんは、ちょっと悲しそうな顔をしましたが「はい、木下さんと相性が悪いみたいなので変わってください。」
と笑いながらコメントしながら、コーチ役を講師とチェンジすることに同意しました。

「さぁ、木下さん、今日のテーマは古参女性社員のマネジメントについてでしたね。本来なら、このセッション後、木下さんは、どんな気持ちを手に入れたいか、ゴールを決めたいところですが、先に現状をたな卸ししてみましょうか?よろしいですか?」
ソフトな講師の語り口に穏やかな気持ちを取り戻した木下さんは「はい、お願いします」と同意しました。

「ずばり!伺いますね、木下さんは、どんな女性が苦手ですか?」
あまりの核心をついた質問に木下さんは衝撃を受けながらも、正直に話してみようと決心出来る何かを感じていました。先ほどの新井さんのときとは違うのです。

何が違うのか?そんなことを考えながらも、講師の質問に答えていく木下さん。どうやらきちんきちんと理詰めで話してくるタイプの人には、詰問されているように感じていたたまれなくなるようです。

セッションを終えるまでに、ほんとうの問題は、苦手な女性とのコミュニケーションがとれないことにあって、決してマネジメント手法に問題があるのではないことに気づくことが出来ました。

コーチングは、コミュニケーションを通して目標達成の支援をする仕事です。人と人が相対することだけに、相性が合う、合わないという問題に直面することがあります。

コーチングはコーチが自分のために行うのではなく、クライアントのために行うものなのです。基本的にはお互いのためにならないときには、勇気を持ってその関係を打ち切ることも大切です。

コーチとして大切にしたいことは、「支援する心」です。コミュニケーションの技術だけではなく、マインドが大切な仕事だけに、忘れないようにしたいですね。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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部下とのコミュニケーションがうまく取れない新任課長のコーチングです。~部下とのコミュニケーションを考える~


新任課長との出会いは、会社のコーチングルームに、予約なく訪問されることから始まりました。

「コーチ、ちょっと話したいことがあるんですが、いいですかねぇ・・」と腰をかがめながら入室された新任課長。
「どうぞ、どうぞ。はじめましてコーチの今井です。よろしくお願いします」と挨拶し、いすを勧め腰をおろしたところでさっそく「部下の山田のことですが、彼が何に悩んでいるのかわからんですが、山田は、この部屋ではどんなことを話題に話しているのでしょうか?」との質問を受けました。

通常、コーチである私は、守秘義務を職業倫理として掲げているため、上司であっても生命の危険等、緊急性が高いか、本人の承諾を得なければ話の内容を開示することはありません。

「ご質問は、山田さんの話の内容を明かしてほしいということでしょうか?」と柔らかく尋ね返すと、「いや、まぁ、何を話しているかを知りたいのはもちろんですが、何を考えているのかがわかれば、もう少し、彼をサポートしてやることが出来るのではないかと思いまして・・・」

「なるほど。部下の考えを知り、サポートしてあげたいと思っていらっしゃるんですね」
「そうです。山田は、何でも一人で抱え込んでしまうたちらしくて、それでは、彼の下にいる若いやつらも育たないですよね? それに、私は、仕事はチームですべきであると思っていて、個人が自分のマンパワーで仕事をするというのでは、異動になったとき困ると思うんです。それと、この間は、山田から、『自分は行政が主催する健康相談会に行ってきたが〝うつ病になりやすい。注意したほうがいい〟と言われた。それだけは避けたいというんです』。

まるで、私が「うつ病」になりやすくしてるみたいに言われてしまって、私こそ、どうしていいのかわからず、ストレスがたまる一方なんです。そんなとき山田がコーチングルームに出入りしていると聞いたもので、上司の私に話さないことをコーチに話しているのではないかと思うと信頼を裏切られたような気がしていてもたってもいられなくて、失礼を承知で押しかけてきたんです」
勤めて穏やかに話そうと心がけていらっしゃるように見えますが、怒りを強く感じさせる口調で話しは続きました。

「いくつかの問題を同時に抱えているように感じるのですが、一番初めに解決したいことは何でしょうか?」
「そうですね、まず、彼が何をしているのか、報告してもらったり、相談してもらえたりすればいいと思います」

