コーチング事例集:コーチ養成講座で実践的なコーチング技能と資格取得を。セミナー、研修、コーチングであなたの課題を解決

コーチング事例集

受験発表を終えた長男とのコーチング~受験失敗を前向きにさせた母親のコーチング効果~


「今年の春は、花の足が速い気配で始まりましたが、桜の開花は思ったより早くなく、例年より少し早い程度でしたね」アイスブレークのつもりで軽く話し始めた山川コーチでしたが、
「我が家の桜は三年後まで咲く気配なしになりました」と、返してきた武田さんの言葉に、胸が縮む思いをし、一瞬目頭が熱くなりました。
武田さんは、受験発表を終えた長男とのコーチングの様子を山川コーチとのテーマに選びました。
「まぁ、この春ほど、どきどきする時間を過ごした春はないですねぇ・・」
「ご長男、受験でしたねぇ。結果発表はいかがでしたか?」

「桜は咲かず。一歩及ばずでした」
意外なほどあっさりおっしゃる武田さんの言葉に、一瞬言葉を失ったのは、むしろ山川コーチのほうでした。

「残念でしたねぇ」山川コーチが見つけた言葉は短いものでしたが、四ヶ月間、コーチングを通して一緒に戦ったような気持ちの山川コーチも、本当に残念な気持ちが湧き上がり、自然に言葉になって自分の思いを伝えました。
その気持ちが伝わったのか「ありがとうございました。この四ヶ月の中でのセッションは、受験する長男との付き合い方をテーマにしていただきましたから、コーチと一緒に戦ったような感じですね。
我が家の空気は、終始、受験でぴりぴりしたものがなく、私も普段と変わらないペースで仕事を中心とした生活でしたし。発表の日も仕事をしていましたので、合格の通知は、メールで入れておいてと、長男と約束していたくらいだったんですね。それでも、さすがに気になって、仕事中にメールの確認を許可いただき、たった一言、『落ちた』というメールを読んだときは、さすがに動揺しましたねぇ。たった一言の短い言葉にこめられた長男の気持ちを思うと、母親として何とかしてやれなかったのか悔やみました。
よもやという油断があったんでしょうね。もともと、ボーダーラインぎりぎりへの挑戦であったわけですから、どこかでプレッシャーをかけ
たほうが良かったのかもしれません。母親として、どうこの受験生と向き合うか、受験期の手綱を引くべきだったのか?後悔するんですねぇ。仕事先の皆さんも同じように受験をさせた父親が大勢いらっしゃったので、皆さんに気を遣わせてしまいました。仕事に私情を挟んだのは、初めてでした。最初で最後の経験かもしれません」

さすがに、半日という時間に気持ちが整理出来ていたのか、武田さんは落ち着いて話します。
山川コーチは、そんな武田さんのそっと吐き出される言葉をじっくり受け止めます。
「ところがね、長男に電話をして、とりあえず自宅に戻ることを確認すると、不思議に落ち着いてね。
『気をつけて帰ってね』と、穏やかに沈まず伝えることが出来たんですよね。セルフコーチングして、気持ちを落ち着かせたのも功を奏するんでしょうが、何より、これは、長男の問題であり、支援者である私が動揺したら、余計に気持ちを沈ませると考えたんですね。
さすがに、電話の向こうの声は涙声でしたが、つらいだろうし悔しいはずなのに気丈に振舞っている様子に胸を打たれるなど、何度も私の気持ちもくじけそうになるんですよね。でも、その都度、大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせ、仕事を続けました。昼の休憩は、食欲の塊のような私もさすがに食べたいという気持ちが湧かず、その代わり、担任の先生の電話や、塾からのお詫びの電話などを受け、先生方と話すことによって、次第に気持ちを落ち着けることが出来、恐らく、他の家庭のお母さんとは違う、冷静な対応が出来たと思います。

