コーチング事例集:コーチ養成講座で実践的なコーチング技能と資格取得を。セミナー、研修、コーチングであなたの課題を解決

コーチング事例集

子育てコーチング、リワークコーチング 専業主婦恵子さんの悩み~子育てと、仕事復帰を両立させたい気持ちの整理~


〝子育ての卒業は子供がいくつになったときかしら?〟
ふと、恵子さんは考えました。
そろそろ家の中にいるより外に出たい。仕事をしたい。社会に戻りたい。
そんな気持ちが自然と胸の中に広がってきたのは、長男の優太が小学三年生になり、学校からの帰宅時間も遅くなり、帰ってきても自分のことが一人で出来るようになり、塾にも一人で行き、お友達との遊びも活発になってきた頃でした。
でも、結婚を契機にそれまで勤めていた会社を辞めて十年、雄太が生まれてからの八年は子育てに専念していた。いまさらこんな私を受け入れてくれる職場があるのだろうか?
自分一人で考えていても始まらないと思った恵子さんは、PTA活動を通して仲良くなった浜本さんに、思い切って打ち明けました。
浜本さんは、子育てと仕事を両立させているとてもエネルギッシュな人で、PTAでも積極的に発言し、だれからも羨望のまなざしで見られている反面、浜本さんは、専業主婦にはない仕事をしている女性特有の自信に満ち溢れており、近寄りがたい独特の雰囲気をかもし出すことから、専業主婦のお母さんがたには彼女のようになれないという僻みを感じている人も多く、PTA活動の中では浮いた特別な存在でした。
普段の活動後は、同じ専業主婦仲間とお茶をして、愚痴を話し合い憂さを晴らしている恵子さんでしたが、それはそれで楽しい時間だけど、同じ境遇の人と会話をしていても同じようなことしか聞けないわけで、それではダメだと思って、子育てと仕事を両立させている浜本さんと話をしてみることにしたわけです。

「浜本さん、ちょっとお話してもいいですか?お忙しかったら、またにしますけど・・」
おどおどしながら、恵子さんは思い切って浜本さんに声をかけました。
「あら、恵子さん、お疲れ様です。校庭の草取りって大変よね。一生懸命ただ黙々と草むしりするだけでしょ。本当に疲れちゃうわよね。だから私ねぇ、実は草取りって好きなの。何にも考えないで、ただただ、草を抜いているとね、忙しいこともわずらわしいことも、全部忘れられるじゃない?普段は何かと忙しくしていてこういう時間、あんまり持てないでしょう。
こういう時間って貴重なのよね」と、心のうちを明かしてくれました。

「あ・・ええ、そうですね」浜本さんから予想外の言葉を聞いて恵子さんは、とっさにどう答えてよいかわからずに、浜本さんの言葉を受け止めるだけで精一杯でした。
「・・・・・・・・・・・・・・」恵子さんは次の言葉が出せませんでした。

「ところで、恵子さん、どうしたの? お話ってなぁに? 悩んでいることがあって何か話したいんだろうなとは思うんだけど、それは深刻な問題なのかしら?」
浜本さんは、恵子さんの表情を見て、恵子さんが悩みを思っていることを見抜いたようです。恵子さんは、自分に悩みがあることを見抜いた浜本さんに対して驚きを感じるとともに、警戒心もでて、何でもかんでも話しして大丈夫だろうか、とっさに感じたそうです。

「浜本さんは、子育てとお仕事の両方をされていますよね。浜本さんは、お子さんがいくつのときからお仕事始められたんですか?」
「長男が五歳、次男は二歳だったわ。うちは自営業なのよ。夫が常に店というか家にいるわけよ、だから夫も子育てに直接関われるわけよね、私が外で働くためにはとてもラッキーだったわよね。もっとも、そのためにはそれまで以上に子供たちの世話をするという覚悟が必要なのよ。外にでるのだから、当然に子供達に関わる時間は短くなるわけだけど、そのぶん効率よくというか密度を高めるというか、時間がないのだから子供達の世話は犠牲にしてもいいという考えでは、外にでて働くということはやめたほうがいいわよ。それは夫の協力も必要だわ。食事の支度も、手が空いているほうがすればいいでしょ?っていうことを理解させる夫育てには、七年もかかっちゃいましたけどね。こっちのほうが大変だったわ(笑)」と、浜本さんは何でもないことのようににこやかに答えてくれました。