「なるほど、報告と相談が必要なのですね。それが出来るようになると、課長さんにはどんなものが手に入るのでしょうか?」
「手に入るもの?・・・なんだろうなぁ。日ごろから報告や相談を受けていればもし彼に、スタンドプレーされても、安心出来るかな?
いまだと、何が起きるかわからないから、不安で落ち着けないことが良くありますからねぇ。いまより安心出来るんじゃないかと思うんです」

「失礼を承知で伺いますが、ご自身の評価に影響することだから、部下の行動が気になるのですか?」
「まぁ、そうですね。私は彼の上司ですからね。取引先の人から、私の知らない彼の行動を教わる私の身になってください。管理者としての能力がないような気持ちに追い込まれるんですよ」

「なるほど、管理者としての能力がないように思われるんですね。つらいんですか? 怒りを感じるんですか?」
「怒りですね。もう少し人のこと考えろって感じかなぁ・・」

「そうですね。課長のことを考えてほしいっていう感じですね。ところで課長が山田さんのことを〝人の気持ちや立場がわからんやつだ!〟とレッテルを貼って見ていることを、山田さんは感じているようですか?」
「うん・・それはどうかな?感じているんだったら、もっと積極的に自分から接触してきてもいいと思うけど・・」

「つまり、感じてないから、行動が変わらないとお考えなんですね」
「はぁ、まぁ、そういうことになりますか? よく分かりません」

「一つ、私が今感じていることをお話してもいいですか?」
課長は不安な表情を浮かべ、少し私の話を聴くことを躊躇しましたが、嫌だ!とは言えない様子で、私の意見を聴こうとします。

「課長さんから伺う山田さんの考えは、すべて課長さんの憶測(推測)でしかありませんね。これは、コミュニケーションの量が絶対的に不足しているから起こっているように感じられます。
1日のうちで、五分でもいいから。仕事の話でなくてもいいから、彼と話す時間を作ってみたらいかがでしょうか?」
「(無言)・・・」

「私のアドバイスが嫌だなぁというお気持ちがあれば、どうぞ遠慮なさらずおっしゃってくださいね。いかがですか?」再度促されてようやく課長は「話す時間を作るといっても、何を話していいか、それすら分からんのです。出勤したらすぐに出かけてしまう日もあるし。そうかと思うと、ずっとパソコンの画面に向かってぶつぶつ言ってるから、話しかけちゃ迷惑になるかもしれないと思うし。彼がしたいと思うことなら、どんなことでも課長の自分が責任はとってやれるから、やらせてやりたいと思うけど、そのためにも彼が何をしているかは把握しておきたいんです。そうじゃないと、私としても責任のとりようがありませんから」

「部下に寄せる思いはとても熱くていらっしゃるんですね。もったいないですね。そんな課長さんの気持ちが伝わっていないことが・・・。どうでしょうか?まずは、その自分の気持ちを伝えてあげるだけでもいいんじゃないですか? 聴いてほしいことがあるけれども、今いいか?と話し始められたらどうですか?」

「彼が忙しかったらどうしようか?」
「忙しければ忙しいで『今でなくてもいい』とつけ加えてみたらいかがですか」

「そうですね・・」
「そのほか、どんな言葉を準備したらいいと思いますか?」

「そうだなぁ・・・今日の予定は?と聴くとか・・」
「うん、それいいですね。一度、声をかける練習をしてみましょうか?私が部下をやりますが、いいですか?」

「そうですね。でも、子供じみてるし・・・。一度、席に帰って考えます」
入ってこられるときよりは、少しはすっきりした顔をなさった新任課長。でも、まだまだ肩に力が入っているから、会話の練習を子供じみていると思うのでしょう。もう少しリラックスして、自然に会話が出来るようになればコミュニケーションがとれるようになります。

コミュニケーションがとれず、強いリーダーシップも発揮出来ずに悩んでいるのは、自分に原因があることに気づいてくれる日があるといい。人を変えることは出来ませんが、自分が変わることが出来る。そう伝えてあげることが出来たら、もっと肩の力が抜けるのではないかと思いながら、背中を見送りました。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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新任センター長と古参社員との戦い(その3)~新任管理者、職場改善を目指す~