長男と向き合いなおすにも時間はさほど長くかからず、1学期の学校管理ミスによる不幸な事故によって負った骨折と手術のこと、三年生最後のクラブ活動を断念し最高の応援者として、松葉杖をついてグランドに病院から駆けつけたこと。夏休み以降の学習中心の生活のこと、秋以降の家庭教師と塾による家庭学習の強化など、様々な過程をふりかえりながら、ここまでの努力がいつ実を結び大輪の花を咲かせるかとても楽しみだという、将来に向けて引き続き支援するよという親の気持ちを素直に伝え、長男の気持ちを前向きにするセッションにさほど時間をかけることもなく、お互いの協力を感謝しあう、評価感謝の時間を持つことが出来たことに、別の意味で、長男の成長を感じ、熱くこみ上げるものを堪えることが出来ませんでしたねぇ。
悔しいのは当たり前なんだけど、今回のことを通してまた一つ成長した長男を感じることが出来、これも長男に与えられた大きな試練、これを乗り越えていってこそ私の長男だと思っています。すこし強がりかもしれませんが、そう思うようにしています」

ここまで一気に話した武田さん、さすがに感情が高まったのか、眼にうっすらと涙がにじみ言葉に詰まって黙り込んでしまいました。山川コーチはその沈黙の時間をじっと待つという協力をしました。
「長男が信頼するある会社の社長にあてたメール、読んでいただけますか?親ばかだけど、嬉しくってね。山川さんにぜひ、読んでいただきたいんですよ」
そういって武田さんは、山川コーチに携帯電話のメールを差し出しました。
山川コーチは、ゆっくり時間をかけて読み、「中学生とは思えない文章ですね」と、武田さんに笑顔で話しかけます。
「そうでしょう?それと、気の強さというか気丈さは、私譲りでしょうかねぇ・・」と、笑って携帯をしまわれました。

「どこかで、母親として受験生とどう向き合うか、腹をくくってなかったことを悔いる気持ちがあるのかもしれない。それが、自己弁護になったり、後悔になったり。まだまだ複雑ではあるけれども、私らしく自分満足のために仕事させてと、宣言してみます。私が私らしく自分のために働くことが、みんなの幸せを後押しするということを理解してもらえるよう、後悔しないようにします!」
と、山川コーチに宣言した武田さん。

武田さんは「息子と親という関係のコーチングって難しいですね」というクライアントの言葉にうなづくばかりであったこれまでとは違い、一人の人間として向き合えば、親子間のコーチングが成り立つこと、話すことで自分の気持ちを確認したり、次の行動を計画出来ること、宣言することの大切さなどを、改めて学習する良いきっかけとなったと付け加えられました。

また、コーチングという仕事を通して、支援しているはずのクライアントから、多くの励ましや思いやりある言葉をかけていただけたことに、改めてこれまでの自分の仕事振りを振り返り、「全力投球してきたこれまでの私へのご褒美だね」と、満面の笑みを浮かべた武田さん。
三年後は、高校と大学のW受験を控え、ひそやかに心を締めなおしたようでした。

山川コーチはこのセッションにおいて、徹底した傾聴に努めました。話したいことを自由に話してもらう。お地蔵さんのようにただ黙って聞いているのではなく、命ある人として自分の気持ちを素直に表しながら、クライアントの話を徹底して聴くということの大切さを皆さんも改めて考えてみてください。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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エデュケーショナル・コーチング~子育てコーチングセミナーに参加して~~子どもとのコミュニケーションを見直す~


