コーチング事例集:コーチ養成講座で実践的なコーチング技能と資格取得を。セミナー、研修、コーチングであなたの課題を解決

コーチング事例集

若いお母さんの思いが娘さんに通じていません~自分の人生の不幸はすべて家族が引き起こすと考える母親の視点を変えさせる~


今回は、若いお母さんと子どものコーチングです。三〇代の女性の心は、とても揺れるものだと考えさせられるセッションでした。
「おはようございます。この秋を何で感じましたか?」
「(きりっとした姿勢のまま)はい、子どものダンスのオーディションに落ちたことで、今シーズンの終わりを感じました」

「ん?・・・前回おっしゃってたお嬢さんのダンスのオーディションの結果が発表されたんですね?」
「はい、審査員の方の見る目がないんでしょうねぇ・・。明らかな『えこひいき』を感じましたが、結果は覆りませんでした」

「え?・・・結果に不満足だったんですね?」
「はい、一緒に受けた仲の良いお友達のお母さんもおっしゃったんです。絶対にうちの愛ちゃんのほうが上手かったって。だから、審査員に評価基準を公開してくださいとお願いしたんですけど、それは出来ないって・・・」

「愛ちゃんはなんておっしゃってるんですか?」
「愛とはダンスのオーディションが終わった後、喧嘩して以来、口をきいていません。結果が出た以上、愛も反省してもらわないと・・。あんなに『社会は厳しい、もっともっと寝る間も惜しんでレッスンしないとダメだって』言ったのに、『ママの言うとおりにしたんだから、文句言わないでよ。ママの夢と私の夢は一緒じゃないの!いい加減にして・・』と言ってむくれているんです。私だって、お盆も里に帰ることもせず、愛のレッスンの送り迎えや、先生の言うように栄養管理したり、体重管理したりして頑張ったのに・・・」

諏訪さんの表情から、怒りが消えた途端、深い悲しみがにじみ出ました。

「諏訪さん、諏訪さんの夢は何ですか?」
「私の夢ですか?一人娘ですから、愛が幸せになることです」

「諏訪さんの想像する愛ちゃんの幸せって?」
「まず、経済的に自立して、男性に頼らなくても生活出来るほどになっていること」

「なるほど、経済的な自立が第1基準ですね。他には何かあるのかしら?」
「いえ、男性社会の中で生き抜くためには、男より秀でた何かを身につけていなければいけません。
それさえあれば、何とかなると思うんです」

「愛ちゃん本人の夢は?」
「愛はまだ一〇歳です。夢なんてちっちゃなものに過ぎないでしょう。だから、親の私が道を決めてあげるのが役目でしょう?」

「諏訪さんの今の姿は、諏訪さんのご両親に決めてもらったものですか?」
「私は自分で決めました。それで、今、後悔しているんです」

「ご主人はどんな意見なんですか?」
「主人は、男ですから、社会の中で困ることはありません。部長にまでなっているし、将来は役員候補者ですから、私たち女がどれほど苦労するかなんて分かりませんよ!愛がこんなに頑張ったのに、励ましの一つの言葉だってない。『俺はお前たちを養うために一生懸命嫌な仕事でも頑張ってるのに、これ以上、何を協力しろって言うんだ!』と言って・・・。愛のレッスンで遅くなって食事の支度の手間を掛けられない日に限って早く帰宅して・・。私の苦労なんて何にも理解しないんです」

「愛ちゃんは、そんなやり取りをどんな気持ちで聴いてるんでしょう・・
「父親の薄情さに呆れているんじゃないですか?そうじゃなきゃ、父親そのものを嫌いになったんじゃないですかね?」

「ご主人にとって愛ちゃんはどんな存在ですか?」
「養う人が一人多いってくらいでしょ?男親なんてあてにならないんです。母親だからこそ、愛情があるからこそ、出来ることですわ」

「そうですね。諏訪さんの母親としての愛情の深さが伝わってきます。と、同時に、それが押し付けになっていないかが心配でもあります」
「押し付け?コーチは、愛は嫌がっていると思ってらっしゃるの?それは違います!愛だって、二位の結果に満足出来ないと言っています。優勝して、留学するチャンスを逃したことをすごく後悔しています。ただ、愛は『まぁ、しょうがないじゃん、私の実力だから・・』と言って平気でいるんです。それが許せなくって・・・」
「ほんとうに愛ちゃんは平気でいるんでしょうか?」