「恵子さん、働こうかどうしようか、迷っていらっしゃるの?」
「ええ、どうしようかと思って。このごろでは、三時半近くまで子供は戻ってこないし、戻ってきてもお友達と遊びに行っちゃうし。自分のことは自分で出来るようになっているんです。塾も、一人で行けるようになったし。なんか、取り残されているような気もするし、でも、まだまだ子育てに専念したほうがいいようにも思うし・・・」

「ねぇ、恵子さん、あなたが働きに行くと、どんなことを得られるの?」
「え?得られるもの?多少、自由になるお金かなぁ?」

「それだけ?」
「う~ん・・・。働いているという充実感?かな・・」

恵子さんは、浜本さんの意外な質問に、「自分は何故働きたいんだろうか。何のために働こうとしているんだろうか」そんなに深く考えたこともなかった自分の気持ちを整理しなければならないと、とっさに感じました。
その後も、浜本さんは、恵子さんがいつも漠然と考えていることが分かっているとでもいうような態度で接してくれました。恵子さんが本当はこのことを言いたかったけれども、自分でも気づかず誰も話題にしてくれないような恵子さんの気持ちの奥深いところにある本当の恵子さん考えをじっくり聞いてくれました。

「結局、私は自分の人生じゃなくて、人の人生に関わることで自分の人生の充実感を得ようとしていた気がする・・」
回りを見回してみると二人以外は誰もいません。二人は、とうのむかしに解散の指示が出されていたことにも気づかないくらい、じっくり話し込んでいました。

「こんなに人に自分の感情や考えを話したのは初めて。すっごくすっきりしたわ。浜本さん、聞いてくれてありがとう。ところで、浜本さんは、保険会社で働いていたんですよね?人材って募集していませんか?」と恵子さんは、積極的な姿勢で、浜本さんに就職先の情報を得ようとし始めました。
そんな恵子さんに、「恵子さん、就職先は、あなたがほんとうに何がしたいのか、どんな人生を送りたいのか、じっくり考えてから選択する時間を持つことにするのでは、間に合わない?」と、最後の質問を投げかけました。
恵子さんは、この質問に対し、「そうですね。あせっちゃいけないのよね」と、素直に答えました。

「もう少し考えてみます。今日はどうもありがとうございました」
恵子さんは、いまさらながら浜本さんのすごさに驚きながら、自分の気持ちを整理してみることにしました。
浜本さんは、キャリア・カウンセラーでもあり、コーチングのキャリア専門コーチとして活躍していることを、後日、恵子さんに明かされたそうです。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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ボタンの掛け違った親友との仲直り~仲たがいした親友とのミスコミュニケーション回復を目指す~


とても仲のよかった友達が、ある日突然、目もあわせず、口も利いてくれなくなってしまったら、あなたならどうしますか?
ちょっとしたボタンの掛け違えで起きたコミュニケーションエラーについて考えましょう。
幼馴染で、結婚したあとも、一つしか町内が離れていないというロケーションで暮らす、麻美さんと真由子さん。誰はばかることなく「親友」と言って紹介しあう仲良しでした。
ところが、ある朝、麻美さんが中学校のPTA委員会に出来かけようとして、道ですれ違った際、真由子さに知らん顔をされました。どうしたのかしらと知らん顔をされたことを気にしながらも、時間に遅れそうで学校に向かったそうです。
1週間ほどたった後、麻美さんは真由子さんをお茶に誘おうと電話をしたところ、以外にも真由子さんから「もう二度と電話をしないで。あなたを見損なったわ」と、冷たく言われてしまったそうです。
何がなにやら理解出来ない麻美さんは、真由子さんとの共通の友達に相談したところ、子供たち同士の問題が事の発端だったことを知らされました。
“そういえば、隆(長男)にそんなようなことを言った気がする・・・”という記憶を呼び覚ましながら、どうしたら誤解が解けるのかをテーマに、コーチとのセッションを希望しました。
「真由子さんとは、その後、まったく話すチャンスは見つけられないのでしょうか?」
「はい、私たちはホントにこれまで仲がよかったので、たとえば、スーパーに行く時間とか、塾の送り迎えの時間とか、お互いの行動が予測出来るんです。だから、それを外すことも簡単で、なかなか偶然を装って出会うことも出来ず・・・」