いよいよ三回目のコーチング予約日がやってきました。浜田さんは、これまでの二回より足取りも心も軽いことを感じながら、コーチの元へとやってきました。

「和田さん、一つ荷物が降ろせたんです!」

部屋に入るなり、浜田さんは和田コーチに明るい声で話しかけました。
「浜田さん、どんな荷物を降ろされたんですか?」
和田コーチは、いきなり話しかけられたことにもすぐに反応し、浜田さんの話を先に進ませようとしました。
「敵じゃないんですよ。どんな社員にも、良いところと悪いところがある。悪いところにばかり目を向ければ、どんどん悪いことばかりが目立つようになる。ところが、良いところに目を向ければ、どんどん良いところが目立つようになるんですね。
先週、あのあと、正直言って職場に戻りたくなかったんですが、センター長はそのまま帰ってしまうに違いないと悪口を言っているような気がして、半ば意地のような気持ちで、職場に戻ったんです。ここで逃げたら、あいつらに負ける・・なんて感じでした。
職場に戻ると、いつもならセンターにないはずの人影が、その日に限ってあるんです。どうしたんだろう?と思いながら、『戻りました』と声をかけると、『お帰りなさい、センター長。ちょっといいですか?』と、古参の女性社員のほうから声をかけてきたんです。
どうせ不平か不満なんだろうなぁとうるさく思いました。私のそんな気持ちは、顔にも出たかもしれません。でも、話は聴かないといけないと思い事務所に入ったんです。
古参女子社員の態度はいつもと同じように横柄なものに感じましたが、ここは負けてはいけないと思って『何かあったんですか?』とたずねると、『センター長さんがお出かけの間に、1件、クレームがあって。ドライバーが一人待機していてくれたので、効率は悪いのですが、そのお宅にだけ届けるために、今向かってもらっています。まもなく到着だと思うので、約束の時間には七十八分ほどの遅れで商品は届くと思います。お客様へのお詫びの電話ですが、これは、私ももちろんいたしましたが、センター長からも電話をしていただけると助かります。お詫びはしたんですが、どこまで私の真意を伝えられたか、自信がないんです。帰ってきて早々、つまらない話で、申し訳なく思います。よろしくお願いします。ほんとに勝手にやってしまって申しわけありません』と、一気に報告して頭を下げたんです。

でも、和田さん、あんなに嫌だった古参社員の横柄に見えていた態度についても、ぜんぜん気にならなかったし、それどころか『申し訳ありませんでした』と素直に頭を下げている女子社員を見ていると、不思議なくらい自然にその社員に『ありがとう、適切な処置で助かったよ。電話、今からすぐかけてみようと思う』と、心から言えたんですよ。

お客様に連絡したら、『担当の女性からも電話をもらっています。誰でも間違いはありますから。それよりも孫の誕生日のプレゼントすぐに対応していただいたので、お誕生会までには間に合ったんですよ。おかげさまで孫の喜ぶ顔を見ることが出来ました。どうもありがとう・・』と、お客様から暖かい言葉もいただけたし。今まで僕は、どんな眼で彼女たちを見ていたか?
ちょっと申し訳ないかなぁという気持ちです」

興奮気味に話す浜田さんの言葉を、ときにうなずき、ときに促すように和田さんはじっくり聴いていました。
「浜田さん、私もすごく嬉しいです」和田コーチの言葉に、浜田さんは怪訝な顔をして聞き返しました。「なぜ、和田さんが嬉しいんですか?」
「浜田さんの考え方が、すっかり変わったこと。彼女たちを仲間として受け入れてくれようとしていること。何より、浜田さんが目指す、お客様の笑顔をもらったこと。これらすべてが嬉しいです」

和田コーチは、心底嬉しそうに微笑んだあと、浜田さんに話かけました。

「浜田さん、改めて伺いたいのですが、よろしいですか? 浜田さんは、彼女たちにどんな働き方を望んでいたんでしょうか?」
「時間いっぱいうまく使って体を動かすこと。あと、仲間という意識を仲良しクラブといった子供じみた持ち方をするのではなくて、大人として持ってもらいたかったんです。アルバイトをあごで使ったりとか、男性社員の目を意識するということではなくて、アルバイトも男性社員も交えて、一つのチームであるというような感覚を持ってもらいたかったんです」