「だって、あれ以来、自宅でのレッスンはしないし。お友達と遊んでばかり。授業だって、本戦出場が決まってから三週間ほど休ませてレッスンだけさせたから、遅れているのに、勉強もしない。英語の塾もなんかかんか理由をつけて休んでるし」
「英語は、留学して言葉に困らないためでしたっけ?」

「はい、コミュニケーションが取れないと、心が縮まりますから。アメリカに行っても言葉で挫折したら意味がないでしょ?」
「学校にいる時間と、塾やレッスンする時間と、あわせたら何時間になりますか?」

「十三時間半くらいかしら?」
「子どもの生活時間としてふさわしいんでしょうか?」

「他のお子さんのように、今遊んでたら将来、男に使われる普通の生活しか出来ません。主婦になることが悪いとは思いませんが、人の顔見れば『飯は? 風呂は? まだ出来てないのか・・、これは今日、昼に喰ったおかずと一緒』とかって、文句ばっかりいう男にだけは、嫁がせないようにしなくちゃ。
私の人生は、こんなんじゃないはずだった。夫が働かないで家にいろというから・・」
「諏訪さんはご自分の人生に点数をつけるとすると何点つける?」

「マイナス三十点って気分です。職場の上司にも認められず、夫にも恵まれず。愛は結果が出せないし。ホントに不幸ですよ・・」
「ご主人とは恋愛結婚でしたでしょう?」

「いつまでも愛情なんてあるはずがないでしょ?あんな薄情な男のことはいいんです。私を不幸せにしたんだから、せいぜい愛のレッスン代や、生活費のために働けばいいんだわ」
「ご主人は、お嬢さんのレッスン代や、生活費のために働けばいいんですか。もし、働きすぎて身体を壊されたらどうしますか。そうなったらそれでご主人はお払い箱ですか?」

「そんなことはしません。主人が病気になったら私が看病するし生活費だって私が何とかします。でも、今の主人の態度は許せません」
「うん・・残念ですが、諏訪さん、今日は時間が来てしまいました。今日のセッションを振り返って、何か感じることはありましたか?」

「はい、改めて夫の薄情さと、愛の反抗的な態度が、私を苛立たせているということです」
「次回までの宿題としてご主人と愛ちゃんの感情を推し量ってみていただけますか? 諏訪さんのどんな言葉に、愛ちゃんが反抗するのかとか、ご主人から厳しい言葉を聞くのかということを観察してきてください。メモを作っていただければ尚いいですね。」

「分かりました。やってきます!」
人の心は自分でコントロールしなければなりません。また、愛ちゃんのためにも諏訪さんのためにも、ご主人のためにも。自分の人生はみんな自分のものであることに気づいて、自ら考えを変えない限り、行動も結果も変わりません。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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産休中の母親の悩み~中断しがちな女性のキャリアを考えるセッション~


10月のすがすがしい秋の空の下、ひとりの女性と出会いました。

「はじめまして、コーチの宮田です。どうぞお入り下さい」小気味良かった足音とドアの前に立つ女性の表情に違和感を感じながらも、部屋の中に招き入れ、椅子を勧めて腰掛けるよう促しました。
「あの・・子どもが泣き出すとお話が出来なくなりますがよろしいでしょうか?」

「もちろん、かまいませんよ。赤ちゃんの世話を一番にしましょう。今は、眠っておられるんですね?」
「はい、車の中ではいつも寝てしまうんです・・あの、私のようなものがコーチングを受けるということはあるんでしょうか?」

「ええ、生後間もない赤ちゃんを連れてきてくださる方もいらっしゃいます。赤ちゃんとお母さんは、ある時期までは、離れられない関係ですから、どうぞ遠慮なさらずに」
「そうですか、ちょっと安心しました」

「コーチングは初めてですか?」
「はい、こういうことは、仕事をしている人しか縁がないと思っていたんです」

「早速ですが、南山さん、コーチングってどんなものか、体験してみますか?」
「はい、あ、でも子どもが起きて泣いたらどうしましょうか?」

「はい、泣いてどうにもお話するのが難しくなったら、中断しましょう」
「いいですか? ありがとうございます」

「南山さんは、日ごろ何かを達成したいけどなかなか実行出来ないとか、これやってみたいけど出来ないという不満足なことって、どんなことがありますか?」
「はい、あの、子どもが生まれてから、自分のペースで生活が出来なくて、すっごくイライラしちゃうんです」