「ほんとに困っているんですネェ」
「ええ、真由子がどんな経緯で誤解したかはわかりませんが、それはホントに誤解なんです。だから、早く解いて、元のように双子姉妹といわれるような仲良しに戻りたいんです」

「戻れるといいですね。直接話すことが出来ないということですが、だれか二人の間をつないでくれるような友達はいらっしゃらないんですか?」
「共通の友達はいるんですが、直接話したほうがいい。更に誤解させるようなことになっては申し訳ないといわれて、だれも間に入ろうとしないんです」

「そういう考えもありますよね。メールは?」
「メールは、何度か送ってみましたが、返事はありません。届いているのかどうかはわかりません。まさか、受信拒否の設定にはなっていないと思いますが・・・」

「彼女と元のように仲良くなれるとすると、麻美さんは、どういった点でメリットがあるんですか?」
「メリットと言うか・・・、仲良くなれたら、いろんなことを相談出来ると思います。これまでも、お互いの愚痴を聞きあったり、子育ての相談をしたり。夫への不満を聞いてもらったり。とにかく、価値感が同じだから、話すだけで心が温かくなる存在なんです。とても大切な人なんです」

「改めて、真由子さんの存在が重要であることを感じたわけですね」
「ええ・・・」

「真由子さんはどう思っているのかしら?」
「それがわからなくて。私が隆に言った言葉を、どうしてそんなふうに取り違えて聴いたのか・・・。由樹(真由子さんの次男)君が、真由子さんに何を言ったのかもわからないし」

「お子さん同士が何を伝え合ったか、それを知りたいと思うのですか?」
「ええ、そうじゃないと、誤解は解けないから・」

「表現力のない中学生の言葉が、お互いの誤解を生んだんでしょうか?」
「え??」

「お互いに、すこしずつ、これまでの間にズレが発生していたのではないでしょうか?」
「ん・・・・・」

「何気ないたった一言で仲たがいをするようになったとは考えられない気もしますが、いかがでしょうか?」
「そうでしょうか?」

「お互いの関係を修復するという考え方もありますが、新たに真由子さんと友達になりたいと、スタートに戻るという考え方もあると思います。麻美さんが友達を作ろうとするとき、どんなことを努力しますか?」

「そうですね・・・私という人を理解してもらうために、まず、自分のことを話します」
「なるほど、自己紹介をするということでしょうか?」

「はい」
「どんな自己紹介をするの?」

「学歴とか、仕事の経験とか、子供のこととか、夫の職業とか・・」
「そういう情報を伝えたとして、相手はどんなふうに思うかしら?」

「え?より深く私を理解してくれるんじゃないでしょうか?」
「麻美さんと友達になりたくて、心の距離を近づけるのに、学歴や仕事の経験、子供のこと、夫の職業とかは重要なことかしら?」

「ん・・・」
「麻美さんがどんな趣味を持っているとか、どんな意見を持っているかとか、今どんなことに一所懸命になっているかとか、そういった情報も必要なんじゃないかしら?」

