コーチング事例集:コーチ養成講座で実践的なコーチング技能と資格取得を。セミナー、研修、コーチングであなたの課題を解決

コーチング事例集

後継者に悩むマネージャー~現状把握のための点数化で、後継者の姿を見つける~


残すところ定年まであと八年。
私のチームには、十名の社員がいますが、正社員は三名しかおらず、誰かを後継者として決定し、マネージメントを任せなければならないのですが、一応にみんな大人しく、三名ともに家庭生活を第一におき、残業などせずに終業時間がくるとすぐに帰宅してしまう始末、昇進や昇格は望んでいるとは思えない人材ばかりで、彼らのうち一人に自分のあとをまかせられるんだろうかと気持ちがふさいでいました。
ある日、人事部長である取締役と昼食をご一緒することになったので、山本人事部長に率直に胸のうちを明かしてみようと思いましたが、なかなか勇気が出ず、何となく上の空で食事をしておりました。
すると、山本人事部長から、
「木部君、最近元気がないようだけど、何か悩み事でもあるのか?」と質問を受けました。

どうしようかと迷いながらも、自分のもやもやしていた気持ちを率直に話してみました。

「部長もご存知のように、私の会社人生も先が見えて来ました。そろそろ後継者の準備に入らなければ、いけないと思うのですが、三人とも仕事に対する態度が今ひとつで、私が残業していても、さっさと帰ってしまう連中ばかりで私のあとがまかせるかどうかとても不安です。そういった連中から一人を選ぶことなど到底出来ません」

「なるほど。それは難しい問題だね。それであなたはどのように考えていますか」

「なんとか、彼らのいい点を見つけようと思うのですが、それぞれの満足出来ないことばかりが目に付いてしまうのです。どうしたらいいんでしょうか」

山本人事部長は、「ひとつアドバイスをしてみてもいいかな」と言われました。

「はい。何かいい方法がありましたら、参考にしますのでアドバイスよろしくお願いします」

私がそう答えて、山本人事部長から
「三名の仕事振りや業績など、項目を決めて点数をつけてみたらどうだ?」と、アドバイスを受けたのです。
さっそく、三名を公平に扱うために、マネージャーとして受け継いで欲しい資質や行動などの項目を決めて、点数を付けてみると、はっきり後継者の姿が見えたのです。
ついつい、悪いところや足らないところにばかり目を向けていたため、どれもみんなどんぐりの背比べのようになっていたのですが、現状を把握するための点数付けは、自分の気持ちを整理するのに、とても役に立ったのです。
山本人事部長から、コーチングを学習されていると聞かされたのは、その後お礼と報告を兼ねて昼食にお誘いしたときでした。
知らず知らずのうちに、自分の気持ちを整理出来るコーチングの威力と、山本人事部長に話してよかったという満足をたっぷり味わうことが出来ました。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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若女将の苦悩~リーダーシップについて考え、自己啓発の重要性に気づかせる~


旅館に嫁いで一〇年になる妙子さん。1年前、大女将が急逝し、妙子さんはご主人とともに名実ともに旅館を支える立場になり、がむしゃらに仕事をしました。
妙子さんは、大女将に仕込まれただけあって、品も良く、気働きの出来る若女将としてお客様には評判上場で、最初は上手くいっている様に見えたそうです。
ところが、若女将が一人で奮闘すればするほど、仲居さんや板場(調理場)と上手くいかなくなり、若女将にはついていけないと、とうとう、仲居が何人もまとめて辞めるという事態を招いてしまいました。ご主人に相談しようにも、組合事務所に出かけることが多いご主人とゆっくり話す時間もなく、仲居頭も疲弊している姿を見て、妙子さんは、涙ながらにコーチに訴えました。

「もう、限界です。私じゃダメだったんですね・・・私一人が浮き上がっていて、私さえいなければうまくいくんです。私が家を出れば、やめるといっている仲居もとどまってくれるようですから・・・明日、実家に帰ろうと思います」
「うん・・妙子さん、気持ちをまず、穏やかにするためにコーヒーでも飲みましょう」