「そのことは、ちゃんと言葉で伝えましたか?」
「いやぁ、そんなことは大人の常識というか、長く仕事してるんだから、知っていて当然だと思っていたから、わざわざ特に話しはしませんでしたよ」

「でも、浜田さんの真意は、伝わっていたのでしょうか?」
「いや、今から思うと、僕は面倒なことには関わらないようにしていた気がします。言うと何か言い返されるような気がしていましたから・・・・」

「そうですか・・。前回は、チームメイトのことをあいつらと、まるで敵対視するような表現だったんですが、彼女たちからみた浜田さんは、どんな存在だったんでしょうか?」
「やはり、彼女たちから見たら、よくわからん上司だけど、うるさいことだけは言う、嫌な敵だったんじゃないでしょうかねぇ・・」

「今は、どうですか?やはり『あいつら』でしょうか?それとも信頼出来るチームメイトでしょうか?」
「もちろん、全面的に信頼出来るとは思っていません。シビアな言い方をすれば、経験が長いんだから、クレーム処理ぐらい出来て当たり前かもしれないです。ただ、報告のタイミングとか、報告の仕方が、いつものふてぶてしいものじゃなく、具体的だったし、客観的にクレームに対してくれたり、冷静に対応してくれたりで、やれば出来るんだという手ごたえみたいなものを感じました。まぁまぁ、磨けば何とかなるのかな?と思っています。そして、彼らと一緒に仕事をしていくことで私も成長出来ると思っています。やはりお互いが認め合える仲間になれればいいと思っています」

「そうですね。コミュニケーションは、キャッチボールですよね?これまでの浜田さんと古参社員の関係は、ドッジボールしているように、ボール(言葉)をぶつけるだけのような関係でしたよね?これでは、受け取る側も、今度受け取ったら、当ててやろうという気持ちを育ててしまいますよね。評価は、必ずしも『良い』『悪い』だけであらわすものではありませんよね。少しでも、褒められるべき点があれば、それを認めて受け止めることも大切ですね」

「改めて考えてみると、和田さんから、『彼女たちの良いところを見つけるための質問』を受けたことを思い出し、その意味がようやく分かりました。真にチームワークを高めるためには、まだまだ時間がたくさんかかると思うんですが、とりあえず、今までのような冷戦状態をとることだけはやめて、厳しさの中にも温かみをもって接してみるつもりです。どうもありがとうございました」と、浜田さんは、心の中に抱えて歩いていた重い荷物を一つ下ろしたように、すっきりした表情で部屋を後にしました。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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新任センター長と古参社員との戦い(その2)~新任管理者、職場改善を目指す~


流通センターに就任した新任センター長の浜田さんは今年五十二歳になる社内経験豊富な部長です。

前回は浜田さんの現状を訴えたいという思いを、和田コーチが傾聴することに終始したコーチングでした。
「浜田さん、1週間たちましたが、古参社員とどんな関係作りを望むのか?考えてすごされましたか?」という和田コーチの少し厳しい表情から二回目のコーチングが開始されました。

「いやぁ、よく分かりません。感じることはやはり同じですね。毎日毎日、社員の勤務振りに対して・・というか、態度が気になって気になってしようがないですねぇ。相変わらず、ルーズに休憩時間を延ばしているし、夕方の掃除も、どうもやっているのは、比較的年数の短い人がいやいややっているようにしか思えません。私のモチベーションまで引き摺り下ろされそうで、もう、相手にしないで事務所からなるべく出ないようにと心がける以外、手はないのかなぁ・・と考えています」
「浜田さんは、このままでは、自分のモチベーションも下がる、だからどうしたらいいかということも考えられたわけですね?」

「まぁ、そうですね。自分のことはまず守らなければと思います。本社の人の目は届かないわけですから、実態を知らない本社の人に、自分まで、あいつらと一緒だと思われたくはないですからね」
「あいつら」という言葉をはっきり口に出した時に、浜田さんの表情が少し緩んだのを和田コーチは見逃しませんでした。和田コーチは、厳しい表情を崩さないまま浜田さんに質問を重ねました。