小学六年生をもつお母さんの悩みは、学期ごとにある、担任教諭との面談で、子供の生活態度について常に注意されることでした。自分の子供には協調性が欠けていると言われることでした。そんな時、インターネットでたまたま見かけた子育てコーチングの無料セミナーにに参加することによって子供とのコミュニケーションがいかに大切で、どんなにか難しいことなのかを、改めて感じたというお母さんのコーチングとの出会いです。
セミナー当日、会場に向かう足取りは、どんどん重くなっていたようで、開始ぎりぎりに飛び込んだということもあり、息を整えるのが精一杯のうちに、スタートしました。参加者は一様にモチベーションが高そうで、場違いなところに来たなと思ったお母さんでしたが、コーチの笑顔に救われる思いを感じたので、どきどきしながらも席を立たずにいられたそうです。
セミナーは、ただ黙って座って聴いてれば良いというものではなく、「今、何を感じましたか? あなたならどうしますか?」とコーチに質問されたり、ワークショップが中心だったりして進むようで、〝コーチングって何?〟ということ
をコーチが説明され、参加者の中でも経験がある受講者との模擬コーチングを見せていただいた後、参加者同士がペアになってコーチングを楽しみましょうという時間になったのです。
お母さんは、参加したことを後悔する気持ちでいっぱいで、その場にいたたまれなくなって今にも席を立とうと、そわそわと落ち着かなくなりました。
そんなお母さんの気持ちを察してか、本間コーチが「よろしければ、私とペアになっていただけますか?」と、声を掛けてきました。
お母さんは、とっさに、「コーチとペアになったら、みんなの前でしなければならないのでは?」という思いを抱き、「申し訳ないんですけれど、私、途中で帰らなければならないので・・・」と、やんわりと断りました。
しかし、本間コーチは、「あら、お忙しい中お越しくださったんですね、ありがとうございます」と、笑顔でお礼を言ってくれるのです。お母さんは、嘘をついたこともあり、ますますいたたまれなくなって、「あの、皆さんの前で、模範演技をするんでしょうか?」と、聴いてみました。
本間コーチは、「いえいえ、あ、そうですね。言葉が足りませんでした。模範のロールプレイングはいたしません。安心してくださいね」と、どこまでもお母さんの気持ちがロールプレイングをやってみようかしらと前向きになるように、配慮しながらやんわりと迫ってきます。
お母さんは、少しだけなら体験してみようと思い「では、ちょっとだけ・・・」と、下を向いたまま答えコーチのお誘いを受け入れたそうです。
自分の優柔不断さで皆さんをお待たせしてしまったことが情けなくなり、お母さんは小さくなっていました。「私はいつもそうだ。自分の不得意なことから逃げようとするし、進んで参加しようと思って申し込んだのに、こういう結果になってしまう」お母さんは、すっかり暗い顔になって自己嫌悪におちいってしまいました。
「では皆さん、十分後、相手から満足の拍手をもらうという目標に向かって、コーチングをはじめましょう。楽しんでください。お願いします」と、声を掛けました。
そして、お母さんにも「どんなことでもいいんですよ。あなたが今、率直に話したいと思うこと、お話しください。ここで話されたことは、決して、あなたの許可なく勝手に皆さんに話すことはありません。安心してくださいね」と、穏やかに促されました。
お母さんは、ほんとうに迷いました。子どものことを話したい、でも、ほんとうのことを言うのは、恥ずかしいと思ったのです。
躊躇しているのがわかったのか、本間コーチは、「話していいかどうか?ためらっておられるのですね?」と、質問をしてきました。お母さんは、仕方なくうなずきました。
「あなたが抱えている問題を、私くに話しても良いと自分に許可を与えるためには、どんな条件が必要ですか?」と、重ねての質問です。
「うん・・・、私の悩みが恥ずかしいことだから言えません」お母さんは、本間コーチの質問の答えにはならないことを感じながら、あえて、自分の言いたいことだけを返事しました。
「ありがとうございます。やっと自分の言葉で思いを表現してくださいましたね」と、コーチはにっこり微笑むのです。
「あの、私の答えは、本間さんの質問の答えではなかったように思いますが・・」と、お母さんは率直に伝えました。
本間コーチはそれでも更に、お母さんを褒めるのです。「いえいえ、そんなことはありませんよ。どんなことでもいいですよと申し上げましたでしょう?」
「ええ、そうですけど・・」お母さんは、どんなことを言っても、本間コーチが否定しないことに気づき、受け入れてもらっているというか、居心地がいいというか、包み込まれているような感覚に、すこしづつ、重い心と口を開いていきました。
十分後、お母さんは、コーチがタイマーを止めることでようやく口を閉じるほど、熱心に「子どもに協調性がないかもしれず、将来を不安に思っていることや子育てを難しいと感じていること」を本間コーチに伝えようと、必死で話をしている自分に気づきました。
ロールプレイングは、先ほど聴き役だった人が話し役になると、役割を変えて再度十分間繰り返して行われました。お母さんも、先ほどの本間コーチをまねして、汗をかきながら、必死で聴きました。
八分ほど経過したころでしょうか?「ほんとうは、私が聴かれる役だから、質問するのはルール違反ですが、役得ということにしましょう。最後に質問してもいいですか?」と、聴き役も十分体験させていただいた後、お母さんは、本間コーチから質問を受けました。「あなたは、日ごろお子さんの話を、何かをしながらついでに聴いているようなことはないですか、真剣に聴いてあげたことがないのではないですか?」
これぞまさしく、お母さんがロールプレイングをしながら先ほどから感じていたことでした。そのことを見抜いたかの様なコーチの質問に、お母さんは思わず正直に答えました。
「はい。私は自分のペースで生活していたようです、子どもの話も、うわべでだけ聴いていました。こんな調子で子どもにだけ協調性を求めるのは、かわいそうだと今感じていました」
お母さんは、二時間のコーチングセミナーを十分に楽しみ、帰り際に、本間コーチに歩み寄り、「コーチとペアになることが不安で、時間がない、途中で失礼するなどと嘘をつきました。ごめんなさいね。今ではこのコーチングセミナーに参加させていただき、コーチとロールプレイングが出来てほんとうによかったと思っています」と謝りながらお礼を言いました。「私のほうこそ無理にロールプレイングのお誘いしてごめんなさい。少しでもコーチングを楽しんでいただけたでしょうか」コーチにそう言われて、お母さんはスッキリ心の中の荷物を全部降ろしたかのような表情で、会場を後にしました。
コーチングの魅力のひとつに、心の中を整理するということがあります。誰かにゆっくり話を聴いてもらうだけで、心の中がずいぶん整理出来ることを、お母さんは身をもって経験したようです。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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子育てコーチング、リワークコーチング 専業主婦恵子さんの悩み~子育てと、仕事復帰を両立させたい気持ちの整理~