「なるほど、マイペースではなくて、他人というか赤ちゃんペースでの生活になっていることに苛立ちを感じているんですね?」
「ええ、自分のしたいことが何にも出来ないのですごく強く苛立って、この間なんかは、子どものおもちゃを、壁に投げつけてしまったんです。いけないと思いながらも、もう、どうにもとまらなくて・・」

「そのときの気持ちですが、投げる前と後、どんな違いを感じたの?」
「投げる前は、なんかもう何も考えてなくて、ただただ、衝動に駆られたって感じかなぁ?投げた後は、すっごく後悔しました」

「そうですか、すっきりしたということはなかったんですねぇ」
「はい、すっきりどころか、子どもはますます泣くし、おもちゃはこわれてしまうし。自己嫌悪で、私なにやってるんだろうって感じで泣きたくなりました」

「南山さんは、出産されるまでは仕事をなさっていたんですか?」
「はい、してました。商社で、貿易事務です」

「貿易事務の仕事は楽しかった?」
「すっごく楽しかった。海外からの商品を輸入する証明書を書き、税関にお使いに行くときに、海が見えるんですが、この海の向こうに、自分が買い付けた商品があるんだと思うと、とても嬉しくなって・・早く、日本の皆さんにご紹介出来たらいいなと思っていました」

「失礼ですが、子どもを持つことは、夫婦お二人で決められたことでしょう?」
「はい、でも、散々迷ってのことです。育児休暇1年で、職場に復帰するつもりですが、これから1年、どうしたらいいのか、子育てだけに向き合っていたら、なんか、取り残されるようで・・」

「一番大きな気持ちは、何?」
「うん・・どうしたらいいかがわからない不安でしょうか?」

「なるほど、どうしたらいいかわからない不安ですね。その不安を解消するためには、どんなことをはっきりさせたいのかしら?」
「そうですね・・復帰後、自分の会社での居場所を作れるかどうか、作るなら、どんな仕事をするのがいいかどうか・・1年のブランクなんで、大丈夫とは思うんですが、貿易事務が出来るくらいでは、今、変わりに来てもらっている人材派遣会社の人のほうが仕事が出来たりすれば、会社は私を必要としなくなるでしょうか?」

「たしかに、南山さんの休暇中、あなたの仕事を埋めていただくためには、会社は人材派遣会社の社員を使うことでしょう。でも、人材派遣会社の社員を雇ったということは、あなたに復帰していただきたいという会社の思いがあるのではないでしょうか?派遣会社は、必要なとき、必要なスキルを持っている人を、必要な分だけの労働力を提供するというのが基本です。会社として南山さんの復帰が望めないのであれば、社員の代わりを探すのではないですか?」
「それはそうだと思います・・。貿易事務といっても誰にでも出来る仕事ではありませんから・・」

「日本語と英語が、ビジネスレベルでストレスなくコミュニケーション出来るという条件だけでもハードルは高いと思いますが・・。もっとご自分のスキルに自信を持っていいと思いますが?」
「子どもは可愛いけど、ちっとも自分の思うとおりにも育児書のとおりにもならなくて・・私、こんなふうにいい加減で、親としてやっていけるかどうか分からなくて・・・」

「どうやら、自信を失った原因は、子育てにあるようですね。赤ちゃんにとってあなたは母親、ご主人は父親ですよね。子どもは二人で育てていいんじゃないですか?」
「え?」

「子育てに、もっとご主人を巻き込んじゃったら?」
「でも、仕事して帰ってきたら疲れてるだろうし・・」

「南山さんが一人前に働いていたからこそ、ご主人のしんどさも理解していらっしゃるんでしょうが、楽しみだってあるんじゃないですか?」
「子育ての楽しみ?」

「ええ、笑ったとか、泣いたとかもそうだし、日に日に変わる顔をみてるだけでも、幸せって感じる人もいるようですよ。今しかないこのときだから、もっと赤ちゃんに触らせてあげたら?」
「でも、夫に出来るかしら。落としたりしたら大変だし・・」

