コーチング事例集:コーチ養成講座で実践的なコーチング技能と資格取得を。セミナー、研修、コーチングであなたの課題を解決

コーチング事例集

日常会話2例、コーチがしゃべると・・・~何気ない会話をコーチング的に変化させる事例紹介~


1.お子さんのしつけは、保護者が責任をもって行いましょう
エスカレーターのベルトを、屈んで触って遊んでいます。

兄:「これ、面白いよな」
弟:「うん、お兄ちゃん、でも、お母さんに怒られないかな?」

兄:「大丈夫だって、こっち見てないし」
弟:「そうかなぁ・・・ぐるぐる回るね」

兄:「どんどん出てくるよな」
販売員:「ここで遊ぶと、危険だから、お母さんのところに行こうか?お母さんはどこにいるかな?」

兄:「あっち・・・」
販売員と一緒に売り場中へと進み・・

兄弟:「お母さん!」
販売員:「お子さんがエスカレーターのベルトで遊んでいらっしゃったのでお連れしました」

母:「ほら、だからダメって言ったでしょ?怖いおばちゃんに叱られっちゃったじゃないの、もう・・」
(途中省略)

販売員と一緒に売り場中へと進み

販売員:「お子さんがエスカレーターのベルトで遊んでいらっしゃったのでお連れしました」
母:「お手数をおかけしました。ごめんなさい。私が目を離したものですから」

販売員:「いえ、お怪我がなくてよかったんですが、これからはお気をつけいただけると助かります」
母:「はい、気をつけます」

(子どもたちに向かって)
母:「これから買い物の途中、あなたたちは待っている間どうしたらいいと思う?」
兄:「退屈だし・・・」

母:「そうだね。そうしたら、これからはおうちで留守番する?」
弟:「でも、パフェ食べたいし・・」

母:「そうだね。帰りにパフェ食べるのは楽しいね。でも、ママの買い物を待っているのはつまらない。どうしようか?」
兄:「あのさ、僕たちだけおもちゃ売り場で待ってたらダメなの?」

母:「離れ離れになると、心配だからそれはしたくないと思うなぁ・・」
弟:「じゃぁ、ママが買い物する時間を短くしたら?」

母:「そうだね。出来る限り、短くするように努力するね。あなたたちはどうする?」
弟:「なら、三十分だけは待つとか、ゲームとか持っててやってるとか?」

母:「なるほど、そうだね。それはいいね。売り場でゲームする場所あるかな?」
兄:「あっちに椅子があった」

母:「いつもいつも椅子のあるところでばっかり買い物するかどうかわからないけれども、少し離れても椅子があるところで、ゲームして待っててもらおうかな?」
兄:「うん、そうだね。そうするよ」

母:「よかったわ、エスカレーターで怪我しなくて。よくね、巻き込まれて怪我をするっていうニュースがあるのね。目を離したお母さんも悪いけど、これからはエスカレーターで遊ばないようにしないでもらえるかな?怪我をしたら悲しいから」
兄:「うん、ごめんね」
母:「いいよ」

2.どっちも頑固では家庭の中は暗くなります
妻:「ねぇ、この間話したあなたの転勤の件だけど、子どもたちのことを考えると、どうしてもみんなで一緒に動くことは無理だと思うのよ。あなた、単身赴任して欲しいんだけど・・・」
夫:「子どもにかまけて、お前が仕事を辞めたくないだけだろ?俺の会社は、単身赴任した人はいない。前例がない!いい加減にしろよ」

妻:「そうじゃなくて・・じゃ、転勤先に同じレベルの高校があるの?あんなに一生懸
 命頑張って入ったのよ?それとも何?、子どもたちだけおいていくっていうの?冗談じゃないわ」
夫:「論理の飛躍だね。そんなことは一言も言ってない。でも、とにかく前例がないんだからしようがないだろう」