「そうですねぇ・・・」
「真由子さんに、誤解があるようなので、私の意見も聞いて欲しいけど、あなたの意見を教えて?と、ストレートに誘ってみたらいかがですか?」

「でも・・・」
「仲良く過ごしたいんでしょ?」
「それはもちろん・・・」

「もちろんなんだけど、勇気が出ない?」
「はい・・・・」

「勇気がでないのはどんなことを考えたから?」
「断られたり、嫌な顔をされたくないし・・・・」

「断られて、失うものはありますか?」
「・・・・」

「今、既に、真由子さんとは話せない状態なんでしょう?」
「はい」

「それなら、断られても、状態が変わらないだけで、希望がなくなってしまうわけじゃないでしょう?」
「それは、そうですけど・・・・」

「繰り返し、麻美さんは真由子さんと話したいと思っているということを、自分の言葉で訴えてみてはいかがですか?」
「ふう・・・・」

セッションは、このあと、麻美さんの沈黙の時間が長くなったので、中断しました。
コーチにとっては勇気の出せる問題であっても、クライアントにはそんなに簡単でないことはたくさんあります。
障害をどう乗り越えるか、コーチはその方法を考えたり、計画を立てる支援したりすることは出来ますが、一番大切な勇気を出すことを、直接支援することは難しいことです。
何がきっかけになるのかわかりませんが、こういうケースでは、辛抱強くクライアントの気づきを、寄り添いながら待つことも大切です。

竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
エイジング・アドバイザー®/世渡り指南師®/プロフェッショナル・キャリア・カウンセラー®/認定キャリア・コンサルタント/認定エグゼクティブ・コーチ
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姉妹で始めたカフェ お姉さんの悩み~共同経営者とのコミュニケーションを回復させるためのセッション~


美人姉妹と評判のカフェが出来て半年。
都会ではすっかり定着しているカフェですが、地方都市ではまだ馴染まれず、経営に対する理想と現実のギャップに疲れてきたようです。
今日は、妹の雅恵さんが僻みっぽく、お客さまについて何かと不平や不満をこぼすし、このごろでは、お客様がお帰りになるとすぐ後にでさえ、お客様の悪口を言うようになり、忘れ物でもして引き換えされたらどうしようか?と、はらはらしているお姉さんの悠美さんとのセッションです。
「ちょっと緊張してますか?」
「はい、妹と違って、私はあまり話すのが得意ではないので、上手く話せるかどうか・・・」

「大丈夫ですよ。上手く話す必要はありません・・といいたいところですが、上手いか下手かを決めるのは、自分自身であって私ではありません。つまり、悠美さんが話したいことが話せて上手く出来たと思えば、それで満点。でも、たとえ上手く自分の気持ちが話せないなと感じても、私がお伺いしたいことや、悠美さんとおなじ気持ちになりたいことがあれば、何度も繰り返してお尋ねしますから大丈夫です。落ち着いていただきたいと思います」
「はい、わかりました。今日のテーマは、妹と今後どうやって接していいかということにしたいんですが、よろしいでしょうか?」

「はい、もちろんです。妹さんと今後どう接したらいいかということですね?一緒にお店をなさっているのですから、一日中顔を合わせているんですものね。お話が出来ないと困ることはたくさんありますね?」
「はい、たくさんあります。特に、厨房は私が取り仕切りますが、お客様のことやメニューを決めるのは彼女ですから、何かと話をしなければいけないことが多いんです。でも、今のように、お客様の悪口に同調したり、近所の方とのお付き合いの愚痴を聞かされるばかりでは・・・」

「そうですね。それは辛いですね。お客様の悪口というのは、どんな感じなんでしょうか?」
「そうですねぇ・・たとえば、ランチの時間は、少しでも早くお客様を入れ替えたいのが、経営者としての気持ちですが、女性のお客様はそういうわけにはいきません。『もう、長話して・・・次のお客断らなきゃいかんぶん、請求したろかなぁ』とかっていう感じなんです。心苦しいというか、ハラハラしますね」

「なるほどね。経営者としては大切な要素ではありますけれどもね。回転率が下がるということはね」
「言い方もあるのかな?って思うんです。それに、親しいお客様にそれを口にして言ってしまうので、お客様からお客様に漏れやしないかと・・」

「お気詰まりですね」
「ご近所の人のことに関しては、皆がどんなにいい人だねって言ってても、欠点というか、悪口を言うんです。だんだん、妹の顔を見るのも嫌になってきてしまって・・」