「はい・・ありがとうございます。でも、いいんですか?コーチ、お忙しいんでしょう?私のために、時間を延長してしまうと、後のお仕事に差し支えますでしょう?」
「あなたは、優しい人ですね。こんなときさえ、私の心配をしてくださる。あなたの心、どうして仲居さんたちに伝わらないのでしょう。ほんとうにお家を出る決心なんですね」

「それしかないと思って・・」
「他に方法がないとお考えなんですよね?」

「はい、仲居頭と仲居たちは仲良くやっているんですから、何も心配はないと思います」
「仲居頭の陽子さんとは、ゆっくり話し合ったんですよね?」

「はい、私は、お客様のことしか見えてない。大女将は旅館を支える社員にも目配りが出来ていたけれども、私は、お客様の満足のことだけしか考えてなくて、社員に無理をさせすぎたって言われました。1年もたてば、疲弊してしまうのは、しょうがないかもしれないって・・・」
「大女将と一緒に九年間働いていらっしゃって、お客様をもてなすという女将の仕事は理解出来たけれども、社員のマネジメントが出来なかったということですか?」

「うん・・・そうですね。でも、大女将はお客様のことを何より大切にしなさいと口癖のようにいっていたし、私には、いつもお客様のお相手を最優先させてくれていて・・・。数ある旅館から私どもを選んでくださっているんだから、精一杯のおもてなしをしなさいと」
「妙子さん以外のひと達も、お客様に精一杯のおもてなしをしていますよね?」

「それはそうです。仲居さんは仲居さんの立場で、精一杯やってくれています。私が自らお客様のお世話をしますから、みんな、それを見て一緒の気持ちでお客さんへの精一杯のおもてないしをやってくれているもんだと思っていたんです。それが、若女将がいたんでは辞めさせていただきますだなんて・・・・」
「大女将は、後方でどんな仕事をなさっていたか、覚えていますか?」

「え?後方で?帳場でですか?」
「いえ、そうじゃなくて・・お客様のお相手を妙子さんに任せている時間、仲居さんたちとの係わりかたや、板場への心遣いとか・・」

「さあ・・・私、自分のことだけで一生懸命だったから・・」
「ちょっときついことを言いますけど、よろしいでしょうか」

「はい、私のためになることでしたら、何なりとおっしゃってください」
「妙子さんは、九年間何を見ていたんですか。大女将という素晴らしいお手本がありながら、何も見ていなかったんですか?」

「そうですね。私大女将のことを何にも見ていなかったんですね」
「そんなふうにご自身を責めても何も解決はしないですよ。妙子さんがお家を出ること以外に方法はないのでしょうか?」

「他の方法ですか?」
「はい、他の方法で妙子さんが出来ることがいいでしょう」

「何が出来るんでしょう・・・いつも、大女将がいてくれたし。私、一〇年たっても何も一人でしたことがなかったのかしら?」
「何もないわけじゃないけれども、いつも誰かに守られながら過ごしていたことに気づけただけでも良かったんじゃないですか?」

「そうですね。至らない私をお(義)母さんがカバーしてくれていたんです。だから、お客様のことだけ考えて仕事をしていればよかったんです。どうしたらいいのかしら?」
「お一人で頑張れないなら、誰かの手を貸していただけばいいんじゃないですか?」

「え?陽子さんに迷惑をかけるわ・・」
「もし誰かがあなたに助けを求めてきたとしたら、どのように感じますか」

「そうですね、助けを求めてこられると自分を頼っている、自分を信頼してくれている、この人のために手助けしてあげようって思います」
「それに、陽子さんは、マネジメントをする役割もあるんじゃないですか?仲居頭さんなんでしょ。仲居頭というのは、仲居さんたちのヘッドであるわけでしょう?それならば、リーダーの役割を果たしてもらってもいいのじゃありませんか?」

「はぁ・・・そうですか・・・あの、リーダーというのはどういう仕事をすればよいのでしょうか?」
「リーダーの仕事はたくさんあると思いますが、マネジメントは仕事の一つでしょう。仲居さんたちとコミュニケーションをとって、現場の意見を吸い上げて、妙子さんと改善点を相談するとか」