妻:「じゃ、あなたが会社辞めれば?前例、前例って、未来に前例はないの!あなたが前例になればいいじゃない?それに、世の中とあわなければ、あなたが改善すればいいでしょう?」
夫:「うるさい!もう言うな」

(無言で食事を始める二人)

妻:「あなたと一緒になってから、ずっとあなたの転勤について、いろいろなところで生活出来たけど、今度ばかりは、ちょっと困ったと思うの。あなたはどう思う?」
夫:「そうだなぁ・・子どもも大きくなってきたからなぁ」

妻:「一番困るのは、高校の転校なんだけど、あなたはどう思う?」
夫:「そうだなぁ・・・あんなに受験、頑張ってきたのにな」

妻:「どうする?」
夫:「どうするといわれてもなぁ・・・転勤はもう決まったことだし」

妻:「ごめんね、二つに一つどちらかみたいに考えさせて。ねぇ、私の希望を言ってもいい?」
夫:「なに?」

妻:「あのね、半分、単身赴任ってどうかしら?」
夫:「どういうこと?」

妻:「平日はあなた一人で転勤先で生活して、週末や学校が休みのときは私と子どもたちがあなたのほうへ移動する」
夫:「3人で移動したら、交通費が大変だろう。それにクラブ活動とか、バイトとかあるだろう?現実的じゃないな?」

妻:「そうね。でも、これまでに単身赴任した人はいないんでしょう?あなたの会社での立場が悪くなっても困るわ。子どもたちの学費はかかるもの」
夫:「そうだなぁ・・・今すぐ答えは出せないと思う。もう少し、時間はあるから考えよう。会社にもそれとなく聞いてみるから」

妻:「そうね。よろしくお願いしますね。ご飯にしましょう。冷めちゃうわ」
(ふたり、和やかに食事のテーブルに向かう)


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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ファミリー・コーチング3例~親子のコーチングショートセッション~


今週は、なかなか難しいとされる親子のコーチングのショートセッションをいくつかご紹介します。
ファミリー・コーチング①
【生の会話】
高校1年生の息子を駅まで迎えに行った車の中で・・

母:「何?その声?風邪、ひどくなったの?」
息子:「違う、大きな声出しすぎた」

母:「まぁたぁ・・試合にでない応援団長をするためにクラブ活動に行って、朝早く弁当作って駅に送る私の身にもなってよ」
息子:「違う!僕は、3塁のコーチなの!僕がいないと、チームは点が取れない重要な役割なの。夏大(夏の甲子園地方予選大会)でゼッケンもらえる可能性が、一番高い役割なの!」

母:「あっそう・・だんだん、部員も減ってる
し、何とかなるの?」
息子:「減ったって言ったって四十人いるから、二十人に選ばれるのはたいへんなことだよ」

母:「確立は50%か・・・」
息子:(ただただ、黙って後部座席に深くもたれて座っていました)

【コーチングすると】
母:「声、ひどくかれてるね。何かあったの?」
息子:「うん、ちょっと大きな声出しすぎた」

母:「何があったから大きな声、出したの?」
息子:「うん、今日から僕は3塁のコーチになれた。塁を進めるとき、大きな声で指示を出すからね。僕がいなきゃ、チームの点は入らないんだよ」

母:「重要な役割を任されたんだね。嬉しいネェ・・・。頑張った成果が出てきたね?」
息子:「うん、夏大に背番号もらえるかも・・・」

母:「背番号もらうためには、今の役割を上手くこなせばいいの?」
息子:「うん、それだけじゃやっぱりダメだと思うよ。基礎体力とか、技術もいると思うし・・」

母:「何か手伝えることある?」
息子:「大丈夫。クラブでやればいい」
母:「そう、応援してるよ」

頭では理解しているのですが、やはり自分が疲れていたり、自分にとって不都合なことがあると、会話を楽しんだり、盛り上げたりする気持ちになれず、ついつい、会話をカットしようと
働きかけてしまう。