「妹さんには、どうなってもらいたいんですか」
「店を開いたときに、二人で話したお店にするために、ちゃんとやってもらいたいんです」

「悠美さんは、どんなお店にしたいんですか?」
「そうですね、来店者数を増やすことも重要ですが、根強いファンが出来る店にしたいんです」

「そのためには?」
「そのためには、入りやすさや、居心地の良さをアピールしたいんです」

「そのためには?」
「うん・・・・駐車場の問題は重要な要素の一つでしょうし」

「そのほかに大切なことを三つ考えてみましょうか?」
「三つもですか?・・・あるかなぁ・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ひとつ、私の考えを聞いていただけますか?」

「はい・・はい、お願いします」
「お二人のわだかまりを取ることによって、店内の雰囲気を明るくすることです」

「え?」
「おそらく、客足が落ちていると思うんです。これには根拠はありません。ですが、人間、自分のお金を払って食事やお茶をするのに、居心地の悪いところは足を向けません。このごろ、お二人がそれぞれお互いに言いたいことがあるのに、言わずにおなかの中に溜め込んでいるぎすぎすした関係の店が、居心地がいいと思いません。ということは、客足も鈍っているはずです」

「たしかに、このところ、売り上げは確実に落ちていますが・・・」
「売り上げが落ちているのは、誰の責任でしょうか」

「よく分かりません。妹の態度が影響しているのかもしれないし・・・私には和からないんです。どうして妹があんな態度をとるようになったのか・・・」
「お二人のおなかの底に溜まっているものを出し合うだけでも、ずいぶん、ちがうんじゃないでしょうか?」

「でも・・・」
「ひとつ、提案をしてもいいですか?」

「だれか、お二人が信頼している人はいませんか?その人に間に入っていただいたらどうですか?」
「・・・うん・・・・あ、そうだ。雅恵の同級生のお姉さんで、雅恵の気性を良く知っている先輩がいます。この間、東京の勤め先を辞めて戻ってきたって、お茶を飲みに来てくれた人がいますね」

「なるほど、その人は、悠美さんも良くご存知ですか?」
「はい、私の先輩でもありますので、大丈夫です。彼女なら、上手に話しに入ってくれると思います」

「直接解決するのは、お二人ですが、解決したい問題があることを伝えるために、先輩のご協力をいただいたらどうでしょうか?」
「はい、そうします。このままじゃ、お店も立ち行かなくなってしまうし。ご近所とも上手く付き合っていけそうにないので・・・」

「不安なことがたくさんあって、大変だと思いますが、ぜひ、先輩の方のご協力をいただきましょう。ところで、その先輩を交えた雅恵さんとの話し合いをいつ、行いますか?」
「先輩の予定があるので・・・」

「悠美さん、すべての問題を解決するためには、悠美さん自身が行動を起こさなければならないのですよ? いつにしますか?」
「はい、明日、先輩の都合を聞くために、メールを打ちます。その返事次第では、すぐに逢う事が出来ると思います」

「そうですね。では、明日、メールを打ってみましょう」
「はい、ありがとうございました」

「こちらこそ、厳しいことを申し上げましたが、お許しくださいね」
「いえ、厳しいとは思えませんでした。コーチのお人柄でしょうか?私もそんなふうになりたいですね・・・」

メタコミュニケーションを図って、このセッションを締めくくった例です。
誰にも目標があり、誰にもそれを解決する能力もある。そう信じることが大切ですが、クライアントを信じることと、黙っていつも見守ることが必ずしも機能するばかりではありません。最後の壁を乗り越えさせれば、行動を起こせるというときは、背中を押すのもコーチの役割ではないでしょうか?