「浜田さん、あなたにとって、部下ってどんな存在なんですか?」
「はぁ?・・・・・・・・・・・(沈黙)」

お互い、その状況に耐えられなくなるほど沈黙している時間が経過しました。

「浜田さん、あなたがお答えになるのを待っていたのですが、お答えがでませんか」
和田コーチは話し始めました。
「浜田さん、部下の方を『あいつら』と言われたのですがそのことに気づかれましたか?わたしには、『あいつら』という表現の中には、『仲間』とか、『チームメイト』というような暖かなものが感じられませんでしたが、浜田さんは、どんなお気持ちで『あいつら』とおっしゃったのでしょうか?」

心の中を見透かされ、懐を一気にえぐられたような気がした浜田さんは、また、表情を固くして下を向いてしまいました。

「あの・・和田さん、今、そのことについては話したくありません」そう伝えるのが精一杯でした。
浜田さんの答えに、和田コーチは始めてにっこり微笑みました。

「いいですよ。答えたくないという答えがあることに気づいていただけたことが私は嬉しいです。ものの見方って、いくつかあると思います。まっすぐに表からだけ見るのではなくて、裏側からも見ていいんですよね。必ずしも質問には答えなければならないということではありません。『No』という答えも、また、答えですよね」と、穏やかな表情で、冷静に話す和田コーチに、浜田さんの心が包まれているような感じを抱いたようです。重ねて、和田コーチの質問が続きます。
「浜田さん、無理やりに考えてもらう必要はないのですが、古参社員の方のこれは素晴らしいと認められる仕事ぶりは何かありますか?」

「そうですねぇ・・経験年数があるから、出荷間違いは、まず、ありませんね。その点はしっかりしています。安心して任せられます。むしろ、営業が間違って出荷価格を入力していることが、一目で指摘出来るぐらいのスキルの高さはもっているんです。この間も、営業サイドで単価の入力間違いがあって、これまでより高い値段で出荷しそうになって、危うくクレームになるところだったんですが、それを見つけて未然に防いでくれたんです。そういうときは、饅頭を差し入れたりして、ご機嫌を取ったりするんです。まぁ、それなりに饅頭の効果はあるようですが・・」
「なるほど。浜田さんは、気も遣い、お金も遣ってご機嫌をとっているわけですね。饅頭を買っているときの浜田さんの気持ちは、どんなものですか?」

「いやぁ、正直、お金の無駄遣いだなぁと思うこともあるし、こんなご機嫌とらなくちゃならない部署は、早く異動させてほしいとさえ思うことがあります。本来は、お客様の笑顔を創造出来る、いい職場だと思っていたのに・・・」

古参社員のことを話すにつれて、どんどん、落ち込んだ表情になる浜田さんに、和田コーチは言いました。

「浜田さん、もし浜田さんが、チームメイト(仲間)として受け入れられず、敵対視されながら職場に迎えられたとしたら、頑張って仕事をしよう、この仕事はお客様のために働き甲斐があると感じることが出来るでしょうか?一生懸命に仕事をしようと思えるでしょうか?」

ようやく和田コーチは、質問の核心に触れました。

「う~ん・・・(沈黙)」
しばらく黙って考えていた浜田さんは、「そうですね。難しい問題ですね」そう言って、また黙りこんでしまいました。
「・・・・・・(沈黙)」

黙り込んだ浜田さんをみて、今度はさほどの時間を空けずに、和田コーチは浜田さんに言いました。

「そうですね。難しい問題ですよね。それでは、次回までに、この質問の答えを探してきていただいてもいいですか?」
救われたように顔を上げた浜田さんは、和田コーチにアイコンタクトをして大きくうなずきました。
「和田さん、今日のこのコーチングの時間は私が次回までに答えを探すのに効果的であったのでしょうか?私は、あなたの求めるとおりの答えを出せていない気がするのですが・・・それでいいんでしょうか」

和田コーチは、同じように深くうなずき、ゆっくり息を吐いて穏やかな口調で言いました。

「コーチングは、コーチである私が求める答えを探すものではありません。私は答えを求めていません。コーチの私のためにコーチングをしているわけではありません。
浜田さんが自分自身でどうしたいのかを考える事が大事なんです。ゆっくり時間をかけて、自分を大切にして考えてみてください。」
このようなやり取りにて二回目のコーチンの時間が終わりました。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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