ファミリー・コーチング②
【生の会話】
中学2年生の息子が、玄関をピカピカにしてくれました

母:「ありゃぁまぁ・・きれいになったねぇ」
息子:「うん、靴は全部下駄箱へいれてね。また、汚くなると、運が逃げるから」

母:「お父さんにいいなよ。靴に泥つけて帰ってくるの、お父さんでしょ?」
息子:「うん、そうだけど・・・お母さんの靴も下駄箱へ入れるよ」

母:「あしたも朝、早くに出かけなくちゃならないから出したままにして!時間がないから」
息子:(黙って、靴を下駄箱から出し、隅のほうに置きました)

【コーチングすると】
母:「ありゃぁまぁ・・きれいになったねぇ、ありがとうね」
息子:「うん、靴は全部下駄箱へいれてね。また、汚くなると、運が逃げるから」

母:「そうだね・・・ずいぶん汚れたままだったもんね。よく気づいてくれたね」
息子:「うん、友達が来たとき、恥ずかしいから・・・」

母:「そうだね。どうせすぐ、汚れるからといって、手抜きしてたからね。きれいにしてくれて、どんな気持ち?」
息子:「気持ちいいよね。ほうきで掃いて、それから水を流して。でも、そんな時間かかってないんだよ。十五分もかからず出来たし。」

母:「いつ掃除してくれたの?」
息子:「朝早く起きた日。お兄ちゃんが出かけるときバタバタして目が覚めちゃったときに、そうだ!掃除しようと思って」

母:「そう、ありがとうね。お兄ちゃんの朝早いお出かけ、もう少し静かにしてもらえるといいね。お母さんからお兄ちゃんに話してみるね」
息子:「うん、このごろ、僕まで寝不足になっちゃうからね」

親子でゆっくり会話をする時間が楽しめると、心の中を共有することが出来るようになります。
頭では理解しているのですが、心や体が「時間」に追われて、ついつい一番大事なことに費やす時間を惜しんでしまうようです。
二人の息子ですが、ゆっくり会話する気持ちを持てば、彼らもそれに応えて話をしてくれます。
ワークライフバランス。難しいことですが、大切なことだと気づかされました。

ファミリー・コーチング③
(スーパーのお菓子売り場での親子の会話)
【生の会話】
母:「早くしないさ。どれか一つだけよ」
子:「うん・・・これとこれ、一つ買うのと同じ金額だから・・・」

母:「ダメって言ったでしょ?一つ。一つにならないなら、もうやめなさい。もう、置いていくからね、おうちに帰れなくなっても知らないからね」
子:「・・・・じゃぁ、これ・・・」
 (べそをかきながら、二つ手にしたお菓子のうちから一つを選び、とぼとぼとお母さんの後を追ってレジへ向かいます)

【コーチングすると】
母:「今日のおやつはどれにする?」
子:「これとこれ」(両手に一つずつお菓子を持つ)

母:「そう、二つとも好きなお菓子だね」
子:「うん・・いい?(顔色伺う)」

母:「二つ買ってあげたいと思う。でもね、今から二つ食べるとご飯が食べられなくなると思うのよね。今日は一つにして、明日また一つ買おうか?」
子:「うん・・・・でも・・・」

母:「それとも明日は買わないで明日の分も買っておく?」
子:「それでもいいの?」
母:「もちろん、それでもいいよ。ただ、明日は別のものが欲しくなるとお母さんはちょっと辛いかな?ほんとうに食べたいものをおやつにしてあげたいから」

子:「うん・・・」(迷い始める)
母:「さぁ、あと少しで帰らないと、おやつ買っても食べられなくなっちゃうといけないから、二十数える間にどうするかを考えようか?」

子:「決めた!今日はこれにするね」(一つを選び、一つを売り場に戻し母親といっしょにレジに向かう)


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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子育てで悩むお母さん~積極的なコーチからの働きかけによるセッションのあり方~