〝子育ての卒業は子供がいくつになったときかしら?〟
ふと、恵子さんは考えました。
そろそろ家の中にいるより外に出たい。仕事をしたい。社会に戻りたい。
そんな気持ちが自然と胸の中に広がってきたのは、長男の優太が小学三年生になり、学校からの帰宅時間も遅くなり、帰ってきても自分のことが一人で出来るようになり、塾にも一人で行き、お友達との遊びも活発になってきた頃でした。
でも、結婚を契機にそれまで勤めていた会社を辞めて十年、雄太が生まれてからの八年は子育てに専念していた。いまさらこんな私を受け入れてくれる職場があるのだろうか?
自分一人で考えていても始まらないと思った恵子さんは、PTA活動を通して仲良くなった浜本さんに、思い切って打ち明けました。
浜本さんは、子育てと仕事を両立させているとてもエネルギッシュな人で、PTAでも積極的に発言し、だれからも羨望のまなざしで見られている反面、浜本さんは、専業主婦にはない仕事をしている女性特有の自信に満ち溢れており、近寄りがたい独特の雰囲気をかもし出すことから、専業主婦のお母さんがたには彼女のようになれないという僻みを感じている人も多く、PTA活動の中では浮いた特別な存在でした。
普段の活動後は、同じ専業主婦仲間とお茶をして、愚痴を話し合い憂さを晴らしている恵子さんでしたが、それはそれで楽しい時間だけど、同じ境遇の人と会話をしていても同じようなことしか聞けないわけで、それではダメだと思って、子育てと仕事を両立させている浜本さんと話をしてみることにしたわけです。

「浜本さん、ちょっとお話してもいいですか?お忙しかったら、またにしますけど・・」
おどおどしながら、恵子さんは思い切って浜本さんに声をかけました。
「あら、恵子さん、お疲れ様です。校庭の草取りって大変よね。一生懸命ただ黙々と草むしりするだけでしょ。本当に疲れちゃうわよね。だから私ねぇ、実は草取りって好きなの。何にも考えないで、ただただ、草を抜いているとね、忙しいこともわずらわしいことも、全部忘れられるじゃない?普段は何かと忙しくしていてこういう時間、あんまり持てないでしょう。
こういう時間って貴重なのよね」と、心のうちを明かしてくれました。

「あ・・ええ、そうですね」浜本さんから予想外の言葉を聞いて恵子さんは、とっさにどう答えてよいかわからずに、浜本さんの言葉を受け止めるだけで精一杯でした。
「・・・・・・・・・・・・・・」恵子さんは次の言葉が出せませんでした。