「私、リーダーは率先して仕事をするものだと思っていて・・」
「そうですね。いろいろ考えてみなければいけないですね。妙子さんが考えるヒントを差し上げてみましょうか」

「はい、お願いします」
「妙子さんは板場のことは板長さんに任せていますよね。板長さんは板場のリーダーとしてリーダーシップを発揮して板場をまとめていますよね」

「確かに、板場は板長さんに任せています。板長さんにもその辺のことを聞いてみようかしら・・・」
「これから、いろんな人に聞いて、もう一度、お勉強してみたらいかがですか?」

「いいんでしょうか?私が残っても。ただ一つ仏様のことだけが心配で。啓二さんは、ご先祖様の日々の供養をしたことがなくて心配がたくさんあって・・」
「お家を出ることよりも、出ないでどうするかということを、もう一度、ご主人と話し合われたらどうでしょうか?」

「そうですね。学校を下りてからのほうの勉強は大変ですね。頑張らなくちゃ!」

明日、旅館をでて実家に帰ると言われているので、少し厳しい質問もしてみました。時間との勝負の中で、自分の結論を決めているクライアントへのコーチングの事例です。
ある日突然、リーダーになっても良いように、必要な自己啓発に努めることが大切でしょう。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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上司の手腕でやる気の戻った中堅社員~承認上手な上司との出逢いによって気持ちが変るクライアント~


褒め上手な上司になって、やる気が戻った中堅社員の実例をご紹介しましょう。
商社に入社して六年目の佐伯さんは、このごろ仕事に対する意欲が低下しており、いっそのこと転職しようかと考えてみたもののどんな仕事が自分にふさわしいのかも分からず、とりあえず仕事はお金を稼ぐためと割り切って毎日を過ごしていました。
しかし、そうとはいっても、どうせ働くなら仕事にやりがいを感じたいと思い、頻繁にキャリア・カウンセリングルームに通うようになりました。
キャリア・カウンセラーに話を聴いてもらうことは、気持ちを穏やかにするには効果がありましたが、何か物足らないものを感じていました。そこで佐伯さんは、思い切ってコーチと話す時間を持つことにしました。コーチングを受けるようになって、半年たった頃、突然、上司が変わりました。

「佐伯さん、新しい上司との係わりは上手く出来ていますか?」
「はい、上司が仕事内容に不慣れなせいか、とにかくよく話しかけてくれるんです。これまでの上司は、いつも不機嫌そうな顔をしていたから、こちらから話しかけると怒られそうで話などしなかったんです。年度初めに課の方針を出して、それを忠実に遂行することを求められていました。個々の案件については、特に説明を求められるわけでもなく、やりやすい反面、どのように評価されているのかもわからず、モチベーションを保つのがやっとでした。
今の上司は、とにかくどんなことでも意見を求めてコンセンサスをとるように、話しかけてくれるんです」

「そんなときの佐伯さんの気持ちは?」
「嬉しい反面、そんな小さなこと、いちいち気にするのかよ?っていうときもあります」

「なるほど、嬉しくもあり、うざったくもあり・・っていう感じですか?」
「そうですね。うざったいんだけど、でも、話しかけてもらいたいんだよね・・」

「うん・・どうしてでしょうか?」
「なんでかな?」

「話しかけられるときって、どんな感じの会話になるんですか?」
「たとえば、昨日は、メールで問い合わせていたことで、すでに返信してもらっていたのに、廊下ですれ違ったとき、『佐伯君、メールありがとう。気がつかなかったから教えてもらえて助かったよ。直接返事しなくて申し訳ない。時間がなかったからメールでの返信で勘弁してもらったよ』なんて、わざわざ説明してくれて・・
そんなふうにちゃんと対応してもらえると、嬉しい気がして、また、この人のために気づいたことをメールしてもいいんだって感じたなぁ」