福山さんの子どもさんは中学1年で、自分は親父の後を継ぎ、会社を拡大するのが自分の使命であると口にするほど、ビジョンがはっきりしている男の子です。
ところが、そのビジョンがはっきりしていることで、彼の生活はクラブ活動中心の毎日になり、家に帰ればぐったり疲れて眠ってしまうと言う有様。勉強で評価されることに価値を見出していないため、宿題を提出するのは気の向いただけという状態で、保護者会に出席するお母さんの福山さんは針のむしろの上にいるような気持ちでいっぱいになるそうです。そこで福山さんは、コーチングを学んで、何とか子どもとのコミュニケーションにおいて、子ども自身に自分で気づかせようとしますが、なかなか現実はうまくいきません。
コーチング学習中の模擬演技では、感情を抑えて相手とかかわれるのに、現実に向き合うとうまくいかず、この日も落ち込んだ姿を見せまいと、必死に模擬演技をする福山さんを見て、コーチは学習後、セッションを促しました。

「福山さん、保護者会だったのね?」
「どうして分かるんですか?」

「お子さんとのセッションをしてみたいと、手を上げてくださったでしょう?お子さん役を演じてくださった森山さんとの会話、とっても現実的でしたよ」
「うちでは話し始めて五分でアウトって感じなんです。今何とかしないと・アヒルさん(2)の行列どころじゃない、煙突(1)がいっぱい立っているんですよ?」

「成績が良くないことが、心配なんですね」
「そりゃあ心配ですよ。このままではどうなってしまうのか・・・・」

「どんなお子さんになってもらいたいの?」
「勉強は普通でいいんです。どんな人生がいいかをしっかり決めている子なので、高い学歴は必要ないと思います。手先が器用であれば、今のうちの仕事は継げますから。でも、うちの仕事をつぐことと勉強しないことはつながってはいきません。学生は、勉強するのが仕事だし、学校の評価基準で評価されなければ意味がないのです。よく気がつく良い子だといわれても、それを評価する項目が、通知表にはありません。内申点に反映されません」

「評価してもらうことがそんなに大事ですか?勉強することにはどんな意味があるのでしょうか?」
「一般教養や知識をつけるためです。だからと言って、それが即、現実社会で役立つことは少ないと思います。特に我が家の家業に必要な知識は、『センチ』の世界ではなく『尺・寸』の世界ですから。
でも、それとこれとはやはり違う気がします」

「福山さんのお話は、いつも二つの視点でものを見ていることに気づいていますか?一つは、子どもを実年齢の中学生と言う立場でみる視点。もう一つは、大人になって家業を継いだときの視点。今は、どちらの視点で捉えたらよいと思っていますか?」
「・・・そうですね。今は中学生としての視点を持つことです」

「では、中学生としての視点から考えましょう。学校で学ぶことは、どんな意味があると教えたいですか?」
「評価されるという現実と、評価によって進学先が決まると言うことです」

「性格的な良い点は、どうこの話に絡めていきましょうか?」
「良い点はそのまま伸ばしたいので、いろいろな役割を言われなくてもこなせることはとてもいいことだと思うけれども、それを評価する項目がないことを、通知表を見せながら説明してやりたいと思います。」

「もう一度伺いますが、息子さんに何を感じてもらいたいんですか?」
「学校と言う社会では、勉強が出来るかどうかで評価が決まると言う現実です」

「そのために福山さんは、いつ、それをテーマに話し合う時間を持ちますか?」
「今度の終業式の日、成績表をもらって帰ってきたときです」

「どこで話しますか?」
「家の中です」

「だれか、他の家族を交えますか?」
「いえ、父親も交えないほうがいいと思います。家業を継ぐといってくれたことで、ほっと安心しきっているので、子どもの味方をして、まぁ、勉強はなぁ・・とでも言い出されたら困ります」