「もちろん、モノじゃないので、落としたら大変でしょう。なら、畳に座って抱っこしててもらうとか、ローソファーがあれば、それでとか」
「ぶきっちょ何ですよ。彼」

「大丈夫、自分のお子さんですよ。なんでも一人で抱えていないで、少し、荷物を降ろしてみたらどうでしょうか?これからも一緒に考えてみたいのですが、いかがですか?」
「はい、子供連れでもいいとおっしゃってくださるなら、ぜひ、お願いします」

「もちろんですよ、赤ちゃんが泣いたら中断すればいい。疲れれば、また、眠りますから・・」

子どものせいで、自分の人生が思うとおりに運ばない、自分にとって不都合だと思うお母さんが増えたように思います。大人だけの生活から一変する生活の中で、女性は自分のキャリアを描き続けることが難しくもあります。
子育ても一つのキャリアだということを忘れている人もいます。まずはお母さんが輝くキャリアビジョンを持っていることが、子どものためになることを、一緒に見つけられたらいいなと思います。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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親子コーチングの失敗事例~完全主義の母、子どもとのコミュニケーションを考える~


高校1年生の長男は、とにかく熱心にクラブ活動のために学校に行くそうです。
夏休みになってもこの暑さの中、炎天下で熱中症と戦いながら白球を追っているようで、くたびれて帰ってきて誰とも話したくなくすぐに自分の部屋にいきたい気持ちも理解は出来ますが、あまりにも「自分」を中心に生活を送っており、家族の協力が必要な兼業母親(仕事と育児と家事を両立させている主婦)としては、心がとがる日もあるとのことです。
今日も、寝起きが悪く不機嫌そうな長男と向き合うと、つい余計ごとを口走りそうになるため、弁当を作った後は、さっさと自室へ戻りました。そんな母親を追って、長男が部屋に入るなり、「お茶、作っといて・・」との一言です。〝カチン〟と頭の中の音が聞こえるほど、腹立たしく感じたお母さんは、長男相手にコーチングしてみようと思ったそうです。

「あのさ、あなたのクラブでは、チームワークは必要ないの?」
「はぁ?朝から何の話?」

「だから、家庭だってクラブだって、チームワークでしょ?私は弁当を作るという協力は惜しみなくしたでしょ?」
「だから何?」

「ちょっと体がだるくて、しんどいから横になりたいのね?お母さんだっていつもいつも元気じゃないからさぁ・・自分で出来そうなことは自分でするという自立心も養うんじゃないのかな?あなたのクラブは・・」
「はぁ?ってことは、やりたくないってこと? だったらそういえばいいじゃん!ぐちゃぐちゃ遠まわしに言わんでよ、うっとおしいなぁ・・朝から・・・」

この会話だけでも、すでにご理解いただけると思いますが、まったくコーチングではありません。
お母さんは、冷静になろうと努めるのですが、あまりにもふてぶてしい態度に、つい、感情が高ぶってしまい、

「ちょっと待った、あなた、誰に口聞いてるの?誰が学費払ってるわけ?高校生でも、アルバイトしながら学校通う子だっていると思うのに、あんまり当たり前だと思わないでよね?誰にとっても時間は価値を生むもので、眠って体力を維持しなければならないことであっても、それは次に働くエネルギーを作る時間だと思えば、価値があるじゃない? 自分のやりたいことなら、自分のことは自分でするのが当然でしょ?」
と、大きな声を上げてしまったそうです。

それに対して長男は、「ばっかじゃないの?何朝からカリカリしてんの?理解出来ん・・」と言い残して、出かけたそうです。
お母さんは約束はなかったのですが、緊急にコーチに電話をかけて、セッションを希望しました。

「コーチ・・・また、やっちゃいました・・・とても辛いです」
「うん・・辛いネェ・・・今、何を感じてる?」

「そうですね、親子間ではコーチングは出来ないと思ってます」
「親子間ではコーチングは出来ない。それは残念なのかしら?」

「そうですね、残念です。・・・二つの残念があります。一つはコーチングを学んでいるのに、ぜんぜん役に立てられないこと。一つは、また、長男とけんかしたという意味で・・・」