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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保護者からの電話に悩む先生~真意を伝えるコミュニケーションを考える~


高校サッカー部の新任顧問として勤務することになった熱血スポーツマンの坂本さん。入学式直後から、どうしたらこのチームのレベルを上げることが出来るのかと、練習のメニューや体力づくり、ひいては、筋肉をつけるための食事のメニューまで考えて、保護者にも協力を求めていました。
練習の指導にも熱が入り、子供達も自分の厳しい指導についてきてくれていると手ごたえを感じていました。
ところが、ある日の午後、練習を終え、残った仕事を片付け同僚であるバスケットボール部顧問の先生を誘いビールでも飲もうかと立ち寄った店の入り口で、保護者からの電話を受けたそうです。
「はい、坂本です。ああ、加藤さん、いつもお世話になります」と、さわやかに挨拶をするや否や、
「先生、食事の献立まで指図するのはいかがなものですか?我が家は共働きで、食事は簡単に済ませることだってあるし、出前をとることだってあるんです。
息子は、先生の立てるメニューどおりにしなければ、レギュラーから外されると神経質になり、ふさぎこみがちである。いったい、あなたは何様のつもりですか? 先生は栄養士の免状でも持っているんですか? たかが高校の部活の顧問ごときに、家庭の食事まで指図されなければならないことはない。それとも何ですか、うちみたいな共稼ぎの家の子供はサッカーをする資格がないって言われるんですか」と、怒鳴りつけられ、一方的に電話を切られてしまったそうです。
ショックを受けた坂本先生は、冴えない顔のまま、同僚が待つ店の中に入り、ビールで乾杯するも、気持ちはさえません。急に元気がなくなったことに気づいた同僚は、さりげなく話を切り出しました。

「急に天気が変わったようだね。今は大雨って感じだぞ。」
「ああ、そうなんだ。今日は子供達の体も切れていたし、モチベーションも高かったから、いい練習が出来たって思ったんだけどなぁ・・・」

「残念なことがあったのか?」
「ああ、まぁそうだな。残念っていうか、悔しいなぁ」

「悔しい? お前の気持ちが伝わらなかったのか?」
「ああ、今、部員の保護者からの電話でさ、俺の言い分を聞くわけでもなく、一方的に言いたいことだけ言われて、がちゃって・・」

「そうか、それは辛いな。どんなことを言われたのか、話す気になれるか?」
「ああ、いいのかな?言っても・・」

「守秘義務は守る!って言いたいけど、学校全体で考えたほうがよければ、上に相談するよ」
「そうだな。たぶん、学校にも連絡が入るんだろうなぁ・・あの調子じゃな・・まいったな」

「まいっているんだ。どんなことにまいってるんだい?」
「実は、保護者からのクレームの電話でさ。たかがサッカー部の顧問ごときが、家庭の食事まで指図するなって言われちゃったんだ。確かにそうかもしれないけど、うちの子達は筋力が弱いんだ。だから接戦の試合では負けてしまうことが多いんだ。おまえも運動部の顧問をやっているからわかってくれると思うけど、子供達に勝つ喜びを味あわせてやりたいんだ。
全国大会になんて一足飛びには思わないけれども、県大会では上位を狙えるところまで上げていきたいんだ。うちの子供たちにはそれくらい出来る能力はあるんだ。それが肝心なところで凡ミスが出て負けることが多い。前の学校のときにうちのチームと試合して感じたことなんだ。
少しでも強いチームにして、子供たちに自信を持たせてやりたくて。ついつい、力が入りすぎたのかなぁ・・」

「そうか、おまえは良かれと思ってしたんだろ?それが認めてもらえなくて挙句の果てに保護者のクレームか。保護者のクレームは受けたくなかったなぁ」
「ああ、そうだな。でも、真意を組んでもらえなかったのが悔しくて。子供たちのこと、自分だって真剣に考えているのに・・」

「そうだな。おまえは、今の教師にしては珍しく、子供の指導に熱意がある。ありすぎるといってもいいかもしれないな。ただ、そんなふうに熱くかかわられる親や子供はどんなふうに受け止めているんだろうか?」
「ん?・・・どんなふうに?って、もしかして、重荷になってるのかなあ?自分は出来ればそうしてほしいとアドバイスのつもりで言ったんだけどな・・・」