「お二人で話し合うんですね?」
「はい、二人で」

「どう切り出しますか?」
「いきなり、何、この成績は・・とはさすがに言えません」

「そうですね。では、どんなことからなら話せますか?」
「・・・・」

「一つ、提案してもいいですか?」
「はい」

「お子さんの性格が良い、よく気がつく子だと担任が評価していたことから話し始めたらどうでしょうか?」
「でも・・・褒めた後に叱ったら、余計にこたえるんじゃないでしょうか?性格の優しい子ですから」

「初めて、息子さんを褒めましたね?」
「え?」

「今、初めてお子さんを『性格が優しい子ですから』とおっしゃいました。私も嬉しいです。お子さんの良い点をちゃんと認めておられるのに、今日はぜんぜん、その話が出てこなかった。残念だと思っていました」
「・・・・」

「子どもの可能性って、無限大にあると思いませんか?」
「はい」

「それを引き出してやるのは、親や教師をはじめ、子どもとかかわる大勢の人の役割だと思うんです。ただ、我が子となるとどうしても厳しい評価をしがちになる。子育てに責任を持てるのは親だけですからね。真剣勝負だし、全身全霊をこめてのかかわりになるから、ついつい厳しくなりますよね?でも、自分の子どもと言えども、人格をもった一人の人間です。冷静に距離をとって、良い点と悪い点というように、両方を提示してあげると、本人が気づくことも多くなるのではないでしょうか?」
「・・・」

「お子さんに伝えたいことをもう一度、整理して考えましょう。叱る叱らないじゃなくて、『伝えたいことは何か?』というようにポイントを絞って考えると、福山さんの気持ちも整理出来ると思います。いかがですか?やってみられますか?」
「はい。やってみようと思います」

親業をしていると、記念日はプレゼントをする日で、もらう日ではないと考えて過ごしているのではないでしょうか?
子育てに、親のやる気や欲は必要です。と、同時に、感謝が必要ではないでしょうか?
元気であること。学校を嫌わずに通う根気を持っていること。学校で友達と協調して集団生活出来ていること。褒めるべき点、認めるべき点、感謝すべき点はあらゆる角度から眺めてみればどこにでもあるはずです。子どもから毎日たくさんのものをいただいていることに、感謝出来る日があるといいなと思います。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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若いお母さんの思いが娘さんに通じていません~自分の人生の不幸はすべて家族が引き起こすと考える母親の視点を変えさせる~


今回は、若いお母さんと子どものコーチングです。三〇代の女性の心は、とても揺れるものだと考えさせられるセッションでした。
「おはようございます。この秋を何で感じましたか?」
「(きりっとした姿勢のまま)はい、子どものダンスのオーディションに落ちたことで、今シーズンの終わりを感じました」

「ん?・・・前回おっしゃってたお嬢さんのダンスのオーディションの結果が発表されたんですね?」
「はい、審査員の方の見る目がないんでしょうねぇ・・。明らかな『えこひいき』を感じましたが、結果は覆りませんでした」

「え?・・・結果に不満足だったんですね?」
「はい、一緒に受けた仲の良いお友達のお母さんもおっしゃったんです。絶対にうちの愛ちゃんのほうが上手かったって。だから、審査員に評価基準を公開してくださいとお願いしたんですけど、それは出来ないって・・・」

「愛ちゃんはなんておっしゃってるんですか?」
「愛とはダンスのオーディションが終わった後、喧嘩して以来、口をきいていません。結果が出た以上、愛も反省してもらわないと・・。あんなに『社会は厳しい、もっともっと寝る間も惜しんでレッスンしないとダメだって』言ったのに、『ママの言うとおりにしたんだから、文句言わないでよ。ママの夢と私の夢は一緒じゃないの!いい加減にして・・』と言ってむくれているんです。私だって、お盆も里に帰ることもせず、愛のレッスンの送り迎えや、先生の言うように栄養管理したり、体重管理したりして頑張ったのに・・・」