「親子間でコーチングがうまくいくとしたら、どんな条件が必要だと思ってますか?」
「そうですね・・・やはり、時間というゆとりがあったほうがいいかな?」

「ゆとりですか?」
「うん、そうですね。あと、体調。私が体調さえよければ、何も引っかかることはなかったと思います。弁当って、ホント毎日でしょ?大変なんです。朝1番電車に乗るって言われたら、四時半にはおきなくちゃ。そんな日に1日自分の仕事があると、体力持つかな?って考えちゃいますよ。そうすると、ちょっとの時間見つけて、横になりたいと思うんですよね。だって、仕事に穴を開けたら、お客様に迷惑がかかるでしょ?」

「なるほど、ちょっときつい言い方をするなら、ご自身の仕事のお客様には甘えられないけれども、家族には甘えたい?」
「うん・・・厳しい言い方だけど、受け入れなければならないかなぁ・・・甘えですかね?」

「いや、甘えだとは思いません。プロの意識をお持ちでいらっしゃることは、尊敬いたします。ただ、ご家族との間には、その厳しさよりもすこし甘えがあるようには感じます」
「そうですね。長男に分かりなさい、ママはこんなにあなたのためにやってるでしょ?もっと感謝しなさい!って言いたい気持ちがあります。小さいころは、親の顔色見て動く子だったのに、どこで間違ったのかしらねぇ・・・」

「親の顔色みて動いて欲しいですか?」
「いいえ、それはあまり望みませんが、自立して欲しいですね。自分の飲むお茶は自分で作る。弁当箱は洗っておくとか・・・」

「そういう気持ちを話されたことはありますか?」
「いいえ、ありません。そんなゆっくりした話は出来ませんから・・」

「時間は価値があるとおっしゃったけれども、お話する時間が持てませんか?」
「帰ってくると、疲れている様子は伺えますから、けんかすることもないかな?と」

「けんかすることが前提になってますね・・」
「ああ、そうですね。そういえば、いつもけんか腰ですね。このごろ」

「お互い、疲れていらっしゃるんじゃなりませんか?」
「ええ、そうですね。疲れています。暑いのが苦手なせいもあるかな?」

「真の苦手は暑さかしら?」
「うん、そうかもしれません。暑い=大量消耗って感じ捉えていますから」

「なるほど。ところで長男さんとは、今夜どうしますか?」
「うん・・・、難しいですね。お互い知らん顔ですかね?」

「ご自分に望むことは何かありますか?」
「そうですね、出来れば、静かな夜にしたいので、自分から朝の続きをはじめないことと、絡まれたととらないことでしょうか?」
「あはは、子どもに絡まれる。面白い捉え方ですね・・」

「うん、やっぱり疲れていると思います。すべてネガティブですね考え方が・・・」
「いや、そういう時もあると受け入れられたらいかがですか?すべてがうまくいくことはありません。そう考えたら、少し肩の力が抜けると思いますが、いかがでしょうか?」

「そうですね。疲れのせいにしてもいけないけれども、疲れていることも事実ですからね」
「ちょっと、アドバイスしてもいいですか」

「はい、どんなことでしょうか。参考にしますのでアドバイスをお願いします」
「お母さんは、毎日の家事と仕事で疲れている。子供さんも毎日のクラブ活動で疲れている。お互いが疲れているとき、また朝の忙しいときには話は出来ないと思います。すこし落ち着いて話が出来るタイミングのときに、お子さんに向けてのコーチングをされることをお勧めしします」

「そうですね。少し考えてみます。今日は、突然で申し訳ありませんでした。ありがとうございました」


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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受験発表を終えた長男とのコーチング~受験失敗を前向きにさせた母親のコーチング効果~


「今年の春は、花の足が速い気配で始まりましたが、桜の開花は思ったより早くなく、例年より少し早い程度でしたね」アイスブレークのつもりで軽く話し始めた山川コーチでしたが、
「我が家の桜は三年後まで咲く気配なしになりました」と、返してきた武田さんの言葉に、胸が縮む思いをし、一瞬目頭が熱くなりました。
武田さんは、受験発表を終えた長男とのコーチングの様子を山川コーチとのテーマに選びました。
「まぁ、この春ほど、どきどきする時間を過ごした春はないですねぇ・・」
「ご長男、受験でしたねぇ。結果発表はいかがでしたか?」