「いや、重荷になっているかどうか、自分には判断出来ない。でもなぁ、おまえはアドバイスのつもりで言っても、相手にとっては顧問の先生の言葉って絶対にしなければならない命令に受けとるもんだぞ。
おまえの気持ちをちゃんと保護者に伝える方法を考えたほうがいいと思うんだ。一方的に情報を流しても、双方向に意見交換しないと、真意を伝えられないし,真意も汲み取れないんじゃないか?
今回、クレームの電話とはいえ、保護者から意見が聞けたというのはコミュニケーションとしては一歩前進、双方向の意見交換が始まったということだぞ、それはそれとしていいことなんだ。
これを踏まえて、この先どう子供たちや保護者と向かい合っていくかということじゃないかな。
クレームととるのか貴重なご意見を頂いたととるのかは、お前次第だ」
「そうかなぁ・・・そうだよな」

「何がそうさせるかわからんが、おまえと話すと気持ちが楽になるって言うか、明るくなれるなぁ。不思議だなあ。
よっしゃ、明日校長に今回のことを話し自分としての対応の仕方を説明して、保護者や生徒に自分の指導方法を伝える準備をはじめるよ。なんかすっきりしたな。雨降って地固まるでやってみるよ。よし、もう1度乾杯してもいいかな?」

居酒屋での会話です。同僚がコーチングを学んでいたかどうかわかりませんが、自然な会話の中でも、コーチと同じような会話を組み立てることは可能です。
しかし、コーチングを学べば、もっともっと、やる気を取り戻させ、行動計画を立て成果をあげることが可能になります。
ご自身の会話を振り返り、学ぶ前からコーチとしての資質を感じる皆さん。コミュニケーション能力向上と、人との関係をより楽しむためにも、ぜひ、一緒に学びましょう。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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市長選挙に立候補~最終目標を達成するために確実な方法を考える~


二宮さんは、近い将来、市長選挙に出馬を目指している四十歳。
しかし、地方の市の選挙出馬には、しがらみや決め事がたくさんあり、支援団体のご長老方の意見を聞いていると、このままでは出馬断念に追い込まれてしまいそうと、コーチングを受けることにしたそうです。

「はじめまして」
「はじめまして、よろしくお願いします。さっき、契約書に同意してサインしました」

「ありがとうございます。さっそくサインしてくださったんですね、市長選挙への出馬が目標であるとのことですが、よろしいですか?」
「はい。まずは、選挙に出て顔を売り、私の主義主張というか私の考えを市のみんなにわかってもらうことです。そして出来れば当選、市長になって三期で市政を改革したいと思っています。ただし、市政を改革するというのは、みんなには内緒です。とくにご長老方には。そんなことを言うと、足をひっぱられますからね」

「ずいぶん、信用していないんですね。ご支援くださっているのではないのですか?」
「いや、支援はしてくれていますが、どうも・・・私利私欲のために思えてならないんです。
これからの市の運営は、能力のある市長がひっぱらないと、すぐに財政が破綻に追い込まれます。これといった産業もなく、優遇・保護されている農家が多い。そんな町でも、ここは人が終の棲家とするには、自然にあふれた住み心地のよいところなんです。介護保険を使う世帯も多くなるでしょう。でも、安心して住めるふるさとにしたいんです。
ただ、この市は、今の市長の息のかかった業者や、市長の協力者が町政をしきっており、ここで変えないと、ずっと一部の考えで市の政(まつりごと)が進んでいってしまうんです。それで良いと思いますか?」

二宮さんは、コーチに質問を投げかけるように一気に話し終えました。

「私に分かることは、あなたが生まれ育った市が大好きであること、あなたがその市に恩返ししたいと思う気持ちが強いこと、そして何より、市長になりたいのではなく、市政を改革すべくリーダーになりたいという熱い気持ちです。同時に、あなたは強く自分の中に答えを持っている。それを支援したいと思う気持ちが、私の中に生まれたということです」