「なるほど、佐伯さんとのメールのやり取りを、廊下で改めて言葉にしてもらえた。それが嬉しかったんだろうか?」
「そうなんだろうなぁ・・何か、すっごく自分を大切にしてくれているような感覚になったんだよなぁ」

「なるほど、佐伯さんは大切にしてもらったという感覚になったわけですね」
「そう、いつもこの上司はこんな調子なんだ。どうでもいいようなメールにでも、メール開封しましたとか、メールありがとうとか、すぐに返信してくれるから、読んだか読まないか、すぐ分かるし、指示をされるときも、なんか嫌じゃないんだよなぁ・・」

「指示をされるときは、どんな具合?」
「目標とか、目的とか、必ず教えてくれる。それから、やり方をどうするか、必ず指示されたときその場で確認されるんだ。だから、ちゃんと考えなきゃまずいぞ!って思って、その場ですぐに考えるから、行動に移しやすくなる」

「コミュニケーションをとるのが上手いのかな?」
「そうなんです。コミュニケーションをとるのがすごくうまい気がする」

「行動の結果については、どうなの。前の上司のように任せっぱなしであまり口をださないの?」
「それが、結果についての確認もきちんとされる。細かく説明させられるから、勘弁してよって思うときもあるけど、結果について必ずジャッジしてくれるので分かりやすいし、上司を通して会社との一体感もでるんです」

「なるほど、部下に会社との一体感を感じさせるのは、すごい人だね。仕事のやり方、部下との接し方がよく分かっている人ってことかな?」
「それだけじゃない気がする。なんていうのかな、褒め上手っていうか、認めてくれてる気がするんだ」

「認めてもらっている感じがするんだね」
「そうですね、自分の仕事に対する考え方とか、姿勢とかも含めて、認めてくれてるんだ。間違ったときも、前の上司みたいに、頭ごなしに怒鳴らず、どうしてそうなったかという原因を探ったり、工夫したほうがいいことは何かと、一緒に考えてくれている気がする」

「なるほどね、佐伯さんの存在を認めてくれているんですね」
「そうなんです。私の存在を認めてもらっているんです」

「上司に自分の存在を認めてもらっているってどんな感じがしますか?」
「とても充実した毎日を送っています」

「それはよかったですね。話しっぷりも前より明るくなりましたよ」
「コーチ、この間話していた転職の事なんだけど、しばらくこの上司の間は、この職場で頑張ろうと思うんです。この職場では、まだまだ、やりたいことがないわけじゃなかったわけだし、転職しようにも、商社マンだった自分の魅力って何か、ぜんぜん分からないし。当分、この会社でどうしたらいいかを考えたくなったんですけど、いいですか?」

「もちろんです。コーチングは佐伯さんのためにしているわけです。転職がテーマの時には、その方向でコーチングしますし、現在の職場でのモチベーションの維持・向上がテーマのときには、その方向でコーチングします。コーチングは、佐伯さんの気持ちを更に高めるため行うわけですから、コーチとして今後も支援させてください」

いつもいつも、コーチングのスキルを身につけている上司に出会うわけではありません。こんなにタイミングよく、出会えるチャンスもなかなかめぐってはこないでしょう。
しかし、上司のコミュニケーションスキルによって、部下はこんなにも働き甲斐に満ちた生活が出来ることを知っていただければ、自己啓発の大切さや、コミュニケーションを大事にしようと、改めて考えていただけるのではないでしょうか?

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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定年退職後の再雇用者へのコーチング~コーチングの方向を決めるスタート間際のコーチングの組み立て方~


定年退職後の再雇用を希望し再雇用となって七ヶ月、とうとう、退職を決断した山下さんのコーチングです。
勤続約四〇年の大ベテランの彼女は、この事務所は彼女で回っているという評価に誇りを持って、仕事をしていました。
まもなく定年という歳を迎えた頃、親会社から送り込まれてきた上司は、そもそも女性が男性に伍して実力を発揮して定年まで仕事をするのはいかがなものかと考えている人物で、女性のベテラン社員の存在が目障りなのか、若い女子社員を煽ってみたり、お局は困る・・と、自分が被害者のように振舞うようになり、職場は、早晩、行き詰まりを見せ、仕事に支障をきたすようになりました。
山下さんからコーチングの希望を受けた当初の職場環境は、殺伐としており、本人も、これまでの自分の評価を、どんなふうに受け止めたらいいか、自信喪失な中での出会いでした。