「ところで、恵子さん、どうしたの? お話ってなぁに? 悩んでいることがあって何か話したいんだろうなとは思うんだけど、それは深刻な問題なのかしら?」
浜本さんは、恵子さんの表情を見て、恵子さんが悩みを思っていることを見抜いたようです。恵子さんは、自分に悩みがあることを見抜いた浜本さんに対して驚きを感じるとともに、警戒心もでて、何でもかんでも話しして大丈夫だろうか、とっさに感じたそうです。

「浜本さんは、子育てとお仕事の両方をされていますよね。浜本さんは、お子さんがいくつのときからお仕事始められたんですか?」
「長男が五歳、次男は二歳だったわ。うちは自営業なのよ。夫が常に店というか家にいるわけよ、だから夫も子育てに直接関われるわけよね、私が外で働くためにはとてもラッキーだったわよね。もっとも、そのためにはそれまで以上に子供たちの世話をするという覚悟が必要なのよ。外にでるのだから、当然に子供達に関わる時間は短くなるわけだけど、そのぶん効率よくというか密度を高めるというか、時間がないのだから子供達の世話は犠牲にしてもいいという考えでは、外にでて働くということはやめたほうがいいわよ。それは夫の協力も必要だわ。食事の支度も、手が空いているほうがすればいいでしょ?っていうことを理解させる夫育てには、七年もかかっちゃいましたけどね。こっちのほうが大変だったわ(笑)」と、浜本さんは何でもないことのようににこやかに答えてくれました。

「恵子さん、働こうかどうしようか、迷っていらっしゃるの?」
「ええ、どうしようかと思って。このごろでは、三時半近くまで子供は戻ってこないし、戻ってきてもお友達と遊びに行っちゃうし。自分のことは自分で出来るようになっているんです。塾も、一人で行けるようになったし。なんか、取り残されているような気もするし、でも、まだまだ子育てに専念したほうがいいようにも思うし・・・」

「ねぇ、恵子さん、あなたが働きに行くと、どんなことを得られるの?」
「え?得られるもの?多少、自由になるお金かなぁ?」

「それだけ?」
「う~ん・・・。働いているという充実感?かな・・」

恵子さんは、浜本さんの意外な質問に、「自分は何故働きたいんだろうか。何のために働こうとしているんだろうか」そんなに深く考えたこともなかった自分の気持ちを整理しなければならないと、とっさに感じました。
その後も、浜本さんは、恵子さんがいつも漠然と考えていることが分かっているとでもいうような態度で接してくれました。恵子さんが本当はこのことを言いたかったけれども、自分でも気づかず誰も話題にしてくれないような恵子さんの気持ちの奥深いところにある本当の恵子さん考えをじっくり聞いてくれました。

「結局、私は自分の人生じゃなくて、人の人生に関わることで自分の人生の充実感を得ようとしていた気がする・・」
回りを見回してみると二人以外は誰もいません。二人は、とうのむかしに解散の指示が出されていたことにも気づかないくらい、じっくり話し込んでいました。

「こんなに人に自分の感情や考えを話したのは初めて。すっごくすっきりしたわ。浜本さん、聞いてくれてありがとう。ところで、浜本さんは、保険会社で働いていたんですよね?人材って募集していませんか?」と恵子さんは、積極的な姿勢で、浜本さんに就職先の情報を得ようとし始めました。
そんな恵子さんに、「恵子さん、就職先は、あなたがほんとうに何がしたいのか、どんな人生を送りたいのか、じっくり考えてから選択する時間を持つことにするのでは、間に合わない?」と、最後の質問を投げかけました。
恵子さんは、この質問に対し、「そうですね。あせっちゃいけないのよね」と、素直に答えました。

「もう少し考えてみます。今日はどうもありがとうございました」
恵子さんは、いまさらながら浜本さんのすごさに驚きながら、自分の気持ちを整理してみることにしました。
浜本さんは、キャリア・カウンセラーでもあり、コーチングのキャリア専門コーチとして活躍していることを、後日、恵子さんに明かされたそうです。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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ボタンの掛け違った親友との仲直り~仲たがいした親友とのミスコミュニケーション回復を目指す~