諏訪さんの表情から、怒りが消えた途端、深い悲しみがにじみ出ました。

「諏訪さん、諏訪さんの夢は何ですか?」
「私の夢ですか?一人娘ですから、愛が幸せになることです」

「諏訪さんの想像する愛ちゃんの幸せって?」
「まず、経済的に自立して、男性に頼らなくても生活出来るほどになっていること」

「なるほど、経済的な自立が第1基準ですね。他には何かあるのかしら?」
「いえ、男性社会の中で生き抜くためには、男より秀でた何かを身につけていなければいけません。
それさえあれば、何とかなると思うんです」

「愛ちゃん本人の夢は?」
「愛はまだ一〇歳です。夢なんてちっちゃなものに過ぎないでしょう。だから、親の私が道を決めてあげるのが役目でしょう?」

「諏訪さんの今の姿は、諏訪さんのご両親に決めてもらったものですか?」
「私は自分で決めました。それで、今、後悔しているんです」

「ご主人はどんな意見なんですか?」
「主人は、男ですから、社会の中で困ることはありません。部長にまでなっているし、将来は役員候補者ですから、私たち女がどれほど苦労するかなんて分かりませんよ!愛がこんなに頑張ったのに、励ましの一つの言葉だってない。『俺はお前たちを養うために一生懸命嫌な仕事でも頑張ってるのに、これ以上、何を協力しろって言うんだ!』と言って・・・。愛のレッスンで遅くなって食事の支度の手間を掛けられない日に限って早く帰宅して・・。私の苦労なんて何にも理解しないんです」

「愛ちゃんは、そんなやり取りをどんな気持ちで聴いてるんでしょう・・
「父親の薄情さに呆れているんじゃないですか?そうじゃなきゃ、父親そのものを嫌いになったんじゃないですかね?」

「ご主人にとって愛ちゃんはどんな存在ですか?」
「養う人が一人多いってくらいでしょ?男親なんてあてにならないんです。母親だからこそ、愛情があるからこそ、出来ることですわ」

「そうですね。諏訪さんの母親としての愛情の深さが伝わってきます。と、同時に、それが押し付けになっていないかが心配でもあります」
「押し付け?コーチは、愛は嫌がっていると思ってらっしゃるの?それは違います!愛だって、二位の結果に満足出来ないと言っています。優勝して、留学するチャンスを逃したことをすごく後悔しています。ただ、愛は『まぁ、しょうがないじゃん、私の実力だから・・』と言って平気でいるんです。それが許せなくって・・・」
「ほんとうに愛ちゃんは平気でいるんでしょうか?」

「だって、あれ以来、自宅でのレッスンはしないし。お友達と遊んでばかり。授業だって、本戦出場が決まってから三週間ほど休ませてレッスンだけさせたから、遅れているのに、勉強もしない。英語の塾もなんかかんか理由をつけて休んでるし」
「英語は、留学して言葉に困らないためでしたっけ?」

「はい、コミュニケーションが取れないと、心が縮まりますから。アメリカに行っても言葉で挫折したら意味がないでしょ?」
「学校にいる時間と、塾やレッスンする時間と、あわせたら何時間になりますか?」

「十三時間半くらいかしら?」
「子どもの生活時間としてふさわしいんでしょうか?」

「他のお子さんのように、今遊んでたら将来、男に使われる普通の生活しか出来ません。主婦になることが悪いとは思いませんが、人の顔見れば『飯は? 風呂は? まだ出来てないのか・・、これは今日、昼に喰ったおかずと一緒』とかって、文句ばっかりいう男にだけは、嫁がせないようにしなくちゃ。
私の人生は、こんなんじゃないはずだった。夫が働かないで家にいろというから・・」
「諏訪さんはご自分の人生に点数をつけるとすると何点つける?」

「マイナス三十点って気分です。職場の上司にも認められず、夫にも恵まれず。愛は結果が出せないし。ホントに不幸ですよ・・」
「ご主人とは恋愛結婚でしたでしょう?」

「いつまでも愛情なんてあるはずがないでしょ?あんな薄情な男のことはいいんです。私を不幸せにしたんだから、せいぜい愛のレッスン代や、生活費のために働けばいいんだわ」
「ご主人は、お嬢さんのレッスン代や、生活費のために働けばいいんですか。もし、働きすぎて身体を壊されたらどうしますか。そうなったらそれでご主人はお払い箱ですか?」