二宮さんは意外そうな顔をして質問されました。

「コーチ、私は私の中に、本当に答えを持っているのでしょうか?」
「どうしてそうお思いになるの?」

「選挙というのは、思っていた以上に、人に頼みごとをしなければならない。それに、あっちに挨拶に行け、こっちに挨拶に行けと、人形かロボットのように動かされる。マニフェストの話をし始めると、そんな難しいことは分からないが、今までの市長のやり方ではこの町は発展しない。新しい若い人の力をそそがにゃいかんなぁ・・と、一見、好意的に受け入れてもらえるんです。でも、本音はそうじゃないらしい。選挙を通して自分の利権を大きくしようと思っているふしがあるんです。
自分の支持している○○党に入れとか、自分の懇意のどこそこの社長に挨拶をして、社員に協力してもらえとか。そのためにはその人に受けのいい事をしゃべれとか 言われるんです。
しがらみのない選挙、草の根選挙を目指したいという自分の思いが、どんどん薄められていってしまう。いったい、自分は何のために選挙に出ようとしているのか、このごろでは、自信が持てないんです。それでも、私は戦うべきなのか・・・」

二宮さんは、最後は辛そうに語ってくれました。

「支援団体の人がいてそれでいて、しがらみのない選挙って、出来るんでしょうか?二宮さんは、どうお考えなんでしょうか?」
「うん・・・出来ないかもしれないって。選挙って、結局誰かの手を借りなければ出来ないものですから。でも、あんまり人の言うとおりに動かされたくない気持ちが強い。特定の政党員としてではなく、若い人たちと一緒に、この町の将来を考えていきたいんです。そのためには、1回や二回、落選することも覚悟の上です」

「落選も覚悟の上というのは、立派な心がけだと私は思いますし、支持します。ただ、そういうあなたの頑なな態度を、年配者はどう見るのでしょうか?」
「・・・・生意気かな?」

「あはははは、笑ってごめんなさい。生意気ですか?中学生みたいに思われているのを感じているのかしら?」
「まぁ、そんなところでしょう。田舎なので、親父の代の人間関係とか引き合いに出されて、お前の親父の非情さを知っているから、お前を応援しないとあとで何をされるか分からない、だからお前を応援すると面と向かって言われたり。俺はお前が赤ん坊の頃から知っている。おまえみたいな甘ちゃんに、どんな考えがあるのか、えらそうなことを言っても、どうせ、たいしたことないだろう。くだらない理屈をあれこれ言わずに、市長になりたいのなら俺の言うとおりにしろ・・って言われたり。四十になった一人の男として扱われたことがないんです。ひよっこひよっこって、二の口つけばそれが出てくる。それでも、僕を信じてくれる同級生の仲間を頼りに、がんばろうと思うんですが・・」

「茶化すわけではないのですが、まずは出馬。その後は当選、その後三期で市政を改革する、という意気込みは、どこかに飛んで行っちゃいそうですね。まずは、出馬。そのために、今活動している中で、一番、あなたが気に入らずにいやいややっていることは何ですか?」

この質問から、ようやくコーチングらしいセッションを開始しました。

志を高く持ち、自分の価値観を犠牲にしてまで、この活動に身を投じようとした二宮さん。でも、やはり、自分のポリシーや価値観を捨てられるかどうか、その後のセッションはこれを中心に進めました。

「市長になるために、自分の考えをいったんふせるころが出来ますか」
「あなたは、何のために市長になりたいんですか」

「あなたにとって支援者ってどういう存在ですか」
「市長になって具体的に何をしていくつもりですか」

「それをするとどうなりますか」
私の質問に、ときには深く考えながら、ときにはため息をつきながら、決して投げ出さずに自分で考えて答えを出していただきました。

「コーチ、私の中に答えがある というのはこういうことだったんですね。最初は、相談にのってくれずこっちにボールを投げてきて、頼りない人だと感じましたが、そうではないんですね。コーチングってすごいですね。これからもよろしくお願いします」

手段として、まず、出馬し、目標達成のために当選を目指す活動を受け入れる。
選挙までの時間は、八ヶ月しかありませんでした。選挙活動と平行して、コーチングも行った結果、現在、自分のポリシーや価値観を捨てずにみんなの理解を得て、新しいふるさとづくりのために、忙しく身を動かしています。
一念岩をも通す。支援するコーチも、時に心配なる位の芯の強さを失うことなく、コーチングを活かして、見事市長に当選。現在、新たな目標達成に向け、東奔西走しています。


竹内 和美竹内 和美 (たけうち かずみ)
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