とても仲のよかった友達が、ある日突然、目もあわせず、口も利いてくれなくなってしまったら、あなたならどうしますか?
ちょっとしたボタンの掛け違えで起きたコミュニケーションエラーについて考えましょう。
幼馴染で、結婚したあとも、一つしか町内が離れていないというロケーションで暮らす、麻美さんと真由子さん。誰はばかることなく「親友」と言って紹介しあう仲良しでした。
ところが、ある朝、麻美さんが中学校のPTA委員会に出来かけようとして、道ですれ違った際、真由子さに知らん顔をされました。どうしたのかしらと知らん顔をされたことを気にしながらも、時間に遅れそうで学校に向かったそうです。
1週間ほどたった後、麻美さんは真由子さんをお茶に誘おうと電話をしたところ、以外にも真由子さんから「もう二度と電話をしないで。あなたを見損なったわ」と、冷たく言われてしまったそうです。
何がなにやら理解出来ない麻美さんは、真由子さんとの共通の友達に相談したところ、子供たち同士の問題が事の発端だったことを知らされました。
“そういえば、隆(長男)にそんなようなことを言った気がする・・・”という記憶を呼び覚ましながら、どうしたら誤解が解けるのかをテーマに、コーチとのセッションを希望しました。
「真由子さんとは、その後、まったく話すチャンスは見つけられないのでしょうか?」
「はい、私たちはホントにこれまで仲がよかったので、たとえば、スーパーに行く時間とか、塾の送り迎えの時間とか、お互いの行動が予測出来るんです。だから、それを外すことも簡単で、なかなか偶然を装って出会うことも出来ず・・・」

「ほんとに困っているんですネェ」
「ええ、真由子がどんな経緯で誤解したかはわかりませんが、それはホントに誤解なんです。だから、早く解いて、元のように双子姉妹といわれるような仲良しに戻りたいんです」

「戻れるといいですね。直接話すことが出来ないということですが、だれか二人の間をつないでくれるような友達はいらっしゃらないんですか?」
「共通の友達はいるんですが、直接話したほうがいい。更に誤解させるようなことになっては申し訳ないといわれて、だれも間に入ろうとしないんです」

「そういう考えもありますよね。メールは?」
「メールは、何度か送ってみましたが、返事はありません。届いているのかどうかはわかりません。まさか、受信拒否の設定にはなっていないと思いますが・・・」

「彼女と元のように仲良くなれるとすると、麻美さんは、どういった点でメリットがあるんですか?」
「メリットと言うか・・・、仲良くなれたら、いろんなことを相談出来ると思います。これまでも、お互いの愚痴を聞きあったり、子育ての相談をしたり。夫への不満を聞いてもらったり。とにかく、価値感が同じだから、話すだけで心が温かくなる存在なんです。とても大切な人なんです」

「改めて、真由子さんの存在が重要であることを感じたわけですね」
「ええ・・・」

「真由子さんはどう思っているのかしら?」
「それがわからなくて。私が隆に言った言葉を、どうしてそんなふうに取り違えて聴いたのか・・・。由樹(真由子さんの次男)君が、真由子さんに何を言ったのかもわからないし」

「お子さん同士が何を伝え合ったか、それを知りたいと思うのですか?」
「ええ、そうじゃないと、誤解は解けないから・」

「表現力のない中学生の言葉が、お互いの誤解を生んだんでしょうか?」
「え??」

「お互いに、すこしずつ、これまでの間にズレが発生していたのではないでしょうか?」
「ん・・・・・」

「何気ないたった一言で仲たがいをするようになったとは考えられない気もしますが、いかがでしょうか?」
「そうでしょうか?」

「お互いの関係を修復するという考え方もありますが、新たに真由子さんと友達になりたいと、スタートに戻るという考え方もあると思います。麻美さんが友達を作ろうとするとき、どんなことを努力しますか?」

「そうですね・・・私という人を理解してもらうために、まず、自分のことを話します」
「なるほど、自己紹介をするということでしょうか?」

「はい」
「どんな自己紹介をするの?」

「学歴とか、仕事の経験とか、子供のこととか、夫の職業とか・・」
「そういう情報を伝えたとして、相手はどんなふうに思うかしら?」

「え?より深く私を理解してくれるんじゃないでしょうか?」
「麻美さんと友達になりたくて、心の距離を近づけるのに、学歴や仕事の経験、子供のこと、夫の職業とかは重要なことかしら?」