「桜は咲かず。一歩及ばずでした」
意外なほどあっさりおっしゃる武田さんの言葉に、一瞬言葉を失ったのは、むしろ山川コーチのほうでした。

「残念でしたねぇ」山川コーチが見つけた言葉は短いものでしたが、四ヶ月間、コーチングを通して一緒に戦ったような気持ちの山川コーチも、本当に残念な気持ちが湧き上がり、自然に言葉になって自分の思いを伝えました。
その気持ちが伝わったのか「ありがとうございました。この四ヶ月の中でのセッションは、受験する長男との付き合い方をテーマにしていただきましたから、コーチと一緒に戦ったような感じですね。
我が家の空気は、終始、受験でぴりぴりしたものがなく、私も普段と変わらないペースで仕事を中心とした生活でしたし。発表の日も仕事をしていましたので、合格の通知は、メールで入れておいてと、長男と約束していたくらいだったんですね。それでも、さすがに気になって、仕事中にメールの確認を許可いただき、たった一言、『落ちた』というメールを読んだときは、さすがに動揺しましたねぇ。たった一言の短い言葉にこめられた長男の気持ちを思うと、母親として何とかしてやれなかったのか悔やみました。
よもやという油断があったんでしょうね。もともと、ボーダーラインぎりぎりへの挑戦であったわけですから、どこかでプレッシャーをかけ
たほうが良かったのかもしれません。母親として、どうこの受験生と向き合うか、受験期の手綱を引くべきだったのか?後悔するんですねぇ。仕事先の皆さんも同じように受験をさせた父親が大勢いらっしゃったので、皆さんに気を遣わせてしまいました。仕事に私情を挟んだのは、初めてでした。最初で最後の経験かもしれません」

さすがに、半日という時間に気持ちが整理出来ていたのか、武田さんは落ち着いて話します。
山川コーチは、そんな武田さんのそっと吐き出される言葉をじっくり受け止めます。
「ところがね、長男に電話をして、とりあえず自宅に戻ることを確認すると、不思議に落ち着いてね。
『気をつけて帰ってね』と、穏やかに沈まず伝えることが出来たんですよね。セルフコーチングして、気持ちを落ち着かせたのも功を奏するんでしょうが、何より、これは、長男の問題であり、支援者である私が動揺したら、余計に気持ちを沈ませると考えたんですね。
さすがに、電話の向こうの声は涙声でしたが、つらいだろうし悔しいはずなのに気丈に振舞っている様子に胸を打たれるなど、何度も私の気持ちもくじけそうになるんですよね。でも、その都度、大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせ、仕事を続けました。昼の休憩は、食欲の塊のような私もさすがに食べたいという気持ちが湧かず、その代わり、担任の先生の電話や、塾からのお詫びの電話などを受け、先生方と話すことによって、次第に気持ちを落ち着けることが出来、恐らく、他の家庭のお母さんとは違う、冷静な対応が出来たと思います。

長男と向き合いなおすにも時間はさほど長くかからず、1学期の学校管理ミスによる不幸な事故によって負った骨折と手術のこと、三年生最後のクラブ活動を断念し最高の応援者として、松葉杖をついてグランドに病院から駆けつけたこと。夏休み以降の学習中心の生活のこと、秋以降の家庭教師と塾による家庭学習の強化など、様々な過程をふりかえりながら、ここまでの努力がいつ実を結び大輪の花を咲かせるかとても楽しみだという、将来に向けて引き続き支援するよという親の気持ちを素直に伝え、長男の気持ちを前向きにするセッションにさほど時間をかけることもなく、お互いの協力を感謝しあう、評価感謝の時間を持つことが出来たことに、別の意味で、長男の成長を感じ、熱くこみ上げるものを堪えることが出来ませんでしたねぇ。
悔しいのは当たり前なんだけど、今回のことを通してまた一つ成長した長男を感じることが出来、これも長男に与えられた大きな試練、これを乗り越えていってこそ私の長男だと思っています。すこし強がりかもしれませんが、そう思うようにしています」

ここまで一気に話した武田さん、さすがに感情が高まったのか、眼にうっすらと涙がにじみ言葉に詰まって黙り込んでしまいました。山川コーチはその沈黙の時間をじっと待つという協力をしました。
「長男が信頼するある会社の社長にあてたメール、読んでいただけますか?親ばかだけど、嬉しくってね。山川さんにぜひ、読んでいただきたいんですよ」
そういって武田さんは、山川コーチに携帯電話のメールを差し出しました。
山川コーチは、ゆっくり時間をかけて読み、「中学生とは思えない文章ですね」と、武田さんに笑顔で話しかけます。
「そうでしょう?それと、気の強さというか気丈さは、私譲りでしょうかねぇ・・」と、笑って携帯をしまわれました。