「山下さん、始めまして。今日は、山下さんが、『今』話したいと思うことを話していただきましょう。どんなことでもいいのでお願いします」
「うん・・定年退職後、希望して再雇用してもらいました。でも、その判断が間違っていたかもしれないと、今は後悔しています」

「なるほど・・・」
「仕事は楽しかったし、ほかにするべきことが見当たらないくらい、これまでは仕事中心に生活してきたからです。夫は、三年前に定年退職しました。教員だったので再雇用はありません。今は非常勤で塾講師と、ボランティアで、郷土史の資料まとめを手伝っています」

「ほう・・ご主人は、現役の頃のキャリアを生かして、新たな仕事をして報酬を得る経済活動を維持する反面、ボランティアで生涯の仕事をしているわけですね?」
「はい、趣味人で、現役時代から、さまざまなことに興味をもっていて、生涯学習のセミナーを受講したり、いろいろな活動をしていました」

「なるほど、だから、仕事を終えることも躊躇がなかったんでしょうかなぁ?」
「はい、今にして思えば、そうだった気がします。でも、教員時代は子育ても家のことも全部私任せで、ずいぶん勝手な人だと、恨んでいました」

「なるほどね。ところで、ご主人が今、お好きな自分の人生を歩いていることに、山下さんはどうかかわったんですか?」
「彼が勉強しやすいように、日曜日でも子供たちを連れて出かけるのも私。授業参観や学校行事も全部私がしてきたんです。でも、感謝されることもなく、私の存在って、いつもそんな感じなんです」

「人を支えているのに、それを評価されていない感じがするの?」
「はい、一度も認められたことがない。感謝もない」

「なるほど、さびしい気持ちがしたんですね」
「はい、さびしいと言うか、怒りかもしれません」

「怒りだったんですね?」
「はい、そうです。あの人に負けたくないという気持ちが強くありましたね。人として、家族も大事に出来ないなんて、最低だと思った頃から、子育ても、家庭内のことも、全部自分でやらなくちゃダメなんだと、覚悟したように思います」

「なるほど、それだけ家庭内に気持ちが向いていらしたのに、その気持ちが外に向かわれたのには、何かきっかけがあったんですか?」
「うん・・・子供たちも小学校高学年になって、だんだん、帰る時間が遅くなってきたから、私も子供たちが帰るまでなら、働いて、あの人に負けないようにしようと思ったということもあります。あと、子供の学費がたくさんかかることを予想して・・かなぁ?」

「昔の気持ちを振り返りたいわけじゃないんです。が、働くことの意義を知りたいんです。山下さんにとって、働くということはどんな意味があったんですか?」
「うん・・・私も社会の・・、人の役に立っているということを自分自身で感じたかったんですね」

「お子さんたちの評価ではなくて、社会からの評価を受けたかったということですか?」
「うん、評価?なのかな?実感がほしかったんですね。だから、仕事には全力投球してきました。完璧でなければならないと思っていたし、先輩職員が出来ることなら私も出来るようにならなくちゃと思って、遅くまでかかっても、必ず与えられた仕事は仕上げたし」

「そんな山下さんの姿を、上司はどう見ておられましたか?」
「え?それは、がんばってるって見てくれてたんじゃないですか?」

「今、一緒にいる人たちは?どうとらえているか、話し合ったことはありますか?」
「いえ、私の再雇用契約は、1年ごとに更新するかどうかを考える仕組みなので、来年、契約更新されなくても、若い人たちが困らないようにと思って、急いで教え込んでいるから、ちょっと厳しいかも知れません」

「なるほどね、仕事は完璧でなくてはならない・・・という考え方でしたら、若い人の仕事は、手落ちばかりに感じられますか?」
「正直言ってそんな気がしています。とにかく不安です」