「ん・・・」
「麻美さんがどんな趣味を持っているとか、どんな意見を持っているかとか、今どんなことに一所懸命になっているかとか、そういった情報も必要なんじゃないかしら?」

「そうですねぇ・・・」
「真由子さんに、誤解があるようなので、私の意見も聞いて欲しいけど、あなたの意見を教えて?と、ストレートに誘ってみたらいかがですか?」

「でも・・・」
「仲良く過ごしたいんでしょ?」
「それはもちろん・・・」

「もちろんなんだけど、勇気が出ない?」
「はい・・・・」

「勇気がでないのはどんなことを考えたから?」
「断られたり、嫌な顔をされたくないし・・・・」

「断られて、失うものはありますか?」
「・・・・」

「今、既に、真由子さんとは話せない状態なんでしょう?」
「はい」

「それなら、断られても、状態が変わらないだけで、希望がなくなってしまうわけじゃないでしょう?」
「それは、そうですけど・・・・」

「繰り返し、麻美さんは真由子さんと話したいと思っているということを、自分の言葉で訴えてみてはいかがですか?」
「ふう・・・・」

セッションは、このあと、麻美さんの沈黙の時間が長くなったので、中断しました。
コーチにとっては勇気の出せる問題であっても、クライアントにはそんなに簡単でないことはたくさんあります。
障害をどう乗り越えるか、コーチはその方法を考えたり、計画を立てる支援したりすることは出来ますが、一番大切な勇気を出すことを、直接支援することは難しいことです。
何がきっかけになるのかわかりませんが、こういうケースでは、辛抱強くクライアントの気づきを、寄り添いながら待つことも大切です。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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姉妹で始めたカフェ お姉さんの悩み~共同経営者とのコミュニケーションを回復させるためのセッション~


美人姉妹と評判のカフェが出来て半年。
都会ではすっかり定着しているカフェですが、地方都市ではまだ馴染まれず、経営に対する理想と現実のギャップに疲れてきたようです。
今日は、妹の雅恵さんが僻みっぽく、お客さまについて何かと不平や不満をこぼすし、このごろでは、お客様がお帰りになるとすぐ後にでさえ、お客様の悪口を言うようになり、忘れ物でもして引き換えされたらどうしようか?と、はらはらしているお姉さんの悠美さんとのセッションです。
「ちょっと緊張してますか?」
「はい、妹と違って、私はあまり話すのが得意ではないので、上手く話せるかどうか・・・」

「大丈夫ですよ。上手く話す必要はありません・・といいたいところですが、上手いか下手かを決めるのは、自分自身であって私ではありません。つまり、悠美さんが話したいことが話せて上手く出来たと思えば、それで満点。でも、たとえ上手く自分の気持ちが話せないなと感じても、私がお伺いしたいことや、悠美さんとおなじ気持ちになりたいことがあれば、何度も繰り返してお尋ねしますから大丈夫です。落ち着いていただきたいと思います」
「はい、わかりました。今日のテーマは、妹と今後どうやって接していいかということにしたいんですが、よろしいでしょうか?」

「はい、もちろんです。妹さんと今後どう接したらいいかということですね?一緒にお店をなさっているのですから、一日中顔を合わせているんですものね。お話が出来ないと困ることはたくさんありますね?」
「はい、たくさんあります。特に、厨房は私が取り仕切りますが、お客様のことやメニューを決めるのは彼女ですから、何かと話をしなければいけないことが多いんです。でも、今のように、お客様の悪口に同調したり、近所の方とのお付き合いの愚痴を聞かされるばかりでは・・・」

「そうですね。それは辛いですね。お客様の悪口というのは、どんな感じなんでしょうか?」
「そうですねぇ・・たとえば、ランチの時間は、少しでも早くお客様を入れ替えたいのが、経営者としての気持ちですが、女性のお客様はそういうわけにはいきません。『もう、長話して・・・次のお客断らなきゃいかんぶん、請求したろかなぁ』とかっていう感じなんです。心苦しいというか、ハラハラしますね」