「どこかで、母親として受験生とどう向き合うか、腹をくくってなかったことを悔いる気持ちがあるのかもしれない。それが、自己弁護になったり、後悔になったり。まだまだ複雑ではあるけれども、私らしく自分満足のために仕事させてと、宣言してみます。私が私らしく自分のために働くことが、みんなの幸せを後押しするということを理解してもらえるよう、後悔しないようにします!」
と、山川コーチに宣言した武田さん。

武田さんは「息子と親という関係のコーチングって難しいですね」というクライアントの言葉にうなづくばかりであったこれまでとは違い、一人の人間として向き合えば、親子間のコーチングが成り立つこと、話すことで自分の気持ちを確認したり、次の行動を計画出来ること、宣言することの大切さなどを、改めて学習する良いきっかけとなったと付け加えられました。

また、コーチングという仕事を通して、支援しているはずのクライアントから、多くの励ましや思いやりある言葉をかけていただけたことに、改めてこれまでの自分の仕事振りを振り返り、「全力投球してきたこれまでの私へのご褒美だね」と、満面の笑みを浮かべた武田さん。
三年後は、高校と大学のW受験を控え、ひそやかに心を締めなおしたようでした。

山川コーチはこのセッションにおいて、徹底した傾聴に努めました。話したいことを自由に話してもらう。お地蔵さんのようにただ黙って聞いているのではなく、命ある人として自分の気持ちを素直に表しながら、クライアントの話を徹底して聴くということの大切さを皆さんも改めて考えてみてください。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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エデュケーショナル・コーチング~子育てコーチングセミナーに参加して~~子どもとのコミュニケーションを見直す~