「ところで、そういう山下さんの気持ちを、上司はどう判断していますか?」
「そこなんです・・・若い人のやる気をなくさせているとか、邪魔になっているとか感じないのか?と詰問されて、このごろでは、私ってどんな存在なんだろうって、だんだん、自信も元気もなくなってしまって・・」

「コーチングの目標は、契約満了をもってやめるために、今後どういう仕事をすればよいかにするということでよろしいでしょうか?」
「はい、何とか、最後の半年は逃げ出したくないんです。負けなくないんです。男なんて、ずるいばかりですからねぇ・・。男たちは細かい仕事も出来ないし、やる気もないし」

「承知しました。今日、ここまで話されて、どんなお気持ちですか?」
「すっきりということはないけれども、こんなにしっかりお話聴いてもらってよかったなって思います」

「来週までに、あなたがすべきことがあれば教えていただけますか?」
「はい、まずは、辞める気持ちがあることを忘れないようにするために、デスクに、カウントダウン表をはさむことでしょうかねぇ・・でも、伝えてあげたいことはたくさんあるから、その整理とか」

「どんな方法で整理するかも含めて考えて、対処してみてください。よろしくお願いします」
「ありがとうございました」

彼女の中に男性に対する偏見があることに気づかせたい、あなたが他の職員からどう受け止められているか、冷静に考えさせてあげたい。
人は、自分の姿には、なかなか気づけないものです。鏡を良く見ても、行動や思考までは移りません。
せめて、コーチが、その鏡となってあげることが出来ればと思いました。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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転職希望者へのコーチング~自分の気持ちに気づかせるためのセッション~


サービス業に従事して一五年。これまで一貫して販売の仕事を選ん出来た藤田さん。四〇歳を目前に控え、自分の将来を考えることが多くなりました。
販売実績は常に上位にあり、精力的に店舗を運営し、業務改善、人材育成、採用などの分野において、他の模範とされることが多く、実行力のある社員として重宝がられてきました。
藤田さん自身も、会社は同族会社の中小企業であってもやりがいがある。そこそこ、努力が認められれば、自分も役員を目指せると今までは思ってきたそうです。しかし、社長が代わり、新社長の考えが自分とは合わず、このごろは、部長の態度も変わりはじめ、見切りをつけた社員は退職を始めたそうです。藤田さんもこのまま会社に残って、本当に生き残れるか真剣に考えたほうがいいと、辞めた同僚からアドバイスを受けて以来、自分の将来について考えてきたそうです。
転職すべきかどうかをテーマに、コーチングのセッションを始めて五回目に、やっと自分の気持ちを素直に受け入れた藤田さんとのセッションです。

「お疲れ様です。今日もぎりぎりまで、お仕事から離れることが出来なかったのですか?」
「はい、転職しようかと迷っている自分の気持ちは、自分の問題であり、それはそれとして、会社で仕事している以上、会社では今までどおりの成果を挙げなければならないと思っています。だから、率先垂範で自分がまずは動くことで手本を見せようと思っています」

「なるほど、ビジネスパーソンとしての誇りをもっておられることを感じます。ところで、転職先について、前回、絞込みをしてみてくださいという宿題をお出ししていたと思いますが、いかがですか?」
「はい、やはり、中小企業診断士を目指そうと思います。その足がかりに、異業種への転職を果たし、その仕事をしている間に資格を取ろうと思います」

「そうですか。異業種の・・と、前回もお話の中で伺いましたが、具体的には、どんな業種へ転職しようと思われましたか?」
「はい、これまでの経験の転用が可能だと思い、医療器具メーカーにします」

「医療器具メーカーですね? 理由を伺ってもよろしいですか?」
「はい、医療の分野は、今後の超高齢化を考えれば、ますます需要が高くなると思います。そうなれば、当然、医療器具の開発も盛んになることでしょうし、その営業は、熾烈を極めると思います。これまでは、販売していたものが、スポーツ用品だったり、洋服、雑貨だったりしたわけですが、今後は、医療器具を販売しながら病院の経営などを勉強し、病院経営のコンサルティングも出来るようにしていきたいと考えたからです」