「なるほどね。経営者としては大切な要素ではありますけれどもね。回転率が下がるということはね」
「言い方もあるのかな?って思うんです。それに、親しいお客様にそれを口にして言ってしまうので、お客様からお客様に漏れやしないかと・・」

「お気詰まりですね」
「ご近所の人のことに関しては、皆がどんなにいい人だねって言ってても、欠点というか、悪口を言うんです。だんだん、妹の顔を見るのも嫌になってきてしまって・・」

「妹さんには、どうなってもらいたいんですか」
「店を開いたときに、二人で話したお店にするために、ちゃんとやってもらいたいんです」

「悠美さんは、どんなお店にしたいんですか?」
「そうですね、来店者数を増やすことも重要ですが、根強いファンが出来る店にしたいんです」

「そのためには?」
「そのためには、入りやすさや、居心地の良さをアピールしたいんです」

「そのためには?」
「うん・・・・駐車場の問題は重要な要素の一つでしょうし」

「そのほかに大切なことを三つ考えてみましょうか?」
「三つもですか?・・・あるかなぁ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ひとつ、私の考えを聞いていただけますか?」

「はい・・はい、お願いします」
「お二人のわだかまりを取ることによって、店内の雰囲気を明るくすることです」

「え?」
「おそらく、客足が落ちていると思うんです。これには根拠はありません。ですが、人間、自分のお金を払って食事やお茶をするのに、居心地の悪いところは足を向けません。このごろ、お二人がそれぞれお互いに言いたいことがあるのに、言わずにおなかの中に溜め込んでいるぎすぎすした関係の店が、居心地がいいと思いません。ということは、客足も鈍っているはずです」

「たしかに、このところ、売り上げは確実に落ちていますが・・・」
「売り上げが落ちているのは、誰の責任でしょうか」

「よく分かりません。妹の態度が影響しているのかもしれないし・・・私には和からないんです。どうして妹があんな態度をとるようになったのか・・・」
「お二人のおなかの底に溜まっているものを出し合うだけでも、ずいぶん、ちがうんじゃないでしょうか?」

「でも・・・」
「ひとつ、提案をしてもいいですか?」

「だれか、お二人が信頼している人はいませんか?その人に間に入っていただいたらどうですか?」
「・・・うん・・・・あ、そうだ。雅恵の同級生のお姉さんで、雅恵の気性を良く知っている先輩がいます。この間、東京の勤め先を辞めて戻ってきたって、お茶を飲みに来てくれた人がいますね」

「なるほど、その人は、悠美さんも良くご存知ですか?」
「はい、私の先輩でもありますので、大丈夫です。彼女なら、上手に話しに入ってくれると思います」

「直接解決するのは、お二人ですが、解決したい問題があることを伝えるために、先輩のご協力をいただいたらどうでしょうか?」
「はい、そうします。このままじゃ、お店も立ち行かなくなってしまうし。ご近所とも上手く付き合っていけそうにないので・・・」

「不安なことがたくさんあって、大変だと思いますが、ぜひ、先輩の方のご協力をいただきましょう。ところで、その先輩を交えた雅恵さんとの話し合いをいつ、行いますか?」
「先輩の予定があるので・・・」

「悠美さん、すべての問題を解決するためには、悠美さん自身が行動を起こさなければならないのですよ? いつにしますか?」
「はい、明日、先輩の都合を聞くために、メールを打ちます。その返事次第では、すぐに逢う事が出来ると思います」

「そうですね。では、明日、メールを打ってみましょう」
「はい、ありがとうございました」

「こちらこそ、厳しいことを申し上げましたが、お許しくださいね」
「いえ、厳しいとは思えませんでした。コーチのお人柄でしょうか?私もそんなふうになりたいですね・・・」

メタコミュニケーションを図って、このセッションを締めくくった例です。
誰にも目標があり、誰にもそれを解決する能力もある。そう信じることが大切ですが、クライアントを信じることと、黙っていつも見守ることが必ずしも機能するばかりではありません。最後の壁を乗り越えさせれば、行動を起こせるというときは、背中を押すのもコーチの役割ではないでしょうか?


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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