「そんなことはしません。主人が病気になったら私が看病するし生活費だって私が何とかします。でも、今の主人の態度は許せません」
「うん・・残念ですが、諏訪さん、今日は時間が来てしまいました。今日のセッションを振り返って、何か感じることはありましたか?」

「はい、改めて夫の薄情さと、愛の反抗的な態度が、私を苛立たせているということです」
「次回までの宿題としてご主人と愛ちゃんの感情を推し量ってみていただけますか? 諏訪さんのどんな言葉に、愛ちゃんが反抗するのかとか、ご主人から厳しい言葉を聞くのかということを観察してきてください。メモを作っていただければ尚いいですね。」

「分かりました。やってきます!」
人の心は自分でコントロールしなければなりません。また、愛ちゃんのためにも諏訪さんのためにも、ご主人のためにも。自分の人生はみんな自分のものであることに気づいて、自ら考えを変えない限り、行動も結果も変わりません。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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産休中の母親の悩み~中断しがちな女性のキャリアを考えるセッション~


10月のすがすがしい秋の空の下、ひとりの女性と出会いました。

「はじめまして、コーチの宮田です。どうぞお入り下さい」小気味良かった足音とドアの前に立つ女性の表情に違和感を感じながらも、部屋の中に招き入れ、椅子を勧めて腰掛けるよう促しました。
「あの・・子どもが泣き出すとお話が出来なくなりますがよろしいでしょうか?」

「もちろん、かまいませんよ。赤ちゃんの世話を一番にしましょう。今は、眠っておられるんですね?」
「はい、車の中ではいつも寝てしまうんです・・あの、私のようなものがコーチングを受けるということはあるんでしょうか?」

「ええ、生後間もない赤ちゃんを連れてきてくださる方もいらっしゃいます。赤ちゃんとお母さんは、ある時期までは、離れられない関係ですから、どうぞ遠慮なさらずに」
「そうですか、ちょっと安心しました」

「コーチングは初めてですか?」
「はい、こういうことは、仕事をしている人しか縁がないと思っていたんです」

「早速ですが、南山さん、コーチングってどんなものか、体験してみますか?」
「はい、あ、でも子どもが起きて泣いたらどうしましょうか?」

「はい、泣いてどうにもお話するのが難しくなったら、中断しましょう」
「いいですか? ありがとうございます」

「南山さんは、日ごろ何かを達成したいけどなかなか実行出来ないとか、これやってみたいけど出来ないという不満足なことって、どんなことがありますか?」
「はい、あの、子どもが生まれてから、自分のペースで生活が出来なくて、すっごくイライラしちゃうんです」

「なるほど、マイペースではなくて、他人というか赤ちゃんペースでの生活になっていることに苛立ちを感じているんですね?」
「ええ、自分のしたいことが何にも出来ないのですごく強く苛立って、この間なんかは、子どものおもちゃを、壁に投げつけてしまったんです。いけないと思いながらも、もう、どうにもとまらなくて・・」

「そのときの気持ちですが、投げる前と後、どんな違いを感じたの?」
「投げる前は、なんかもう何も考えてなくて、ただただ、衝動に駆られたって感じかなぁ?投げた後は、すっごく後悔しました」

「そうですか、すっきりしたということはなかったんですねぇ」
「はい、すっきりどころか、子どもはますます泣くし、おもちゃはこわれてしまうし。自己嫌悪で、私なにやってるんだろうって感じで泣きたくなりました」

「南山さんは、出産されるまでは仕事をなさっていたんですか?」
「はい、してました。商社で、貿易事務です」

「貿易事務の仕事は楽しかった?」
「すっごく楽しかった。海外からの商品を輸入する証明書を書き、税関にお使いに行くときに、海が見えるんですが、この海の向こうに、自分が買い付けた商品があるんだと思うと、とても嬉しくなって・・早く、日本の皆さんにご紹介出来たらいいなと思っていました」