「なるほど、病院経営を勉強するためにも、医療器具メーカーの社員となって、病院経営に関する情報収集をしたり、相談に乗ったりしたいということなのですね?」
「はい、効率よく会社を運営した経験を転用すれば、それは可能だという自論を仮説に基づいて検証してみたいと思いました。経営コンサルタントとして、どんな領域でも仕事が請けられるようにしたいということです」

「なるほど、そのためには、資格はもちろん、実務経験が必要だとお考えになったのですね」
「はい、ですから、今後は三~四年に一度、戦略的に転職をして、さまざまな分野の仕事を経験しながら、コンサルテーションの種を見つけていこうと思います。机上論ではない、実務経験に基づいた指導やアドバイスが出来るようであれば、社外取締役のように重用されるのではないでしょうか?」

「なるほど、そうすると、独立までに何年の計画をもっておられるのでしょうか?」
「今、四〇歳と仮定して、六〇歳が独立の年。二〇年間で、六・七の実務を経験出来ますね。その分、専門領域の広いコンサルタントになれると思うんです。今の会社の経営コンサルタントは、新社長にいろいろなアドバイスをしているようですが、現場を預かる自分たちからしたら、ずいぶん、現実的ではない指導があると感じているんです。経営コンサルタントとしては有名な人らしいですが、うちの会社にはこれまでの伝統や社内風土があって、すぐに変化させられないという事情があります。それに、現場を知っているのは、自分のような店長たちです。自分たちの意見も聞かずに一方的に指示されても、受け入れられないことはたくさんあるんです。だからこそ、自分は、実務を経験し、一線の視点でコンサルティング出来る人を目指そうと思ったんです」

「転職し、新たな環境の中で、資格取得を目指すということは、とても大変だと思いますが、両立させるための心構えは出来ましたか?」
「はい、時間をうまく分けようと思います。休日出勤はせず、残業も控えてビジネススクールに通う時間を確保しようと思います」

「新しく入ろうとしている医療器具メーカーの実情をお調べになりましたか?」
「いいえ、でも、どこの会社だって、今は長時間労働を控えようという動きがあるはずですし、残業は習慣化しているだけなので、自分は入ったときから残業はしない人だというイメージを作れば、さほど苦しい思いをしなくても帰れると思います」

「うん・・・藤田さん、一つ、今、感じていることを申し上げてもよろしいですか?」
「はい・・」

「正直申し上げて、今の職場への怨嗟が転職したいという気持ちになっていると思います。医療器具の販売は、ますます熾烈化しており、業界全体が厳しい競争をしています。残業をしないで帰るというのは現実的ではありません。もっと業界研究をしなければ、早晩、早期離職に追い込まれてしまいますし、経営コンサルタントになるために、報酬をいただきながら、自論をまとめる検証をするという姿勢では、同僚や先輩とうまくコミュニケーションが取れなくなると思いますがいかがでしょうか?あなたが医療器具メーカーの社長さんだとしたら、そんな腰掛的な人を採用しようと思いますか」
「・・・・」

「どうぞ、ゆっくりお考えください。厳しいことを申し上げますが、転職は今後の人生をどう描くかにおいて重要な要素です。一時の感情や考えで結論を出さないほうが良いと私は考えます」
「・・・たしかに、認められなくなって悔しいという気持ちが強くて・・」

うつむいたきり、藤田さんが沈黙を続けたので、セッションを早めに切り上げ、次回セッションの日時を確認して終了しました。
自分の気持ちを晴らすために転職しようとしていることに気づかせようとコーチングを組み立てました。
当事者は、常に自分のことで精一杯になります。コーチは、その気持ちを受容し承認しながらも、常に冷静に、客観的な立場で、社会的に考えるとどう見えるのか?と伝え、新たな考えを持つ視点を与えるという重要な役割を果たします。
厳しい意見を伝えるには勇気がいりますが、クライアントの良き理解者であり、良き支援者であるために、恐れず行動することが大切です。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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