小学六年生をもつお母さんの悩みは、学期ごとにある、担任教諭との面談で、子供の生活態度について常に注意されることでした。自分の子供には協調性が欠けていると言われることでした。そんな時、インターネットでたまたま見かけた子育てコーチングの無料セミナーにに参加することによって子供とのコミュニケーションがいかに大切で、どんなにか難しいことなのかを、改めて感じたというお母さんのコーチングとの出会いです。
セミナー当日、会場に向かう足取りは、どんどん重くなっていたようで、開始ぎりぎりに飛び込んだということもあり、息を整えるのが精一杯のうちに、スタートしました。参加者は一様にモチベーションが高そうで、場違いなところに来たなと思ったお母さんでしたが、コーチの笑顔に救われる思いを感じたので、どきどきしながらも席を立たずにいられたそうです。
セミナーは、ただ黙って座って聴いてれば良いというものではなく、「今、何を感じましたか? あなたならどうしますか?」とコーチに質問されたり、ワークショップが中心だったりして進むようで、〝コーチングって何?〟ということ
をコーチが説明され、参加者の中でも経験がある受講者との模擬コーチングを見せていただいた後、参加者同士がペアになってコーチングを楽しみましょうという時間になったのです。
お母さんは、参加したことを後悔する気持ちでいっぱいで、その場にいたたまれなくなって今にも席を立とうと、そわそわと落ち着かなくなりました。
そんなお母さんの気持ちを察してか、本間コーチが「よろしければ、私とペアになっていただけますか?」と、声を掛けてきました。
お母さんは、とっさに、「コーチとペアになったら、みんなの前でしなければならないのでは?」という思いを抱き、「申し訳ないんですけれど、私、途中で帰らなければならないので・・・」と、やんわりと断りました。
しかし、本間コーチは、「あら、お忙しい中お越しくださったんですね、ありがとうございます」と、笑顔でお礼を言ってくれるのです。お母さんは、嘘をついたこともあり、ますますいたたまれなくなって、「あの、皆さんの前で、模範演技をするんでしょうか?」と、聴いてみました。
本間コーチは、「いえいえ、あ、そうですね。言葉が足りませんでした。模範のロールプレイングはいたしません。安心してくださいね」と、どこまでもお母さんの気持ちがロールプレイングをやってみようかしらと前向きになるように、配慮しながらやんわりと迫ってきます。
お母さんは、少しだけなら体験してみようと思い「では、ちょっとだけ・・・」と、下を向いたまま答えコーチのお誘いを受け入れたそうです。
自分の優柔不断さで皆さんをお待たせしてしまったことが情けなくなり、お母さんは小さくなっていました。「私はいつもそうだ。自分の不得意なことから逃げようとするし、進んで参加しようと思って申し込んだのに、こういう結果になってしまう」お母さんは、すっかり暗い顔になって自己嫌悪におちいってしまいました。
「では皆さん、十分後、相手から満足の拍手をもらうという目標に向かって、コーチングをはじめましょう。楽しんでください。お願いします」と、声を掛けました。
そして、お母さんにも「どんなことでもいいんですよ。あなたが今、率直に話したいと思うこと、お話しください。ここで話されたことは、決して、あなたの許可なく勝手に皆さんに話すことはありません。安心してくださいね」と、穏やかに促されました。
お母さんは、ほんとうに迷いました。子どものことを話したい、でも、ほんとうのことを言うのは、恥ずかしいと思ったのです。
躊躇しているのがわかったのか、本間コーチは、「話していいかどうか?ためらっておられるのですね?」と、質問をしてきました。お母さんは、仕方なくうなずきました。
「あなたが抱えている問題を、私くに話しても良いと自分に許可を与えるためには、どんな条件が必要ですか?」と、重ねての質問です。
「うん・・・、私の悩みが恥ずかしいことだから言えません」お母さんは、本間コーチの質問の答えにはならないことを感じながら、あえて、自分の言いたいことだけを返事しました。
「ありがとうございます。やっと自分の言葉で思いを表現してくださいましたね」と、コーチはにっこり微笑むのです。
「あの、私の答えは、本間さんの質問の答えではなかったように思いますが・・」と、お母さんは率直に伝えました。
本間コーチはそれでも更に、お母さんを褒めるのです。「いえいえ、そんなことはありませんよ。どんなことでもいいですよと申し上げましたでしょう?」
「ええ、そうですけど・・」お母さんは、どんなことを言っても、本間コーチが否定しないことに気づき、受け入れてもらっているというか、居心地がいいというか、包み込まれているような感覚に、すこしづつ、重い心と口を開いていきました。
十分後、お母さんは、コーチがタイマーを止めることでようやく口を閉じるほど、熱心に「子どもに協調性がないかもしれず、将来を不安に思っていることや子育てを難しいと感じていること」を本間コーチに伝えようと、必死で話をしている自分に気づきました。
ロールプレイングは、先ほど聴き役だった人が話し役になると、役割を変えて再度十分間繰り返して行われました。お母さんも、先ほどの本間コーチをまねして、汗をかきながら、必死で聴きました。
八分ほど経過したころでしょうか?「ほんとうは、私が聴かれる役だから、質問するのはルール違反ですが、役得ということにしましょう。最後に質問してもいいですか?」と、聴き役も十分体験させていただいた後、お母さんは、本間コーチから質問を受けました。「あなたは、日ごろお子さんの話を、何かをしながらついでに聴いているようなことはないですか、真剣に聴いてあげたことがないのではないですか?」
これぞまさしく、お母さんがロールプレイングをしながら先ほどから感じていたことでした。そのことを見抜いたかの様なコーチの質問に、お母さんは思わず正直に答えました。
「はい。私は自分のペースで生活していたようです、子どもの話も、うわべでだけ聴いていました。こんな調子で子どもにだけ協調性を求めるのは、かわいそうだと今感じていました」
お母さんは、二時間のコーチングセミナーを十分に楽しみ、帰り際に、本間コーチに歩み寄り、「コーチとペアになることが不安で、時間がない、途中で失礼するなどと嘘をつきました。ごめんなさいね。今ではこのコーチングセミナーに参加させていただき、コーチとロールプレイングが出来てほんとうによかったと思っています」と謝りながらお礼を言いました。「私のほうこそ無理にロールプレイングのお誘いしてごめんなさい。少しでもコーチングを楽しんでいただけたでしょうか」コーチにそう言われて、お母さんはスッキリ心の中の荷物を全部降ろしたかのような表情で、会場を後にしました。
コーチングの魅力のひとつに、心の中を整理するということがあります。誰かにゆっくり話を聴いてもらうだけで、心の中がずいぶん整理出来ることを、お母さんは身をもって経験したようです。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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