「失礼ですが、子どもを持つことは、夫婦お二人で決められたことでしょう?」
「はい、でも、散々迷ってのことです。育児休暇1年で、職場に復帰するつもりですが、これから1年、どうしたらいいのか、子育てだけに向き合っていたら、なんか、取り残されるようで・・」

「一番大きな気持ちは、何?」
「うん・・どうしたらいいかがわからない不安でしょうか?」

「なるほど、どうしたらいいかわからない不安ですね。その不安を解消するためには、どんなことをはっきりさせたいのかしら?」
「そうですね・・復帰後、自分の会社での居場所を作れるかどうか、作るなら、どんな仕事をするのがいいかどうか・・1年のブランクなんで、大丈夫とは思うんですが、貿易事務が出来るくらいでは、今、変わりに来てもらっている人材派遣会社の人のほうが仕事が出来たりすれば、会社は私を必要としなくなるでしょうか?」

「たしかに、南山さんの休暇中、あなたの仕事を埋めていただくためには、会社は人材派遣会社の社員を使うことでしょう。でも、人材派遣会社の社員を雇ったということは、あなたに復帰していただきたいという会社の思いがあるのではないでしょうか?派遣会社は、必要なとき、必要なスキルを持っている人を、必要な分だけの労働力を提供するというのが基本です。会社として南山さんの復帰が望めないのであれば、社員の代わりを探すのではないですか?」
「それはそうだと思います・・。貿易事務といっても誰にでも出来る仕事ではありませんから・・」

「日本語と英語が、ビジネスレベルでストレスなくコミュニケーション出来るという条件だけでもハードルは高いと思いますが・・。もっとご自分のスキルに自信を持っていいと思いますが?」
「子どもは可愛いけど、ちっとも自分の思うとおりにも育児書のとおりにもならなくて・・私、こんなふうにいい加減で、親としてやっていけるかどうか分からなくて・・・」

「どうやら、自信を失った原因は、子育てにあるようですね。赤ちゃんにとってあなたは母親、ご主人は父親ですよね。子どもは二人で育てていいんじゃないですか?」
「え?」

「子育てに、もっとご主人を巻き込んじゃったら?」
「でも、仕事して帰ってきたら疲れてるだろうし・・」

「南山さんが一人前に働いていたからこそ、ご主人のしんどさも理解していらっしゃるんでしょうが、楽しみだってあるんじゃないですか?」
「子育ての楽しみ?」

「ええ、笑ったとか、泣いたとかもそうだし、日に日に変わる顔をみてるだけでも、幸せって感じる人もいるようですよ。今しかないこのときだから、もっと赤ちゃんに触らせてあげたら?」
「でも、夫に出来るかしら。落としたりしたら大変だし・・」

「もちろん、モノじゃないので、落としたら大変でしょう。なら、畳に座って抱っこしててもらうとか、ローソファーがあれば、それでとか」
「ぶきっちょ何ですよ。彼」

「大丈夫、自分のお子さんですよ。なんでも一人で抱えていないで、少し、荷物を降ろしてみたらどうでしょうか?これからも一緒に考えてみたいのですが、いかがですか?」
「はい、子供連れでもいいとおっしゃってくださるなら、ぜひ、お願いします」

「もちろんですよ、赤ちゃんが泣いたら中断すればいい。疲れれば、また、眠りますから・・」

子どものせいで、自分の人生が思うとおりに運ばない、自分にとって不都合だと思うお母さんが増えたように思います。大人だけの生活から一変する生活の中で、女性は自分のキャリアを描き続けることが難しくもあります。
子育ても一つのキャリアだということを忘れている人もいます。まずはお母さんが輝くキャリアビジョンを持っていることが、子どものためになることを、一緒に見つけられたらいいなと思います。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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